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11 渇望
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しおりを挟む「〇雲が好きなんですか?」
「え? ああ、はい。槍、使いやすくて」
「技も顔も格好いいですもんね」
「そうなんですよね」と、頬を緩ませる。
「彩さん、ああいうチャラそうなイケメンが好きなんですか?」
「え? チャラそうですか?」
好きなんだ……。
「彩さん、好きな芸能人とか歌手、います?」
「え? 何ですか? 急に」
「好奇心です」
「……特別いません」と、彩さんが言った。
後で、真君と亮君に聞こう。
あ! と思い出して、俺はスマホを取り出した。
「彩さん! ぷに〇にのともだちになってください」
「え?」
「ひと〇ま、送りますから」
「はぁ……」と、彩さんは訝しげな顔。
必死になり過ぎか、とも思ったが、弱気ではいけないと思い直した。
ともだちになって、彼女のスコアに驚いた。
さすが、ゲーマー……。
負けてはいられない。
俺は粉を溶かし終え、たこ焼き器のスイッチを入れた。二台。
一台は家にあったのだが、一度に二十個しか焼けないのでは足りないだろうと、昨日もう一台買って来た。
油を塗り、液を注ぐ。たこや紅ショウガなどの具を入れていく。
一台は俺が、一台は彩さんが。
「料理、いつもするんですか?」
「気が向いた時は。一人暮らしが長いので、一通りは出来るんですけど、一人分て作るの面倒で」
「わかります」と、彩さんが微笑む。
彩さんの方は、子供たち用に紅しょうが抜き。
「だから、彩さんたちが来てくれて、嬉しいです」
俺の言葉に、彼女の表情が少し曇った。
考えてることは、わかる。
彩さんは資料室で、はっきりと俺を拒絶した。それなのに、俺は諦めるどころか、ずうずうしくも名前で呼ぶようになり、子供を使って家にも呼んだ。
彼女が今日、ここに来たのは、もう一度俺を拒絶するためかもしれない。
例えそうでも、俺は俺で彼女に伝えたいことがあった。
「あの、千堂課長――」
「俺が嫌いですか?」と、俺は彩さんの言葉を遮って聞いた。
「え? いえ、嫌いだなんて――」
「俺は、あなたが好きです。やっぱり、諦められません」
「課長」
俺は椅子から立ち上がり、彩さんの椅子の背に手を掛けた。ずいっと彼女に顔を近づける。
「この間は、結婚とか……正直よくわからなくて尻込みしましたけど、今は違います。結婚より先に、彩さんに俺を好きになってもらいたい。その後のことは、その後で考えます」
「けど――」
「結婚したくなったら、結婚してもらえるように頑張ります。だから、とりあえずは俺と付き合って下さい」
『とりあえず』なんて言葉が悪かったかな、と思った。
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