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プロローグ
プロローグ②
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夢は、叶わないよりも叶った後のほうがつらいんじゃないかって最近思う。
午後十時。自宅アパートの一室で持ち帰りの残業をこなす。カタカタとキーボードを打ち込む音と、時計のチクタクなる音だけが、狭いアパートのワンルームに響いていた。
子供の頃憧れていた『学校の先生』という職業の現実は、オーバーワークとモンペのクレームに脅かされる日々だった。もちろん、生徒たちはみんな可愛いし大好きだ。でも、好きなだけではつづけられない現実がある。
同期で入った仲の良かった女の子は、結婚を機に退職した。正直、羨ましいと思った。
僕も女に生まれていれば……。女には女の大変さがあるのはわかっている。それに、性別違和があるわけでもない。でも、祝福されてウェディングドレスを着る彼女と、好きな人と結婚することすら許されない自分を比べてひどく惨めになった。
「ああ……もうすぐ十二時……宿題の採点……まだ、終わってない……」
ふわぁと一つあくびをして、伸びをする。凝りに凝り固まった背中がバキバキと心地のよい音を立てた。
眠気覚ましに夜風に当たろうと、安い無地のカーテンを開けた。僕が住むマンションは住宅街にあるので、もうみんな寝静まっているようで、電灯の弱弱しい明かりしかついていない。
ベランダに出て上を見上げると、薄黒い星一つ見えない空が広がっていた。スウェットの上下と素足にスリッパだと肌寒く、もうすぐ冬だと分からせてくるかのようだった。
「いっ……っ!?」
少しぼーっとしていたら、すねを何かにぶつけて現実に引き戻された。視界の端に何か棒状のものが倒れようとしているのを察知し、とっさにそれを両手でキャッチした。
「灰皿……ぁ、りんちゃん……」
それは、もうずっと前に出て行った恋人が残した、スタンドタイプの灰皿だった。
午後十時。自宅アパートの一室で持ち帰りの残業をこなす。カタカタとキーボードを打ち込む音と、時計のチクタクなる音だけが、狭いアパートのワンルームに響いていた。
子供の頃憧れていた『学校の先生』という職業の現実は、オーバーワークとモンペのクレームに脅かされる日々だった。もちろん、生徒たちはみんな可愛いし大好きだ。でも、好きなだけではつづけられない現実がある。
同期で入った仲の良かった女の子は、結婚を機に退職した。正直、羨ましいと思った。
僕も女に生まれていれば……。女には女の大変さがあるのはわかっている。それに、性別違和があるわけでもない。でも、祝福されてウェディングドレスを着る彼女と、好きな人と結婚することすら許されない自分を比べてひどく惨めになった。
「ああ……もうすぐ十二時……宿題の採点……まだ、終わってない……」
ふわぁと一つあくびをして、伸びをする。凝りに凝り固まった背中がバキバキと心地のよい音を立てた。
眠気覚ましに夜風に当たろうと、安い無地のカーテンを開けた。僕が住むマンションは住宅街にあるので、もうみんな寝静まっているようで、電灯の弱弱しい明かりしかついていない。
ベランダに出て上を見上げると、薄黒い星一つ見えない空が広がっていた。スウェットの上下と素足にスリッパだと肌寒く、もうすぐ冬だと分からせてくるかのようだった。
「いっ……っ!?」
少しぼーっとしていたら、すねを何かにぶつけて現実に引き戻された。視界の端に何か棒状のものが倒れようとしているのを察知し、とっさにそれを両手でキャッチした。
「灰皿……ぁ、りんちゃん……」
それは、もうずっと前に出て行った恋人が残した、スタンドタイプの灰皿だった。
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