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1章 敵国の牢獄
1-76 泥沼にはまる
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午後は一生懸命仕事を頑張った。
クロウに見捨てられないように。
腰が痛くとも、初めて挿れられたアソコに違和感があろうとも。
「ルッツ副隊長とリーウセンさんの連携もうまく取れていたから、何回か経験すれば本番は大丈夫そうですね」
サラリと言うクロウが怖い。
本番というのは五百層のこと。
五百層には何があるのか。
黒ワンコ化する前の化け物以上がそこにいることは確実だ。
大教会地下の化け物だってクロウにとっては容易いかもしれないが、我々にとっては死線を越えて戦っている。
「寝不足二日酔いだったにもかかわらず問題がなかったのですから、今後も期待してます」
「いや、それはっ、午前中にしっかり休んだからでっ」
「しっかり休んだ?」
そこで首を傾げるな。
十時頃まではクロウの薬を飲んで、ぐっすりスヤスヤと休んでいたのは事実なんだっ。
「聖職者もそうだけど、貴族の純粋培養された子息への抑圧度合いもひっどいなー」
感想の呟きが呟きじゃない。
万人に聞こえるように話すんじゃない。
「扉を開けちゃったら閉じられないのは、環境に問題があるのか?」
「クロウもたまには扉を開いてみるのも悪くないんじゃないか」
クロウの言葉の意味をしっかり把握しているセリムがクロウに提案している。
観察してわかってきたことだが、クロウが密着と言えるほど近い距離に接近しても許しているのはセリムだけだ。
他の者が距離を詰めようとすると、サラリと躱しているのがクロウである。
サザさんが酔った勢いでクロウの肩を抱こうとしても、するりと逃げられているのである。
絶対的な壁がそこにはある。
「はは、お前とか?」
多少の苦笑い。
「俺以外だったら開かずの岩戸のままでいいよ」
「死ぬまでには結論を出すから、もう少し待ってろ」
セリムの優し気な声も、甘い笑顔もクロウ限定品である。
クロウはそれを知っている。
失うのは惜しいと思っている。
だから、死ぬまでには。
残酷なことを言っている自覚はあるのか?
「扉を開ける決意ができたなら、早めの返事がいいな」
セリムは照れもなくクロウの髪に口づけする。
この男はクロウだから待つのである。
クロウ以外は知ったことではない。
恐ろしいほど行動が一貫している。
実力行使の教会長とはまったく違うな。
薬を盛ったところで、クロウには見透かされて愛想尽かされるからかもしれないが。
もしクロウが扉を開けることがあるのなら、その相手はセリムしかいないと確信できる。
単純にそう思えてしまうのは、クロウの態度のせいだろう。
それはナーズ隊長やルッツ副隊長では難しいし、ガンガンに距離を縮めてくるサザさんだってその壁を越えられない。
そう、越えられない。
セリムはクロウへの想いを言葉にも行動にも何もかもに表している。
傍目からも一貫して一途に。
クロウが言い訳を探さないように。
クロウにセリムの本気を理解させるために。
それほどの想いをセリムはクロウにぶつけている。
感情を隠そうとして隠し切れていないルッツ副隊長がクロウに惚れていることは私にさえわかる。
本音を伝えるセリムに嫉妬しているが、ルッツ副隊長は行動に移し切れていない。
いや、嫉妬という明確な意志表示というよりは、仄暗い感情。
それは徐々にさらなる暗き世界へと誘うもの。
その華々しい外見からは想像できない領域。
何もかも手に入れているかのように思えるルッツ副隊長なのに。
それでも、もしルッツ副隊長が勇気をもって一歩踏み出していたとしても、、、クロウに対しては一歩踏み出したくらいでは変わらない。
一歩どころではなく、永遠に歩み続けなくてはならない道。
果てしなく遠い道のりの上、叶うかどうかさえわからないのに、セリムはその道を選択してしまった。
セリムの考えもわからなくもない。
挑戦する前に諦めることも辛いから。
ルッツ副隊長が躊躇う気持ちもわからなくもない。
その望みが叶う余地は限りなく低い。セリムがいなくとも。
クロウには今もなお墓参りに行く、最愛の妻がいるのだから。
帰り道。
「そういや、夜にこの大教会に来てみたら」
「え、夜に?えっと、魔法で?」
私の返事にクロウが普通に歩みをとめた。
「、、、いや、リーウセンさんは捕虜じゃないんだから、普通に帝城の門から出て、普通に歩いて来れば?」
「あ、そうだね。普通にね」
そうそう、普通じゃない人と接していたからおかしかったけれど、夜に出歩いても普通に問題ない。
ただ一度帝城に戻ってからまた出て来るとなると、億劫なだけで。
リンク王国の宮廷魔導士団勤めのときから、その辺は変わらない。王宮の敷地内にある施設を移動するだけの生活だった。
「教会長が待ってるよ」
「うっ」
そうですね。
ああいうことするなら夜ですね。
クロウに迷惑かけないためには、夜活動するのが一番ですよね。
はい。
帝城と大教会は広場を挟んで目の先にある。
面倒だと思ってしまうのは、門での出入りチェックである。
国の最高権力者がいるのだから当たり前、必要不可欠なことだとわかっているが、ひたすら面倒臭い。
「大教会の裏口はリーウセンさんだけが開けられるようにしておいてあげるよ。あ、間違っても居住棟の裏口じゃなくて大教会の裏口だから。居住棟の裏口はいくら開けようとしても開かないよー」
明るく言われても。
夜這いしに行けと言われているな、これ。
はい、仕事時間中に致した私が言い訳はしません。
ラウトリスの乱れた姿に発情し、教会長の巧みな技に陥落した。
広場は広いと言っても、ほんの少し雑談する程度で帝城の門には到着してしまう。
すでに門前。
一度戻って今夜行きますと教会長に宣言するより驚かせてみたい気持ちが生まれてしまった。
クロウ、セリム、ルッツ副隊長、そして、ゴートナー文官とは門の通用口から入ったところでお別れ。
ゴートナー文官とともに門を通過すると非常に楽なのだが。
コレが長年の実績の積み重ねなのかもしれない。
書類をまとめて提出し、夕食を食べた後に、お風呂に入って身体を清めた。
そして、いそいそと外出。
手荷物は最小限にしておく。
魔導士だから収納できる別空間があるだろ、と思っているかもしれないが、クロウの収納容量は異常である。魔導士によって差はあるが、並の魔導士なら大きい鞄一つくらいがせいぜいだ。
帝国が用意した宿舎施設の一室にもリンク王国から持ってきた荷物は日常的に使う物以外は取り出していない。そのため、そこまでの量が追加できないのである。
ゴートナー文官がいないときは門番による身分証、手荷物チェックは必須事項だ。
通いの使用人たちは毎日やられるのだから、時間帯によっては大渋滞していることだろう。
入るときは不審物を持ち込んでいないか等のチェックだが、出るときは帝城の物を持ち出していないかのチェックをされるわけだ。
どちらにしても細々な物まで確認される。ゆえに、手ぶらで来る強者もいるらしい。
さて、夜としては良い頃合い。
クロウに言われた裏口の扉を開けて大教会に侵入する。
教会長とラウトリスは居住棟にいるはずだ。
足音を忍ばせて、居住棟に向かう。
大教会と呼ばれるだけあって、まだ足を踏み入れたことのない居住棟も広い。
教会長の部屋がどこなのか、聞いておけば良かったと後悔しようとしたところ。
微かな声が耳に届く。
「あ、、、はぁっ、、、ん」
声の元に足を進めた、扉の先の部屋の内部では。
ほんの微かな光に照らされて、ベッドの上で交わっている教会長とラウトリスの姿があった。
足が震えて立っていられない。
私はその部屋の前から動けなくなっていた。
クロウに見捨てられないように。
腰が痛くとも、初めて挿れられたアソコに違和感があろうとも。
「ルッツ副隊長とリーウセンさんの連携もうまく取れていたから、何回か経験すれば本番は大丈夫そうですね」
サラリと言うクロウが怖い。
本番というのは五百層のこと。
五百層には何があるのか。
黒ワンコ化する前の化け物以上がそこにいることは確実だ。
大教会地下の化け物だってクロウにとっては容易いかもしれないが、我々にとっては死線を越えて戦っている。
「寝不足二日酔いだったにもかかわらず問題がなかったのですから、今後も期待してます」
「いや、それはっ、午前中にしっかり休んだからでっ」
「しっかり休んだ?」
そこで首を傾げるな。
十時頃まではクロウの薬を飲んで、ぐっすりスヤスヤと休んでいたのは事実なんだっ。
「聖職者もそうだけど、貴族の純粋培養された子息への抑圧度合いもひっどいなー」
感想の呟きが呟きじゃない。
万人に聞こえるように話すんじゃない。
「扉を開けちゃったら閉じられないのは、環境に問題があるのか?」
「クロウもたまには扉を開いてみるのも悪くないんじゃないか」
クロウの言葉の意味をしっかり把握しているセリムがクロウに提案している。
観察してわかってきたことだが、クロウが密着と言えるほど近い距離に接近しても許しているのはセリムだけだ。
他の者が距離を詰めようとすると、サラリと躱しているのがクロウである。
サザさんが酔った勢いでクロウの肩を抱こうとしても、するりと逃げられているのである。
絶対的な壁がそこにはある。
「はは、お前とか?」
多少の苦笑い。
「俺以外だったら開かずの岩戸のままでいいよ」
「死ぬまでには結論を出すから、もう少し待ってろ」
セリムの優し気な声も、甘い笑顔もクロウ限定品である。
クロウはそれを知っている。
失うのは惜しいと思っている。
だから、死ぬまでには。
残酷なことを言っている自覚はあるのか?
「扉を開ける決意ができたなら、早めの返事がいいな」
セリムは照れもなくクロウの髪に口づけする。
この男はクロウだから待つのである。
クロウ以外は知ったことではない。
恐ろしいほど行動が一貫している。
実力行使の教会長とはまったく違うな。
薬を盛ったところで、クロウには見透かされて愛想尽かされるからかもしれないが。
もしクロウが扉を開けることがあるのなら、その相手はセリムしかいないと確信できる。
単純にそう思えてしまうのは、クロウの態度のせいだろう。
それはナーズ隊長やルッツ副隊長では難しいし、ガンガンに距離を縮めてくるサザさんだってその壁を越えられない。
そう、越えられない。
セリムはクロウへの想いを言葉にも行動にも何もかもに表している。
傍目からも一貫して一途に。
クロウが言い訳を探さないように。
クロウにセリムの本気を理解させるために。
それほどの想いをセリムはクロウにぶつけている。
感情を隠そうとして隠し切れていないルッツ副隊長がクロウに惚れていることは私にさえわかる。
本音を伝えるセリムに嫉妬しているが、ルッツ副隊長は行動に移し切れていない。
いや、嫉妬という明確な意志表示というよりは、仄暗い感情。
それは徐々にさらなる暗き世界へと誘うもの。
その華々しい外見からは想像できない領域。
何もかも手に入れているかのように思えるルッツ副隊長なのに。
それでも、もしルッツ副隊長が勇気をもって一歩踏み出していたとしても、、、クロウに対しては一歩踏み出したくらいでは変わらない。
一歩どころではなく、永遠に歩み続けなくてはならない道。
果てしなく遠い道のりの上、叶うかどうかさえわからないのに、セリムはその道を選択してしまった。
セリムの考えもわからなくもない。
挑戦する前に諦めることも辛いから。
ルッツ副隊長が躊躇う気持ちもわからなくもない。
その望みが叶う余地は限りなく低い。セリムがいなくとも。
クロウには今もなお墓参りに行く、最愛の妻がいるのだから。
帰り道。
「そういや、夜にこの大教会に来てみたら」
「え、夜に?えっと、魔法で?」
私の返事にクロウが普通に歩みをとめた。
「、、、いや、リーウセンさんは捕虜じゃないんだから、普通に帝城の門から出て、普通に歩いて来れば?」
「あ、そうだね。普通にね」
そうそう、普通じゃない人と接していたからおかしかったけれど、夜に出歩いても普通に問題ない。
ただ一度帝城に戻ってからまた出て来るとなると、億劫なだけで。
リンク王国の宮廷魔導士団勤めのときから、その辺は変わらない。王宮の敷地内にある施設を移動するだけの生活だった。
「教会長が待ってるよ」
「うっ」
そうですね。
ああいうことするなら夜ですね。
クロウに迷惑かけないためには、夜活動するのが一番ですよね。
はい。
帝城と大教会は広場を挟んで目の先にある。
面倒だと思ってしまうのは、門での出入りチェックである。
国の最高権力者がいるのだから当たり前、必要不可欠なことだとわかっているが、ひたすら面倒臭い。
「大教会の裏口はリーウセンさんだけが開けられるようにしておいてあげるよ。あ、間違っても居住棟の裏口じゃなくて大教会の裏口だから。居住棟の裏口はいくら開けようとしても開かないよー」
明るく言われても。
夜這いしに行けと言われているな、これ。
はい、仕事時間中に致した私が言い訳はしません。
ラウトリスの乱れた姿に発情し、教会長の巧みな技に陥落した。
広場は広いと言っても、ほんの少し雑談する程度で帝城の門には到着してしまう。
すでに門前。
一度戻って今夜行きますと教会長に宣言するより驚かせてみたい気持ちが生まれてしまった。
クロウ、セリム、ルッツ副隊長、そして、ゴートナー文官とは門の通用口から入ったところでお別れ。
ゴートナー文官とともに門を通過すると非常に楽なのだが。
コレが長年の実績の積み重ねなのかもしれない。
書類をまとめて提出し、夕食を食べた後に、お風呂に入って身体を清めた。
そして、いそいそと外出。
手荷物は最小限にしておく。
魔導士だから収納できる別空間があるだろ、と思っているかもしれないが、クロウの収納容量は異常である。魔導士によって差はあるが、並の魔導士なら大きい鞄一つくらいがせいぜいだ。
帝国が用意した宿舎施設の一室にもリンク王国から持ってきた荷物は日常的に使う物以外は取り出していない。そのため、そこまでの量が追加できないのである。
ゴートナー文官がいないときは門番による身分証、手荷物チェックは必須事項だ。
通いの使用人たちは毎日やられるのだから、時間帯によっては大渋滞していることだろう。
入るときは不審物を持ち込んでいないか等のチェックだが、出るときは帝城の物を持ち出していないかのチェックをされるわけだ。
どちらにしても細々な物まで確認される。ゆえに、手ぶらで来る強者もいるらしい。
さて、夜としては良い頃合い。
クロウに言われた裏口の扉を開けて大教会に侵入する。
教会長とラウトリスは居住棟にいるはずだ。
足音を忍ばせて、居住棟に向かう。
大教会と呼ばれるだけあって、まだ足を踏み入れたことのない居住棟も広い。
教会長の部屋がどこなのか、聞いておけば良かったと後悔しようとしたところ。
微かな声が耳に届く。
「あ、、、はぁっ、、、ん」
声の元に足を進めた、扉の先の部屋の内部では。
ほんの微かな光に照らされて、ベッドの上で交わっている教会長とラウトリスの姿があった。
足が震えて立っていられない。
私はその部屋の前から動けなくなっていた。
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