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13.結婚指輪
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しおりを挟む「俺も、毎年プレゼントするよ」
「え?」
「花束」
楽はハッと小さく息を吸い、少し考えて、吐き出した。そして、今度はゆっくりと息を吸った。
「ありがとう」
楽のことだ。きっと、毎年の花束を遠慮するような言葉を言おうとしたんだろう。けれど、遠慮じゃなく礼を言った。
それは、俺が彼女に喜んでもらいたいという気持ちを受け入れてくれたように思えた。
俺はニッと笑って、人差し指を立てて自分の唇に当てた。
「花束のお礼に、キスをちょーだい」
「え?」
「俺は毎年、楽の誕生日に花束をプレゼントする。楽はお礼にキスをちょうだい。十年後も二十年後も、五十年後も」
「悠久……」
楽が素早く瞬きをする。口元は笑っているのに、目には涙が浮かんでいた。
俺はポケットから、さっき購入したばかりの掌にすっぽり収まる大きさの箱を取り出し、テーブルに置いた。真っ白な箱には十字にりぼんがかけられている。
「約束の印」
「これ――」
「――開けて?」
楽がりぼんの端を引っ張って解く。
箱の蓋を開けると、中にはフワッとした毛足の短い布張りの箱が入っている。真っ赤な、箱。
箱だけで、中身が何かは十中八九予想できる。ピアスやイヤリングも入っていそうな大きさだが、楽はきっとその選択肢は頭にない。
その証拠に、赤い箱を手に取った彼女の頬には、既に涙が伝っている。
「愛してるよ、楽。今の俺が言っても説得力はないだろうけど、絶対に幸せにする」
楽が箱の蓋を押し上げる。
「だから、揃いの指輪をはめられるまで、それをつけていて欲しい」
中には、七粒のピンクダイヤが埋め込まれた指輪。内側には、『Raku Mamiya』の文字。
「絶対、『間宮楽』にするから」
俺は立ち上がり、楽の横に行くと、箱の指輪を親指と人差し指で摘まんだ。跪き、自分の左手の上に、彼女の左手を載せる。
「これは、その約束の印」
楽の涙が顎から落ちて、俺の膝を濡らす。
俺は楽の左手の薬指に、指輪を通した。
薬指の付け根にぴったりと納まった指輪を見て、俺はホッとした。
サイズを測って行ったとはいえ、ちゃんと入って良かった。
ぽろぽろと涙をこぼしながら、自分の手を見つめる楽の頬に手を伸ばすと、彼女から俺の元に下りてきた。
苦しいくらい強く、俺の首に抱きつく。
「ありがとう」
彼女の熱い吐息を首筋に感じ、全身の毛が逆立った。
「私も、『間宮楽』になりたい!」
俺は楽の腰をしっかりと抱き締めた。
楽が身体を起こし、俺を見つめ、そっと唇を寄せた。目を閉じ、唇が重なるのを待った瞬間、インターホンが鳴った。
ピザの配達だった。
ムードぶち壊しで、二人で声を出して笑った。
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