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2.目標
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しおりを挟む「拘置所で自殺を図ったそうで、今は独房? で裁判を待っているそうです」
「そうですか……」
俺はもう一度カップを持ち、飲みやすい温度になったコーヒーを二口、飲んだ。
「正直、会長の息子ってだけで入社して、大した苦労もせずに部長なんて役職を与えられて、うんざりしてたんです。だから、俺的には会社から離れて、好きなだけ本を読める生活が出来て、ちょっとラッキーって言うか――」
「――そんなこと、あるわけないです!」
急に大声で言われて、驚いた。
「明堂さんは何も悪くないのに、いきなり身体の自由を奪われて、仕事だって――好きじゃなかったとしてもこんな風に出来なくなっちゃって……ラッキーだなんて、そんなわけない!」
「お義姉さん……」
「すみません。私……無関係なのに、偉そうに……」
「いえ。……優しいですね、お義姉さん。妹の旦那とはいえ、結婚式で会っただけの俺なんかの為にそんな風に言ってくれるなんて」
父さんも兄さんたちも、萌花でさえ、ベッドから起き上がるのもままならない俺を、面倒臭そうに見下ろしていた。
俺の事故のせいで会社が世間の好奇の目に晒されたのは事実で、萌花でさえタクシー移動なのに、俺が電車通勤なんかしていたせいで事故に遭ったと疎まれているのもわかった。
父さんと兄さんへのアピール目的で見舞いに来た重役や部下たちは、「大変でしたね」「可哀想に」と同情の言葉をくれたけれど、本心だなんて思えなかった。
「とにかく、俺の身体はそんな感じです。せっかく買って来てもらったんですけど、足踏み竹は勘弁してください」と言って、俺は笑った。
長年の不摂生のせいか、入院生活で身体がなまっているせいか、とにかく痛くて堪らなかった。
「まずは、左手首を動かせるように頑張りませんか?」
「え?」
「一度には大変ですし、不自由な部分を庇っていると、他の部分に負担がかかって痛めてしまうと聞いたことがあります。まずは、指が動かせる左手のリハビリに専念しましょう。そうしたら、カップやスプーンも持てますし」
昨夜、俺はスプーンを右手の人差し指と中指の間に挟んでカレーライスを食べてみた。簡単ではなかったが、食べられた。最初の数口は。段々、指がだるくなり、口に運ぶ以前に上手くすくえなくて、左手に持ち替えようとしたが、手首が上がらなかった。それでも、左手首を右手首で支えるようにして持ち上げ、食べ続けた。
お義姉さんは俺の好みが分からないからと、辛口、中辛、甘口のカレーのルーを買っていた。本来ならば辛口を食べたいところだけれど、薄味の病院食に慣れていたこともあって、中辛に控えた。が、それでも辛く感じてしまい、いい加減手が疲れたのもあって、半分ほど残してしまった。
お義姉さんは「お手伝いしましょうか」と言ってくれたけれど、「あーん」なんてしている自分にゾッとして、断った。
今朝は、サンドイッチだった。お義姉さんが気をきかせてくれたのだ。
冷蔵庫にカレーの鍋があることはわかっていた。
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