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6.彼女の正体
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記憶にあるのは、早坂が自分の名前を嫌っていたことと、クラスに同じ名前の女子がいたこと。
同じ名前は紛らわしいからという理由で、早坂はいつも『早坂』と呼ばれていた。
途中で転校してしまった早坂の名前が卒アルに載っているかはわからないが、とにかく見てみようと十五段の階段を上った。
手摺りを強く握り過ぎて、掌が痛い。汗ばむ。普通に歩くのとは違って、一段一段膝をしっかりと曲げて足を上げるのは、今の俺にはなかなかの重労働だった。
だが、何とかあと二段というところまで上がり、落ちていた青い物を手に取った。持ったまま、階段を上がりきる。
さすがに疲れて、俺はずるずると廊下に座り込んだ。
まだまだ、だな。
汗で湿った掌をブラブラと宙で振る。
それから、楽の落とし物をまじまじと見た。
これ――。
しばらく、瞬きを忘れた。
なん……で――。
それは生徒手帳だった。
しかも、俺が卒業した高校の。
ぼんやりとした記憶が、鮮明によみがえった瞬間だった。
早坂――!
手帳の写真は、間違いなく早坂。
そして、名前は――。
「はや……さか――?」
早坂……楽――?
俺はハイハイを覚えたばかりの赤ん坊のように手足をバタつかせて四つん這いで奥の部屋に進んだ。無造作に置かれたものの中から、高校の卒アルを探す。それはすぐに、見つかった。
埃っぽいことなど気にも留めず、ペラペラとページをめくり、三年C組の個人写真を探した。それから、女子の名前を目で追っていく。
探していた名前は、すぐに見つかった。
顔が小さくて、ほんのり化粧をしていて、茶色のくるくるした髪。
可愛くて、学年でも人気のあった女子だ。
大林楽。
そうだ。
彼女は大林という名字が、小柄な自分には似合わないと、呼ばれるのを嫌った。だから、大林楽は『楽』と呼ばれ、同じ名前の早坂は『早坂』と呼ばれていた。
楽が、二人――?
大林のことではない。
近江楽と早坂楽。
同じ名前でも、生徒手帳の中の楽は、俺と暮らしている楽とは別人だ。よく見れば目元が似ていると言えなくもないが、輪郭や鼻の形、唇の形も違う。肌の色も、写真の方が色白だ。
だけど――。
別人なら、どうして楽が早坂の生徒手帳を持っている……?
仮に、早坂を知っているなら、どうして俺が早坂の話をした時に言わなかった?
頭の中に、次々と疑問が湧く。
何かの間違いではないかと、もう一度生徒手帳を見た。手帳の間に挟まっていたらしいものが、ひらっと落ちた。それに、視線を落とす。
「これ……は――」
同じ名前は紛らわしいからという理由で、早坂はいつも『早坂』と呼ばれていた。
途中で転校してしまった早坂の名前が卒アルに載っているかはわからないが、とにかく見てみようと十五段の階段を上った。
手摺りを強く握り過ぎて、掌が痛い。汗ばむ。普通に歩くのとは違って、一段一段膝をしっかりと曲げて足を上げるのは、今の俺にはなかなかの重労働だった。
だが、何とかあと二段というところまで上がり、落ちていた青い物を手に取った。持ったまま、階段を上がりきる。
さすがに疲れて、俺はずるずると廊下に座り込んだ。
まだまだ、だな。
汗で湿った掌をブラブラと宙で振る。
それから、楽の落とし物をまじまじと見た。
これ――。
しばらく、瞬きを忘れた。
なん……で――。
それは生徒手帳だった。
しかも、俺が卒業した高校の。
ぼんやりとした記憶が、鮮明によみがえった瞬間だった。
早坂――!
手帳の写真は、間違いなく早坂。
そして、名前は――。
「はや……さか――?」
早坂……楽――?
俺はハイハイを覚えたばかりの赤ん坊のように手足をバタつかせて四つん這いで奥の部屋に進んだ。無造作に置かれたものの中から、高校の卒アルを探す。それはすぐに、見つかった。
埃っぽいことなど気にも留めず、ペラペラとページをめくり、三年C組の個人写真を探した。それから、女子の名前を目で追っていく。
探していた名前は、すぐに見つかった。
顔が小さくて、ほんのり化粧をしていて、茶色のくるくるした髪。
可愛くて、学年でも人気のあった女子だ。
大林楽。
そうだ。
彼女は大林という名字が、小柄な自分には似合わないと、呼ばれるのを嫌った。だから、大林楽は『楽』と呼ばれ、同じ名前の早坂は『早坂』と呼ばれていた。
楽が、二人――?
大林のことではない。
近江楽と早坂楽。
同じ名前でも、生徒手帳の中の楽は、俺と暮らしている楽とは別人だ。よく見れば目元が似ていると言えなくもないが、輪郭や鼻の形、唇の形も違う。肌の色も、写真の方が色白だ。
だけど――。
別人なら、どうして楽が早坂の生徒手帳を持っている……?
仮に、早坂を知っているなら、どうして俺が早坂の話をした時に言わなかった?
頭の中に、次々と疑問が湧く。
何かの間違いではないかと、もう一度生徒手帳を見た。手帳の間に挟まっていたらしいものが、ひらっと落ちた。それに、視線を落とす。
「これ……は――」
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