その捕虜は牢屋から離れたくない

さいはて旅行社

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1章 敵国の牢獄

1-75 沼に落とされる

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「あ、シエルド様、、、」

 壁一枚隔てた向こう側で、ラウトリスが服を乱れさせ、淫らに動く。
 すべてが脱がされていない、柔らかそうな白い素肌が覗く姿が、より妖艶に映る。

 声が向こうに伝わらないと言っても、自分の口を両手で押さえてしまう。
 ラウトリスを見るための窓が小さいため、教会長の息が、熱がすぐそばで伝わる。

「大教会の大修繕には多額の費用がかかります。あの子はシエルド様に抱かれることによって、この修繕工事を可能にしました」

 教会長の声は耳元で囁かれる。

 シエルドに抱かれるラウトリスは気持ち良さげに善がる。
 喘ぐ声が本当に気持ち良さそうで。

「それは、、、この工事のためにラウトリス神官はシエルドに身体を差し出したと?」

「殊勝なことでしょう。この大教会のために」

「とめなかったんですか」

「私もラウトリスを犠牲にしてまでこの大教会を守ろうとは思っていませんでしたが、あの子は、、、」

 ラウトリスにとって、この大教会はそこまで大切なものなのか。

 だからといって、今の自分には多額の費用を捻出する術がない。
 今の自分にできることは、自分の仕事を遂行することだけだ。

 それなのに。
 ラウトリスとシエルドの行為を見て、自分の肉体が興奮してくるのを感じる。
 熱くなっているのを感じる。
 もし、ここに一人しかいなければ。

「良いのですよ、リーウセン様」

 耳元の声はすべてを肯定しているかのように囁く。

「え、」

「ラウトリスを見て、欲情しているのでしょう」

「そ、そうですけど、、、」

 否定しようにも、この小さい個室で密着している教会長にバレないわけがない。

「貴方もラウトリスのように身を委ねてしまえばいいのです」

 教会長の指が私の唇に触れてくる。
 唇を優しくなぞる。

 そちらに意識を持っていかれた一瞬で、教会長の別の手が私の硬いモノに服の上から触れていた。

「ほら、もうこんなに硬くなっている」

「っ、」

 暗い箱の中ではわからないかもしれないが、私の顔は真っ赤になっていることだろう。
 顔も肉体も熱くなった。

 教会長の手は私の身体に触れてくるを通り越して、まさぐり始めた。

「きょ、教会長、貴方はラウトリスのことが好きなんですよね。貴方は私とこんな関係を結んでいいのですか」

「リーウセン様も可愛いことをおっしゃいますね。ラウトリスはシエルド様と今も見ているような熱い行為を繰り広げているのに」

 法衣をズラされ、首筋に教会長の唇が落ちる。

 教会長の手を払う気すら起こらない。
 そのまま身を委ねて、ラウトリスとともに快楽に溺れたいとさえ考えてしまう。

 教会長は私の手を取り、指に口づけした。
 目が合うと優しく笑い、今度は唇に。

「貴方は私のせいにするだけで良いのですよ」

 服のなかに侵入してきた手が、私をダメにする。

「教会長、、、」

 潤んだ目で教会長を見てしまえば、瞼に口づけを落とされる。
 自分の熱か、相手の熱か、もはや区別もつかない。

 彼の指が私のなかに侵入し、濡れるほどほぐされた後は彼が挿ってきた。
 その行為だけが甘く優しく気持ち良く溺れさせる。




 ラウトリスとシエルドの行為は、一回休憩を挟んだ後、なおも続いた。
 さらにラウトリスが乱れていたが、彼の喘ぎ声を聞きながらも私は教会長との行為に没頭してしまった。

 お互い貪るように相手を求める。
 痛みも快楽の一部に成り果てる。
 教会長の上に跨り、もっと欲しいとねだる。

 コレはすでに教会長だけの責任ではない。
 完全に自分の意志で、この行為を求めている。
 彼のものをもっと欲しいと。










「、、、リーウセンさん」

 呆れ果てた声でクロウが名を呼んだ。

「はい」

 反省。
 正座して、クロウの次の言葉を待つ。

 その後ろには、不思議そうに見守るルッツ副隊長。
 表情がまったく変わらないセリム。

 昼食に上がってきた工事関係者たちは横目で見ながら足早に去っていったが。

「俺が言いたいことわかっているのか?」

「はひっ、」

 おおっと、声が上擦った。

 すでにラウトリスとシエルドが懺悔室からいなくなった後、ぐったりとした身体を教会長に優しく綺麗に拭かれていたときに、こう言われていた。
 もしかするとこの行為はクロウ様にはバレているかもしれません、そのときは是非とも私のせいにしてくださいね、と嬉しそうに微笑みながら。

 地下から上がってきたクロウが私を見た笑顔ですぐに判断できた。
 バレている、と。

「信頼できる者からの飲食物しか口にしないように、とか貴族だったんだから教わらなかったのかなー?」

「うっ、でも、ルッツ副隊長からの水も飲んだし、その水は元を辿ればこの教会の水だし」

 にこにこにこにこ、クロウの笑顔が怖い。
 うううっ、言い訳をしない方がいいのはわかっているのだが。
 この大魔導士にはすべてがお見通しなのだから。

「この短期間で、リーウセンさんは教会長に厚い信頼を寄せているんだねえ。薬を盛られたのに」

「へ?」

 薬を盛られた、、、って、もしかして、あの甘い水はっ。

「ええっと、どのような薬かお聞きしても?」

「気持ち良かったでしょう」

 目を細めて怪しげに聞かないでください。
 後ろに立つ護衛も超怖いから。二人とも。
 いつも優し気な爽やかイケメンの睨んだ目は相当怖い。鋭い目を見慣れてしまったセリムより恐ろしく感じる。

 この爽やかイケメンくんは、、、と考える間もなく。
 皆まで言われなくとも何の薬かわかるだろ、とクロウに目で言われている。
 ええ、今ようやくわかりました。
 あの激しさ、あの求めよう、教会長に薬を盛られたのは本当だろう。
 私のせいと言っていた教会長の言葉はまぎれもなく真実だった。

「本来ならば、しっかり休むべき時間を快楽にあてたことは大変申し訳なく思っております」

「俺の薬を疑わずに飲んでくれたのは信頼してくれているからと思っていたんだけどねえ、残念」

 ひぃぃぃーーーっ。
 残念と言いながら、黒い笑顔だよっ、この人はっ。

「いや、それはもちろん、私はクロウのことを信頼しているし、クロウが作った薬の効果も高いと」

 慌てて言い繕う。

「さて、冗談はさておき」

 クロウがスッと真顔に戻った。
 え?どこからが冗談なの?どこまでが冗談なの?

「リーウセンさんは流されすぎやしないか?ネルタ副班長に帝国へ誘われたらほいほいついていこうとするし、サザさんには一晩中付き合わされるし、教会長にはコロッと手玉にされてしまうし」

 ううううっ。
 優柔不断ってわけじゃないんですけどっ。
 帝国へは自分の意志で決めているつもりだったんですけど。

「ああ、だから実家からも宮廷魔導士団からも逃げていたのか。まあ、逃亡できるなら逃亡を選ぶのも手段としては悪くない」

 クロウが私の返事を待たずに勝手に結論を出した。
 一回深いため息を吐いた後。

「リーウセンさんはもう少し自分の意志を貫いた方がいいし、他人に流されるのも時と場合を考えた方がいいと思う」

「はい、以後気をつけます」

 頭を下げる私に。

「、、、忠告されたからといって、すぐに行動を変えられる人は少ないよね」

 クロウが素で追い打ちをかけた。
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