男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社

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1章 双子の姉の失踪

1-2 砂糖菓子のようなやべえ女子生徒1

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「やべえ女がいる」

 つい声に出してしまった。

「オルレア様はそんな言葉遣いしません」

 我が家バーレイ侯爵家の筆頭侍女セイラが、俺の髪をクシで梳かしながら言った。
 ここは貴族学校の女子寮の一室、双子の姉オルレアの部屋だ。
 あと二人の侍女も部屋にいて、俺の身支度を手伝っている。

 普通、学校に連れて来る侍女はその女子生徒と同年代もしくは多少年上の者だ。
 だがしかし、オルレアは両親に溺愛されている。年齢がかなり上の信頼も厚い筆頭侍女を寮にまでついて来させていた。
 ある意味、問題児のお目付け役的な立場のはずだが、オルレアは学校で自由奔放に動き回っていたようだ。。。
 セイラもオルレア大好きな使用人である。
 残念ながら、このセイラは双子であっても俺にはものすごく厳しい。

「オルレア様は美しく綺麗なストレートの長い髪でしたのに」

「悪かったね。梳きづらいクセっ毛で」

 オルレアの替え玉にされるために、事情を説明される前だったにもかかわらず、俺は勝手に魔法薬で髪を腰まで伸ばされた。
 そのとき、この筆頭侍女には叫ばれたものだ。

 こんなの、オルレア様ではございませんーーーっっ、と。

 うん、俺、オルレアじゃないからね。
 クセ毛でうねっているのは俺のせいではない。
 双子でも、同じ銀髪でも、完全に同じなわけではない。
 そもそも、男と女だし。
 侍女が毎日髪飾りの魔道具に魔力を込めて、ストレートに仕上げているのである。
 俺がポニーテールにしなければならないワケは、その髪飾りをつけるためだ。

 もちろん髪だけでなく、化粧も施す。
 オルレアって化粧していたんだな。。。
 今の俺は肌のお手入れも毎日入念にされている。オルレア様はこんな荒れた肌はしておりませんっ、とセイラに言われながら。
 仕方ないと思うけど。
 俺、騎士学校で毎日勉強だけでなく訓練にも励まなければならなかったのだから。
 厳しい寮生活でお肌なんて気にしている間もない。
 騎士学校には従者も連れて行けず、すべて自分自身でしなければいけないので大変だった。
 貴族学校のオルレアのこの環境とは雲泥の差だ。

「今日もなかなかの出来栄えです。さすがに完璧なオルレア様には程遠いですが」

 はいはい、悪かったねー。
 男に女の替え玉をさせる方が悪いんですよ。

 朝の身支度が終わり、戦場に出された。
 セイラに女性についてのアドバイスをもらいたかったのに。
 やべえ女への対処方法を教えてもらいたかったのに。




「おはようございます、オルレア様」

 女子寮のオルレアの部屋を一歩出ると、そこは戦場。
 通路自体広いのも、貴族学校の寮ならでは。
 この学校には貴族の子供しかいない。どんなに優秀だろうとも、非凡な才能を持っていようとも、平民は貴族学校には通えない。入学するためには貴族と養子縁組をするしかないのである。

 扉を開けると朝も早くから、三人の女子生徒が待ち構えている。
 超怖い。
 一定距離は離れていても、圧を感じる。

「おはよう、子猫ちゃんたち」

「今日も朝の鍛錬にお付き合いいたします」

「ありがとう」

 俺が絶対にしないキラキラな笑顔で返す。
 そうしないと後ろに立っている筆頭侍女セイラの視線が痛い。

 さて、この挨拶をしてくれたやべえ女である子猫ちゃんことアニエス・グロスは男爵家令嬢である。
 オルレアは個人としてこの子をきちんと認識していたのだろうか?
 下級生の女子生徒への呼び名は子猫ちゃんで統一していたそうな。。。
 疑問が残るところであるが、本人がいないので確認もしようがない。

 アニエスはこの学校の下級生で構成されているオルレア様を慕う会の会長だ。
 オルレアに対して下級生が勝手に暴走しないように見張る会である。
 それ自体はありがたいのだが。

「今日は冷やした紅茶と蜂蜜水を用意しております。必要なときにおっしゃってください」

 アニエスはにっこりと笑って言った。それらを後ろの二人に持たせている。タオルやおしぼり等は言わなくとも彼女たちにとっては常備品だ。
 俺と筆頭侍女が歩み始めると後についてくる。

 俺たちが朝食前に行くのは訓練場。
 オルレアも剣の訓練をする。
 貴族の子息にとって、剣は嗜みでもある。が、もちろん令嬢であるオルレアには本来趣味でも必要ない。

 まあ、趣味でも何もしなければ腕がなまってしまうので、オルレアのこの習慣は俺にとってありがたかった。
 貴族の子息でも剣の訓練なんて、やらない奴は一切やらない。
 が、嗜み程度と言っても、貴族学校での男子は必修科目だが。ある程度はできないと格好が悪いことになる。
 というわけで、訓練場で朝の訓練をしている男子は少なくない。国防に関わる家だとなおさらである。

「オルー、おはよー」

「シン、おはよう」

 訓練場で俺の幼馴染みのシン・オーツと会う。
 短い茶髪のシンが人好きのする笑顔で迎えた。
 オーツ伯爵家の長男で跡継ぎなので、そこまで剣技を磨く必要もない人物だが、俺の事情を知ってから俺の訓練にたまに付き合うようになった。
 というか、この学校に通う元々の親しい友人たちには替え玉をしたら即座にバレた。
 双子とはいえバレないのも悲しいものがあったからソレはソレで構わないのだが、他にはバレないように協力をしてもらっているありがたい連中の一人だ。

 双子の姉はオルレア、俺の名はオルト。
 彼らは昔から俺のことをオルと呼ぶ。
 俺の知る限りオルレアのことをオルとは呼んでいなかったが、名前からオルと略称で呼んでもおかしくはない。ので、そのまま呼ばせている。

 準備体操、軽めに走ってから、剣を握る。
 オルレアの剣は細身の軽いものだった。
 それだと俺にとっては一撃が軽くなってしまうので、鞘だけオルレアのものに似せたように作り、使い慣れた俺の剣を使用している。

 貴族学校は白い制服。
 汚れたらものすごく目立つ。
 つまり、世話する者が必要な制服なのである。

 騎士学校は逆に黒。汚れが目立たないからありがたい。
 返り血を浴びても目立たない。

 シンと剣で打ち合う。
 どちらも魔剣なので刃こぼれ等の心配もいらない。手入れも魔力を込めるだけでいい。便利なご都合主義なのである。

「オルレア様、素敵」

 ほおーうっとため息とともに呟かれたアニエスの声が聞こえた。

 訓練場にいる女性は壁際にいる先程の女子生徒三人と、俺が連れてきた筆頭侍女だけである。
 貴族の子息の従者たちは多いが、侍女も他にはいない。
 この貴族学校も全寮制なので、男子生徒には男性の従者が、女性には女性の侍女がついている。異性の使用人は寮内に入れないため世話する活動範囲も制限されてしまうので、必要なときに家から呼ばれる程度である。

 そして、訓練場の周囲にある観覧席にはかなりの数の女子生徒がいる。
 分散されているので、目当ての男子生徒は異なるのだろう。
 やはり上位貴族でイケメンが人気がある。
 そういうヤツらはすでに婚約者がいるのだが。

 俺には婚約者なんていないよー。今なら俺の横、空いているよー、と言ったところで、今の俺はオルレアの姿なのでどうしようもない。
 この姿で女性になんて手を出したら、バレたときにもっと恐ろしいことが待っている。。。
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