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6.彼女の正体
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しおりを挟むずっと考えていた。
『わざわざ離婚してまで世話をさせてくれって頼むから、させてやったのよ』
萌花は、楽が俺の事故を知って、離婚してまで世話をしたがった、と言った。
なぜ……?
俺と楽の面識は、結婚式の一度だけのはず。
自意識過剰を覚悟で考えれば、その時に楽が俺に一目惚れでもして世話を買って出た、と思えなくもない。
離婚してまで……?
もともと、愛のある結婚ではなかったと、楽は言っていた。それでも、たとえ離婚のきっかけを待っていたにしても、世間に伏せられたはずの俺の事故を嗅ぎつけるなんて、偶然にしては出来過ぎだ。
ストーカー……?
表現は悪いが、萌花の言葉を鵜呑みにすると、そうとも思える。
それくらい、楽の行動は謎だ。
楽は、自分のことを話さない。
結婚について聞いた時は、話してくれた。けれど、とても言葉を選んでいるようだった。
聞かれもしないのに自分のことをペラペラ話すのがいいとは思わないけれど、楽は本当に自分について語らない。
離婚について聞いたら、話してくれるだろうか……?
俺のベッドで一緒に眠るようになって一週間。
抱き合っていると、時々身体が反応する。 目覚めて楽の寝顔を見ても。
多分、楽も気づいている。
けれど、最初の夜以来、彼女から『リハビリ』の申し出はなく、もちろん俺から頼むことも出来ず。疼きを興奮に変えられるのか、確かめられずにいた。
課題が山積みだな……。
俺の身体。
楽の意図。
俺の離婚。
楽の気持ち。
とにかく、やれることからやるか……。
サボっていたリハビリを再開した。
仮に不能が治っても、この手と足じゃ、楽を抱けない。
動機はともあれ、俺がスポンジボールを握り締めていると、楽が嬉しそうに微笑む。その表情が、好きだった。
そして、一緒に眠るようになってから会話が増えたお陰か、楽が敬語を使わなくなっていた。
友達は友達でも、かなり親しい友達の関係にはなれていると思う。
いや、傍から見れば恋人や夫婦にも見えるかもしれない。
それくらい、一緒に居るのが自然だった。
ただ、それは俺の感情だ。
楽が話さない、自分のこと、の中には、感情も含まれている。
俺は未だに、楽が俺をどう思っているのか聞けていない。
俺に好かれていることを嫌がってはいないようだが……。
離婚して間もないから、次の男なんて考えられないという可能性もある。
しかも、相手は義弟だ。
いや、それ以前に――。
「楽」
「はい?」
「なんか、欲しいものとかない?」
「え?」
唐突な問いに、楽が洗い物の手はそのままに、振り向いた。
「欲しいものじゃなくても、行きたい場所とか」
「どうしたの?」
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