解放の砦

さいはて旅行社

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7章 愚者は踊る

7-19 面白いから後をつけてみる

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 彼らは魔法学園一年一組の学生らしい。
 A級魔導士ということを鼻にかけているので、冒険者ギルドの職員さんたちにも嫌われていると、職員さんが言っていた。
 一人がE級冒険者で、残りの三人が魔法学園に入学してからの冒険者登録のF級冒険者。
 ほぼ駆け出しホヤホヤで、実力のある魔導士だ、と大口を叩くわりにはたいした魔物を討伐してこないのだそう。

 職員さん、冒険者情報を他の冒険者にボロボロこぼして良いんですかね?

 ゼンさんも、あんなヤツらに負けるなよー、期待の新人くーん、となぜか俺に言ってくる。ゼンさんは五人でパーティを組んでいる。なかなか強者だが、クセのある冒険者がメンバーには揃っているらしい。
 魔の森では収納鞄を持っていても一か月という長期に渡り遠征することはないらしい。
 ゼンさんたちは遠出してもせいぜい一週間程度で王都に戻る生活を続けている。

 この地にはS級冒険者がいるからだ。
 奥地は彼らの領域。
 A級以下の冒険者はほぼ足を入れることはない。迷子や間違って入ることはあるようだが。。。
 魔の森は魔の大平原より広くはないからね。

 ほら、ビーズ、王城でぬくぬく豪華生活なんかできないじゃないか。王都でのS級冒険者なんて大変だぞー。魔の森の奥地で働き詰めだぞー。




 普通、他の冒険者の後をつけると、すぐに気づかれて注意される。
 獲物を横取りする輩だと思われるからな。

 コイツら魔の森に大声で話しながら入っていき、俺が後ろから尾行していても気づかない。
 魔の大平原とは違い、姿を隠す木が山ほどあるので気づかれにくいとは思うが、その探索魔法って役に立つの?
 俺の存在、気づいてないでしょ。
 大声で呪文を唱えているけど、キミたちのその大声の方が魔物を誘き出してくれるよ。
 もしかして、毎回こんなことやってるの?
 怖いよ、キミたち。
 自分たちを餌に使ってるの?
 今まで運が良かったとしか思えない。

 というか、この四人、全員武器を持っていない。
 マントの下に隠し持っている、わけでもなさそう。収納鞄は、、、なさそうなんだけど。
 高価そうな魔導士の杖を持っているが、、、多少の打撃は加えられるだろうが、殺傷能力はなきに等しい。

 東の門から、ほどほどに歩いた場所で。

「巨大な強そうな魔物発見っ」

 学生の一人が大声を発した。
 うんうん、視認してから言うな。探索魔法はどこ行った。
 遠くに隠れている俺の方が先にその魔物に気づいていたくらいだぞ。

 んで、強そうな魔物と言ったが、コレはA級魔物である。
 しかも、魔の森のコイツらは魔法をまったく受けつけない。
 他のダンジョンや魔の大平原では、普通に魔法で倒せるので、魔の森の独自の進化だ。

 大口を叩く彼らは魔法でどんな戦法があるのだろうか。
 E級とF級冒険者がA級魔物にどう戦うのか、乞うご期待っ。
 こう書くと、ひたすら無謀だな。

「よしっ、当初の計画通り、二組に分かれて、一組は呪文を詠唱、一組は魔物を気を逸らす」

 良いことは言っているんだけどね、実力が伴えば。
 そして、普通に攻撃魔法を魔物に発射しました。
 超派手な攻撃魔法だな。

「、、、」

 だから、魔物はまったくのノーダメージだよ。
 魔法の直接攻撃はきかないって冒険者ギルドで聞かなかったの?
 まあ、まだ魔法学園の講義では説明を受けてないからねえ。
 けど、ダンジョンに来るのなら情報収集は大切だよ。

 数分後、四人ともボロボロになり、致命傷ではないがけっこう怪我している。
 二人は戦意喪失状態。
 一人は泣いている。
 一人は一応詠唱を続けているが、、、まだ攻撃魔法を直接あてようとしている。

 魔法しかなくとも、考えれば他に戦法はあると思うんだけど。。。
 彼らには何もありませんでした。

「うわああああーーーーっ、もう嫌だーーーーっ、誰か助けてーーーーっ」

 泣いている一人が泣き叫んで、この場を走り去ろうとした。

「待ってくれっ」

 戦意喪失していた二人がそれを追いかけた。

 魔物は大声を喚き散らすイキの良い獲物に目をつけた。
 手を伸ばそうとしたが、詠唱していた学生が魔法を発動した。

 うん、意味ないけど。
 魔法が派手なので、魔物が邪魔されて苛立つ効果はあったかな。
 目標が逃げた三人から、この学生に移った。

 腕の一振りで簡単に吹っ飛ばされた。
 見事な距離を飛んだなー。
 隠れている俺の元まで来たよー。

「ぐはっ」

 即死しないだけ偉いと思うよ。
 三人はとっととトンズラしてしまったので、魔物は獲物が減ったと苛立っているよー。

「さて、魔法学園の学生くん、キミはこのまま何もしないで死ぬつもりかなー」

「冒険者かっ。金は出すっ。助けてくれっ。マックレー侯爵家が責任を持って支払うっ」

 あ、コイツ踏み倒す気満々だな。
 冒険者に貴族は少ない。侯爵家が圧力をかければ、と。こんな状況でも目が語っている。

 俺は口の端で笑う。

「マックレー侯爵家は関係ない。お前の命の値段なのだから、お前が責任を持って払え」

「わかった。俺、ゾーイ・マックレーが絶対に支払うと誓う」

「ついでに、お前は今後、俺に直接関わらないでくれ」

「よくわからないが、わかった。関わらないっ」

 よく考えろよ。
 何でよくわからないのにわかったと返事するんだよ。
 まあ、死ぬ一歩前なら死神にもすがるか。

「誓約は成ったぞ。ゾーイ・マックレー。助けてやるから誓約は守れよ」

 誓約魔法の刻印をいつものように革の切れ端に刻んだ。そして、同じ刻印をもう一つ刻んでおいた。
 そして、俺は双剣を抜いた。




「あ、ありがとうございました」

 東の門で礼を言うゾーイ・マックレーがいる。

「、、、この件は冒険者ギルドにも魔法学園にもマックレー侯爵家にも言わないでおく。命の値段の支払いはお前の出世払いにしておいてやる」

 ぺしっとヤツの顔に革の切れ端を投げる。

「え?」

「誓約魔法の刻印だ。俺の方にも同じものがある。誓約を破るなら、それ相応の報いを考えるから、そのつもりで」

 ゾーイ・マックレーをその場に残し、俺は冒険者ギルドに向かう。逃げた三人はきちんと東の門から出ただろうか。俺もゾーイ・マックレーも門番に確認しなかったけど。

 口約束ではなく、誓約魔法で結ばれたものは反故にはできない。
 貴族ならなおさらだ。
 誓約魔法で守れない誓約を結ぶことは、相当な恥だからである。
 期限も罰則もなくとも。

 報い→魔の大平原に連れていく。
 適材適所だよねー。
 この魔の森では役立たずでも、あの高火力な攻撃魔法は魔の大平原では大活躍さっ。
 うんうん、良いなー、あの攻撃魔法。ドーンと俺も使ってみたい。残念ながら俺には使えないけどっ。

 A級魔導士の冒険者って砦にいないからさー。
 支払う気がなかったら、俺が砦での保護者になっても、ずるずると引き摺ってでも連れて帰るよー。だから、E級冒険者のままでも大丈夫だよー。
 是非とも、砦に連れて帰りたいなー。皆へのお土産にしたいなー。

 誓約魔法ではお金を踏み倒して逃げることができない。
 ヤツと直接は関わりたくないけど、間接的に指示を出すことはできるから問題はないだろう。
 砦長から指示を出してもらえば良いんだしー。


 まあ、普通に金で支払ってもらってもいいんだけどね、それはそれで残念だけど。




「あら、リアムさん、A級魔物ですか。しかも解体済み」

 ちょーっと夜も遅い時間なので、冒険者ギルドの買取カウンターにいる冒険者も少ない。

「解体場もお金取るし、解体しないで納品すれば解体手数料とるし、王都の冒険者ギルドって儲けまくってませんか?」

「王都は土地代もバカ高いので、仕方ないんですよー。冒険者ギルドも苦肉の策です。けど、ダンジョン内で解体するって危なくないですか」

「超危険ですよ、血のニオイさせるし、手早くやらないと。けど、一体一体はともかく、数が多くなると馬鹿にならない金額になるので嫌です」

「嫌と言い切れるリアムさん、さすがですっ」

 職員さんが魔物の状態を見ている。

「はい、素晴らしいの一言です。魔石も上質です。買取金額と討伐ポイントはこちらになります」

 紙を渡される。

「あれ?」

「何かおかしいところがありました?」

「この魔物の討伐ポイントってこんなに高いものでしたっけ?」

 魔物の討伐ポイントは冒険者ギルドの支部によって変わるものではない。
 確かメモした物が収納鞄にあったよな。
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