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2章 そして、地獄がはじまった
2-19 色
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S級魔物らしき巨大な影が地平線に見えた。
こんな遠くからでも禍々しさがわかる。
緑色のドラゴンだった。
「地平線にドラゴン発見。S級魔物と思われるっ」
拡声魔法で魔の大平原にいる冒険者に伝える。
「リアム、私は少し先でアイツを迎え撃つ」
シロ様が俺に言うと、見晴らし台からスルリと消えた。
「あー、行っちゃったー。僕も行くねー。リアムー、A級、B級冒険者がいるあそこぐらいねー」
クロが小さい手で指示をした。そして、クロもその手を俺に振ると姿を消した。
その意図は。
「砦前方にいるA級、B級冒険者総員、後方に退避っ。シロ様とクロがそこでS級魔物を迎え撃つっ」
A級、B級冒険者がたとえ強い魔物と戦闘中であろうとも、そこから砦側に下がってきた。
S級魔物と守護獣の戦いに巻き込まれたら、踏み潰される。
地平線に見えた影が一瞬にして魔の大平原の見える場所にやって来た。
いきなり巨大化したクロとシロ様が魔の大平原に現れた。
小さい姿であそこまで行っていたのだろうか?よく冒険者や魔物に踏み潰されなかったな。
緑色のドラゴンが咆哮する。距離はまだあるのに砦までビリビリと響く。一緒に見晴らし台にいた弟アミールがぎゅっと俺の脚にしがみつく。
それは生けとし生けるものに与える絶対的な恐怖。
一瞬にしてすべてが沈黙したかのように見えた。
が、シロ様がドラゴンの喉笛を噛み切って、一瞬で勝負がついた。
あー、ありがたやー。拝んでおこ。
で、シロ様とクロのお食事会が始まった。
S級の魔物の危機が終わっても、冒険者が気を緩めて死んでしまっては意味がない。気を引き締めるよう注意喚起をして、一息ついた。
そう、一段落ついてしまった俺はじっくりと観察する。
シロ様は目の色は銀だが、全身真っ白と思っていた。
クロは胸から腹の毛が白い。
小さいとわかりにくかった。可愛い爪がついていたが色まで気にするほど、大きくはない。点だった点。しかも小さいときはほとんど毛に隠れている。
巨大なシロ様の巨大な爪は黒光りしている。
クロだけが黒に白が入っているのだと思っていたが、シロ様にも黒が入っていたのだ。
彼らは対なる存在だが、正反対の存在ではない。
そこに妙に納得した。
彼らは背をこちら側に向けている。
艶々としている背中の毛を滑り台にしてみたい。気持ち良くつるんと滑りそう。
七歳児の考えることなんて、そんなものだろう。背中に飛び乗りたい。
お食事会が終了すると、シロ様は大きい姿のまま歩いて来た。
「砦前方にいる冒険者、至急全員横方向に退避をお願いしますっ」
俺は拡声魔法で注意を促す。
冒険者たちがシロ様に踏み潰されないように慌てて逃げた。
シロ様は手にドラゴンの二本の角を持っている。
近くに来るとシロ様は砦より大きい。
その後ろからクロもやって来た。
「リアムにあげる。角は食べられないからね」
「僕はコレー。ドラゴンの牙ー。まあ、骨も食べられるんだから角も牙も食べられるんだけどね。硬すぎるからあんまり好きじゃないんだー」
「へえー?クロもシロ様もありがとう」
先程、ボキボキとものすごい音を立ててドラゴンを食べていたので、噛み砕こうと思えば何でも噛み砕けるに違いないと思ってた。
クロは角よりは小さいが、巨大なドラゴンの牙を何本も砦の見晴らし台に置こうとした。が、最上階の見晴らし台にはあまりスペースがない。
「クローっ、下のバルコニーに置いてー、シロ様もお願いしまーす」
クロもシロ様もバルコニーに置いてくれる。砦にいる者たちが一目見ようと、すぐにバルコニーへと集まってきたようだ。
大きいサイズで砦まで来てくれたので、逃げ遅れた小さい魔物たちは踏み潰された。小さい魔物と言っても人間よりは大きいサイズである。大変ありがたい。冒険者で潰された者はいないようだ。
「シロ様ー」
俺が笑顔で手を伸ばすと、角を置いたシロ様は見晴らし台に手を伸ばしてくれた。
「おー、爪、ツヤツヤー」
触るとツルツルだ。もちろん綺麗に尖っているから、この大きさで引っ掻かれたら即死かな?
シロ様はそのまま手を差し出してくれている。
見晴らし台はシロ様の肩ぐらいの位置である。
「てやっ」
そのままシロ様の手に乗ってみる。手もフカフカな毛だな。シロ様は丸みを帯びた肩に俺をそのまま手で運んでくれる。
「おおおおっ」
フッカフカ。七歳児は毛に埋もれる。つるんと滑るかと思いきや、毛が優しく包んでくれている。
「抜け毛でお布団作ったら快適な睡眠が約束されそう」
「あははー。そんなこと言うのリアムくらいだよー。僕の抜け毛ならあげるよー」
クロが手を伸ばしてきた。クロとシロ様の違いはあるのだろうか?
「じゃあ、白い部分の毛が良いなー。お布団の中身はなぜか白いものって感じがするからー」
「しっかたないなー。でも、僕の毛で特に柔らかいのは白いところだから最適かもねー」
お?クロには胸部分にくっついてみた。確かに白いところ柔らかいー。これも快適な睡眠がスヤスヤ、、、はっ、いけない、まだまだ魔物たちは砦まで来ているのであった。あまりの心地良さに寝落ちするところだった。
「リアムー、昨日あまり寝てないでしょー。まだまだ七歳なんだから、しっかり睡眠をとらないと、お肌に悪いよー」
「俺も冒険者だから、母上のように二徹三徹は当たり前のようにできないとっ」
あ、どこかの社畜のような発言をしてしまった気がしてならない。
だが、冒険者は座り仕事ではなく、戦いながらの二徹三徹だ。反対にカラダを動かしている方が眠くならないか?
「頑張るのも良いけど、ほどほどにね、リアム」
シロ様が俺をつまんでバルコニーに下ろしてくれた。
次の瞬間、巨大なクロとシロ様の姿が消える。そして、白い毛がモコっと俺の元にやってくる。
小さいクロが寄って来て、ニヤリ。
「布団にすると、夜は僕に包まれて寝るんだねー。昼も夜も僕に包まれるんだねー」
「昼はクロに包まれてないぞー?シロ様も触らせてくれてありがとうございました」
ペコリ。
「私の分の毛も一緒に布団にして良いからな」
追加の毛がモコっと増えた。嬉しいなー。この量なら母上の分の掛け布団も作れてしまうのでは?とりあえず綺麗に洗って干してどのくらいの量になるかで決めよう。意外と縮んでしまうかもしれない。
この二種類、同じ白でもちょっと違うようだ。その違いを口で説明することはできないのだが。あと、肌触りも。混ぜる方が良いのか、部分部分で使う方が良いのか、少々試行錯誤した方が良いのかな?
「ドラゴンの爪や牙よりも抜け毛を喜ぶのがお前らしいなー、坊ちゃん」
砦長のナーヴァルがバルコニーにやってきた。彼の右脚は補助具仕様なので山場が終わったら砦に戻されたようだ。怪我人等、彼が砦で指示しなければならないことは山ほどある。
「今、ドラゴンの素材は冒険者ギルド極西支部の職員さんが査定してくれてますよ。コレらは俺のものにはなりませんが、抜け毛は俺のお布団になりますからねー」
超巨大な袋につめつめ。母上の収納鞄に隙間があったら詰めてもらおう。今日は大量に魔物が入っているだろうから難しいかな?この軽さならサンタクロースさながら背中に背負っていっても良いだろう。
「何を言って?これらはシロ様とクロ様が坊ちゃんに与えたものだろ」
「今回S級魔物がこれだけスムーズに討伐できたのも、冒険者だけでなく、この砦に来てくれた皆様のお陰です。けれど、男爵家からはお金が一切出ませんから、これらを換金して、すべてが終了した後に皆様への慰労会と冒険者へのいくかばの褒賞金でも出せたらと思っております。母上にはまだ相談しておりませんが、男爵家の現当主は砦にお金を回さないので、一番良い方法なのではないかと」
S級魔物の素材は一部分だけでも希少で大変に高価な物だ。
けれども、この砦は大所帯だ。これだけの人数の冒険者で割ってしまうと、各冒険者に渡る褒賞金も微々たるものになってしまうだろう。慰労会まですると、城壁の修繕費までは残らない。が、今後のことを考えると、冒険者も協力してくれた住民も労っておくことが砦のため、つまりは母上のためになる。
「お前、本当に七歳児か?」
「けれど、俺は冒険者としては全然役に立ってませんので、せっかくクロとシロ様がくれたものですし有効活用しないと」
「、、、全然ねえ。あの演説は立派だったと思うぞ」
「演説?」
拡声魔法でけっこう喋っているのでどれがどれだかわかりませんが。
指示が的確だったってことだろうか?
「別にドラゴンの牙や角を売っても別にかまわないよー。だって、僕のお布団でリアムが寝てくれるんだしー」
「私のお布団でもある」
クロとシロ様はなぜかご満悦である。
「今日はお布団がなくても泥のように眠れそう」
この袋の上でも寝れそうだ。
七歳児だとあまり無理もできないなあ。
けれど、あと数時間の辛抱だ。
見晴らし台に戻ると、弟アミールは床でスヨスヨと眠っていた。
こんな遠くからでも禍々しさがわかる。
緑色のドラゴンだった。
「地平線にドラゴン発見。S級魔物と思われるっ」
拡声魔法で魔の大平原にいる冒険者に伝える。
「リアム、私は少し先でアイツを迎え撃つ」
シロ様が俺に言うと、見晴らし台からスルリと消えた。
「あー、行っちゃったー。僕も行くねー。リアムー、A級、B級冒険者がいるあそこぐらいねー」
クロが小さい手で指示をした。そして、クロもその手を俺に振ると姿を消した。
その意図は。
「砦前方にいるA級、B級冒険者総員、後方に退避っ。シロ様とクロがそこでS級魔物を迎え撃つっ」
A級、B級冒険者がたとえ強い魔物と戦闘中であろうとも、そこから砦側に下がってきた。
S級魔物と守護獣の戦いに巻き込まれたら、踏み潰される。
地平線に見えた影が一瞬にして魔の大平原の見える場所にやって来た。
いきなり巨大化したクロとシロ様が魔の大平原に現れた。
小さい姿であそこまで行っていたのだろうか?よく冒険者や魔物に踏み潰されなかったな。
緑色のドラゴンが咆哮する。距離はまだあるのに砦までビリビリと響く。一緒に見晴らし台にいた弟アミールがぎゅっと俺の脚にしがみつく。
それは生けとし生けるものに与える絶対的な恐怖。
一瞬にしてすべてが沈黙したかのように見えた。
が、シロ様がドラゴンの喉笛を噛み切って、一瞬で勝負がついた。
あー、ありがたやー。拝んでおこ。
で、シロ様とクロのお食事会が始まった。
S級の魔物の危機が終わっても、冒険者が気を緩めて死んでしまっては意味がない。気を引き締めるよう注意喚起をして、一息ついた。
そう、一段落ついてしまった俺はじっくりと観察する。
シロ様は目の色は銀だが、全身真っ白と思っていた。
クロは胸から腹の毛が白い。
小さいとわかりにくかった。可愛い爪がついていたが色まで気にするほど、大きくはない。点だった点。しかも小さいときはほとんど毛に隠れている。
巨大なシロ様の巨大な爪は黒光りしている。
クロだけが黒に白が入っているのだと思っていたが、シロ様にも黒が入っていたのだ。
彼らは対なる存在だが、正反対の存在ではない。
そこに妙に納得した。
彼らは背をこちら側に向けている。
艶々としている背中の毛を滑り台にしてみたい。気持ち良くつるんと滑りそう。
七歳児の考えることなんて、そんなものだろう。背中に飛び乗りたい。
お食事会が終了すると、シロ様は大きい姿のまま歩いて来た。
「砦前方にいる冒険者、至急全員横方向に退避をお願いしますっ」
俺は拡声魔法で注意を促す。
冒険者たちがシロ様に踏み潰されないように慌てて逃げた。
シロ様は手にドラゴンの二本の角を持っている。
近くに来るとシロ様は砦より大きい。
その後ろからクロもやって来た。
「リアムにあげる。角は食べられないからね」
「僕はコレー。ドラゴンの牙ー。まあ、骨も食べられるんだから角も牙も食べられるんだけどね。硬すぎるからあんまり好きじゃないんだー」
「へえー?クロもシロ様もありがとう」
先程、ボキボキとものすごい音を立ててドラゴンを食べていたので、噛み砕こうと思えば何でも噛み砕けるに違いないと思ってた。
クロは角よりは小さいが、巨大なドラゴンの牙を何本も砦の見晴らし台に置こうとした。が、最上階の見晴らし台にはあまりスペースがない。
「クローっ、下のバルコニーに置いてー、シロ様もお願いしまーす」
クロもシロ様もバルコニーに置いてくれる。砦にいる者たちが一目見ようと、すぐにバルコニーへと集まってきたようだ。
大きいサイズで砦まで来てくれたので、逃げ遅れた小さい魔物たちは踏み潰された。小さい魔物と言っても人間よりは大きいサイズである。大変ありがたい。冒険者で潰された者はいないようだ。
「シロ様ー」
俺が笑顔で手を伸ばすと、角を置いたシロ様は見晴らし台に手を伸ばしてくれた。
「おー、爪、ツヤツヤー」
触るとツルツルだ。もちろん綺麗に尖っているから、この大きさで引っ掻かれたら即死かな?
シロ様はそのまま手を差し出してくれている。
見晴らし台はシロ様の肩ぐらいの位置である。
「てやっ」
そのままシロ様の手に乗ってみる。手もフカフカな毛だな。シロ様は丸みを帯びた肩に俺をそのまま手で運んでくれる。
「おおおおっ」
フッカフカ。七歳児は毛に埋もれる。つるんと滑るかと思いきや、毛が優しく包んでくれている。
「抜け毛でお布団作ったら快適な睡眠が約束されそう」
「あははー。そんなこと言うのリアムくらいだよー。僕の抜け毛ならあげるよー」
クロが手を伸ばしてきた。クロとシロ様の違いはあるのだろうか?
「じゃあ、白い部分の毛が良いなー。お布団の中身はなぜか白いものって感じがするからー」
「しっかたないなー。でも、僕の毛で特に柔らかいのは白いところだから最適かもねー」
お?クロには胸部分にくっついてみた。確かに白いところ柔らかいー。これも快適な睡眠がスヤスヤ、、、はっ、いけない、まだまだ魔物たちは砦まで来ているのであった。あまりの心地良さに寝落ちするところだった。
「リアムー、昨日あまり寝てないでしょー。まだまだ七歳なんだから、しっかり睡眠をとらないと、お肌に悪いよー」
「俺も冒険者だから、母上のように二徹三徹は当たり前のようにできないとっ」
あ、どこかの社畜のような発言をしてしまった気がしてならない。
だが、冒険者は座り仕事ではなく、戦いながらの二徹三徹だ。反対にカラダを動かしている方が眠くならないか?
「頑張るのも良いけど、ほどほどにね、リアム」
シロ様が俺をつまんでバルコニーに下ろしてくれた。
次の瞬間、巨大なクロとシロ様の姿が消える。そして、白い毛がモコっと俺の元にやってくる。
小さいクロが寄って来て、ニヤリ。
「布団にすると、夜は僕に包まれて寝るんだねー。昼も夜も僕に包まれるんだねー」
「昼はクロに包まれてないぞー?シロ様も触らせてくれてありがとうございました」
ペコリ。
「私の分の毛も一緒に布団にして良いからな」
追加の毛がモコっと増えた。嬉しいなー。この量なら母上の分の掛け布団も作れてしまうのでは?とりあえず綺麗に洗って干してどのくらいの量になるかで決めよう。意外と縮んでしまうかもしれない。
この二種類、同じ白でもちょっと違うようだ。その違いを口で説明することはできないのだが。あと、肌触りも。混ぜる方が良いのか、部分部分で使う方が良いのか、少々試行錯誤した方が良いのかな?
「ドラゴンの爪や牙よりも抜け毛を喜ぶのがお前らしいなー、坊ちゃん」
砦長のナーヴァルがバルコニーにやってきた。彼の右脚は補助具仕様なので山場が終わったら砦に戻されたようだ。怪我人等、彼が砦で指示しなければならないことは山ほどある。
「今、ドラゴンの素材は冒険者ギルド極西支部の職員さんが査定してくれてますよ。コレらは俺のものにはなりませんが、抜け毛は俺のお布団になりますからねー」
超巨大な袋につめつめ。母上の収納鞄に隙間があったら詰めてもらおう。今日は大量に魔物が入っているだろうから難しいかな?この軽さならサンタクロースさながら背中に背負っていっても良いだろう。
「何を言って?これらはシロ様とクロ様が坊ちゃんに与えたものだろ」
「今回S級魔物がこれだけスムーズに討伐できたのも、冒険者だけでなく、この砦に来てくれた皆様のお陰です。けれど、男爵家からはお金が一切出ませんから、これらを換金して、すべてが終了した後に皆様への慰労会と冒険者へのいくかばの褒賞金でも出せたらと思っております。母上にはまだ相談しておりませんが、男爵家の現当主は砦にお金を回さないので、一番良い方法なのではないかと」
S級魔物の素材は一部分だけでも希少で大変に高価な物だ。
けれども、この砦は大所帯だ。これだけの人数の冒険者で割ってしまうと、各冒険者に渡る褒賞金も微々たるものになってしまうだろう。慰労会まですると、城壁の修繕費までは残らない。が、今後のことを考えると、冒険者も協力してくれた住民も労っておくことが砦のため、つまりは母上のためになる。
「お前、本当に七歳児か?」
「けれど、俺は冒険者としては全然役に立ってませんので、せっかくクロとシロ様がくれたものですし有効活用しないと」
「、、、全然ねえ。あの演説は立派だったと思うぞ」
「演説?」
拡声魔法でけっこう喋っているのでどれがどれだかわかりませんが。
指示が的確だったってことだろうか?
「別にドラゴンの牙や角を売っても別にかまわないよー。だって、僕のお布団でリアムが寝てくれるんだしー」
「私のお布団でもある」
クロとシロ様はなぜかご満悦である。
「今日はお布団がなくても泥のように眠れそう」
この袋の上でも寝れそうだ。
七歳児だとあまり無理もできないなあ。
けれど、あと数時間の辛抱だ。
見晴らし台に戻ると、弟アミールは床でスヨスヨと眠っていた。
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