バリタチ人狼ゲーム

泥人形

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三日目

三日目:生贄投票②

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 大広間にいるのは、僕、屑山、りんちゃん、佐藤、二階堂、宇佐霧、鳥頭の七人だ。あいかわらず、筆川は投票の時間になっても部屋から出てこなかった。

「やめてくださいよ!」
 二階堂が、宇佐霧の手を振り払う。手には小さめの角材を持っていた。ほんとうに角材が好きだな、君は。

「俺は、投票したらすぐに、部屋に戻らせていただきますからね!!」
 そうか。二階堂も、筆川と同じように籠城することを決めたのか。だが、真面目な彼のことだ。投票のときだけは、こうして大広間に来てくれるらしい。




 時刻は六時十分前。僕ら七人は、誰もスマホを手に取ろうとしなかった。




「ねぇ、俺は誰に入れるかをもう決めたよ」 
 先に仕掛けてきたのは、屑山だった。

「俺は、黒崎くんに入れる」
 彼は僕を指さした。


「ワサシもある」
 仲間である佐藤も、屑山につづく。

 鳥頭は、少し考え込んでいる様子だった。彼は今、屑山に従うべきか否か、どちらのほうが自分の生存確率が高くなるのかを計算している。筆川というカードを手に入れたのだ。無理して屑山に着いていく必要はなくなった。





「ほ、ほんとうに、黒崎さんがバリネコなんですよね!?」
 二階堂が、角材を抱きかかえながら震えている。おそらく、投票前に屑山に僕に投票しろと言われたのだろう。

「ああ、今度は確実に、黒崎くんがバリネコだよ」
 屑山は、ハイライトの入っていない黒く濁った大きな瞳を三日月形に細めた。嘘つき野郎! お前は僕がバリネコであろうとなかろうと、確実に殺すまで吊るつもりだろうが!

「黒崎さんがバリネコ……黒崎さんがバリネコ……」
 二階堂は、迷っているようだ。まるで、バイブレーション機能がついているかのようにガクガクと震えている。真面目な彼のことだ、きっと猫多のことを思い出しているのだろう。そして、責任を感じている。



 宇佐霧は周りの様子をうかがっている。自分が得する方に着くつもりだろう。

 りんちゃんは、もう投票を終えて平然としていた。いや、平然としているように見えた。よく見ると足が小刻みに貧乏ゆすりをしている。それに、腕を組んだまま、人差し指で軽くトントンとリズムを刻む仕草を繰り返している。

 元カレが死ぬかもしれないんだ。冷静でいられるわけがないだろう。そう考えると、取り乱すりんちゃんの姿を見るために一回くらいなら死んでもいいかな……なんて僕は思えた。




 そしてついに、僕は一度も弁明も反論もしないまま、本日の生贄投票が終了した。
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