楽園 ~きみのいる場所~

深冬 芽以

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14.おばあちゃんの遺言

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 最奥を穿たれ、腰が震える。

 ザーッとシャワーの水音、クチュクチュと蜜が滴る水音、チュッと彼がうなじに舌を這わせる水音。

 どれを取ってもいやらしくて甘美。

「は……る――」

 口を覆っていた手が外され、その手で顎を掴まれて首を回すと、食べられてしまうような深いキスを受ける。

 必死でキスに応えながらも、打ち付けられる楔に身体が痺れ、絶頂へのカウントダウンに身構えた。

 自分でも恥ずかしいほど、彼を離すまいと締め付けているのがわかる。



 今、願いを口にしたら、彼は応えてくれるだろうか……。



 札幌に来てから、彼に抱かれる度にそう思っては、飲み込んできた言葉。

 驚くだろうか。軽蔑するだろうか。喜んでくれるだろうか。

 なけなしの理性が葛藤し、今日もその言葉を飲み込んだ。

 代わりに、咥内で暴れる悠久の舌をじゅっと吸った。

 彼の両手が私の腰をきつく抱く。



 このまま、離さないで――。



 そう願った瞬間、彼は私の腰を掴んだまま腕を伸ばし、腰を引いた。

「く……っ」

 微かに彼の呻きが聞こえたと同時に、私の足元に白濁が飛んだ。

 私はずるっとその場に座り込む。

 はぁはぁと胸を上下させて体内に酸素を供給した。

「大丈夫か?」

 私は壁に向かったままで頷く。

 悠久もしゃがみ、後ろから私を抱き締めた。

「盛ってばっかでごめん」

 私は首を振る。

「いいの……。嬉しいから」

 ようやく呼吸が安定し、私は首を回して悠久を見た。

「けど、今はちょっと立てないみたい」

 腰が抜けたというか、痺れたというか、力が入らない。

 悠久は気まずそうに苦笑いすると、私を抱き上げてバスルームを出た。

 彼にされるがままに身体を拭かれ、パジャマを着せられ、髪を乾かしてもらった。

 恥ずかしいのはやまやまだが、抵抗できる力が残っていない。

 寝る準備万端でベッドに下ろされた時には、瞼が重くなっていた。

「楽?」

 悠久の肩に頭を載せて目を閉じていた私は、ほんのわずかに瞼を持ち上げた。

「やっぱり、ちゃんと部屋を借りて暮らさないか?」

 ウィークリーマンションを更新するかを相談した時、悠久は仮住まいではなくアパートかマンションを借りて腰を落ち着けたいと言った。

 それでも、ウィークリーマンションを更新したのは、私が望んだから。

「違う場所に……行きたくなるかも――」

「――その時はその時でいいだろ」

「長い旅行気分でいいじゃない」

 悠久はそれ以上何も言わなかった。

 私は彼の鼓動を聞きながら、瞼を閉じた。



 ごめんね、悠久。



 悠久の気持ちは嬉しい。

 二人の居場所を作ろうとしてくれている。

 けれど、私はそれを作るのが怖い。

 帰る場所が出来てしまったら、帰れなくなった時がツラいから。

 間宮の家がそうだった。

 あの家は私にとって、悠久との思い出の場所で、帰るべき場所。

 だから、間宮の家で一人で暮らすのは苦しかった。

 この世に一人きりなのではと錯覚してしまうほどに孤独だった。

 そんな場所を増やしたくない。

 今の私たちに必要なのは場所じゃない。

 二人が手の届くところに存在すること。



 悠久の腕の中が、私の居場所だから……。



「いつか、あの家に帰ろ……?」

 意識を手放す直前、とても小さな声で呟いた。 
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