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14.おばあちゃんの遺言
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そんな言葉まで記録されていたと思うと恥ずかしい反面、私のおばあちゃんへの気持ちをわかってくれている人がいることが嬉しい。
「具体的に、母の個人資産はいくらでしょう」
ずっと口を噤んでいたお父様が言った。
「少なく見積もって三億円ほどでしょうか」
「ちょっと待って頂戴! じゃあ、主人と息子が七千万ずつで、この子が一億四千万? おかしいでしょう!」
お母様の金切り声に、思わず肩を竦める。
「少し落ち着け」
お父様の言葉に、お母様がはぁっと息を吐く。
「先生。母は生前に資産の整理を?」
「はい。旦那様がご存命の頃に税金対策などで購入していた土地やビルを売却なさいました。代金は養護施設や病院関連に寄付なさいました」
「それで、現金で遺したのが三億円強ですか」と、お父様も息を吐く。
「はい。多すぎる財産は争いの元となる、と仰って」
「そうですか」
最初の遺言で、お父様はおばあちゃんの持ち株の八割を相続したと聞いている。残りの二割は修平さんが。
その一年後の遺言で、お父様と敵対する重役が一掃されたらしい。
おばあちゃんの発言力が強すぎて、お父様はお飾りの社長だと言われていたが、名実ともに最高責任者となったのだ。
それだけでも、十分な資産を得ただろう。
そう考えると、お父様とお母様にとって、七千万は大金ではないのかもしれない。
「先生。現金はすぐに相続の手続きに入れますよね」
「はい。ですが、それには条件が設けられています」
「条件?」
「はい。今回の分与は対象となる四人全員が相続を了承した時にのみ、執行されます」
「四人て! 私には何もないじゃない!!」
お母様が勢いよく立ち上がる。
「どうして私にだけ何もないのよ!」
「私の知る限り、お嫁さん個人に遺産の分与がなされることは非常に稀です。基本的には、ご夫婦で相続されるという考え方ですから」
「じゃあどうして孫の元嫁なんかに――」
「――楽さんは献身的に故人の世話をなさっていました。その感謝の意だと聞いております。それに、墓参りの回数次第では奥様も個人的に分与を受けられる可能性がありました」
そうだ。
最後の四分の一は、この四人の誰が受け取るかわからなかった。
「確認いたします。この場にお立会いの皆様は、故人からの遺産の相続を了承なさいますか?」
「はい」と真っ先に返事をしたのは、修平さんだった。
彼にしてみれば、欲しかった家が相続できるのだ。満足だろう。
「了承します」と次に答えたのは、お父様。
お母様はお父様の隣で、苦虫を噛み潰したような形相をしている。
私は迷っていた。
おばあちゃんの気持ちはありがたいけれど、もらっていいのだろうか。
膝の上の手に、修平さんの手が重なった。
「楽。お祖母さんの気持ちを受け取ってあげよう」
私の迷いを見透かすように、彼が言った。
「具体的に、母の個人資産はいくらでしょう」
ずっと口を噤んでいたお父様が言った。
「少なく見積もって三億円ほどでしょうか」
「ちょっと待って頂戴! じゃあ、主人と息子が七千万ずつで、この子が一億四千万? おかしいでしょう!」
お母様の金切り声に、思わず肩を竦める。
「少し落ち着け」
お父様の言葉に、お母様がはぁっと息を吐く。
「先生。母は生前に資産の整理を?」
「はい。旦那様がご存命の頃に税金対策などで購入していた土地やビルを売却なさいました。代金は養護施設や病院関連に寄付なさいました」
「それで、現金で遺したのが三億円強ですか」と、お父様も息を吐く。
「はい。多すぎる財産は争いの元となる、と仰って」
「そうですか」
最初の遺言で、お父様はおばあちゃんの持ち株の八割を相続したと聞いている。残りの二割は修平さんが。
その一年後の遺言で、お父様と敵対する重役が一掃されたらしい。
おばあちゃんの発言力が強すぎて、お父様はお飾りの社長だと言われていたが、名実ともに最高責任者となったのだ。
それだけでも、十分な資産を得ただろう。
そう考えると、お父様とお母様にとって、七千万は大金ではないのかもしれない。
「先生。現金はすぐに相続の手続きに入れますよね」
「はい。ですが、それには条件が設けられています」
「条件?」
「はい。今回の分与は対象となる四人全員が相続を了承した時にのみ、執行されます」
「四人て! 私には何もないじゃない!!」
お母様が勢いよく立ち上がる。
「どうして私にだけ何もないのよ!」
「私の知る限り、お嫁さん個人に遺産の分与がなされることは非常に稀です。基本的には、ご夫婦で相続されるという考え方ですから」
「じゃあどうして孫の元嫁なんかに――」
「――楽さんは献身的に故人の世話をなさっていました。その感謝の意だと聞いております。それに、墓参りの回数次第では奥様も個人的に分与を受けられる可能性がありました」
そうだ。
最後の四分の一は、この四人の誰が受け取るかわからなかった。
「確認いたします。この場にお立会いの皆様は、故人からの遺産の相続を了承なさいますか?」
「はい」と真っ先に返事をしたのは、修平さんだった。
彼にしてみれば、欲しかった家が相続できるのだ。満足だろう。
「了承します」と次に答えたのは、お父様。
お母様はお父様の隣で、苦虫を噛み潰したような形相をしている。
私は迷っていた。
おばあちゃんの気持ちはありがたいけれど、もらっていいのだろうか。
膝の上の手に、修平さんの手が重なった。
「楽。お祖母さんの気持ちを受け取ってあげよう」
私の迷いを見透かすように、彼が言った。
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