【完結】擦れた桜章~自衛官だった私は、牢獄から日本の終わりを記録する~

@ヤマト

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73話 宣誓

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8月26日 1300 大麻山

我々は山小屋から
スコップを取り出し
埋め立てられた穴を
掘り返していく。

雨で重くなった
土が体力を奪っていく。

1メートル程
穴を掘り返した所で
スコップが何かに
あたった。

そこには巨大な
木の箱が埋められていた。

中を開けると
ビニールで丁寧に
防水処理をされた
数十丁の小銃と弾薬
弾納などの装備が


そして一番上には
ラミネートされた
自衛隊の宣誓文が
入れられていた。

「宣誓

私は、我が国の平和と独立を守る
自衛隊の使命を自覚し、
日本国憲法及び法令を遵守し、
一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、
人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、
政治的活動に関与せず、強い
責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、
事に臨んでは危険を顧みず、
身をもって責務の完遂に努め、
もって国民の負託にこたえることを誓います。」

その宣誓文を手に取り
その重みをあらためて
実感する。

これを入れた隊員は
どのような気持ちで
これを箱の中に
入れたのだろうか?

この宣誓を受け入れたが
故に負けた無念だろうか?

それともこの箱を開けた時は
本当に危急時の為
この志を忘れるなという
意味合いだろうか?

それは今この場では
確かめようがなく
わからなかった。

だが、少なくとも
私は後者の意味合いで
ある事を願いたかった。


私は胸ポケットの
中に入っているメモ帳を
取り出した。

(日本人が再び手を
取り合える事を願って)

そう書き綴ると
そのメモをそっと
木箱の中に入れた。

霞2曹も紀伊3尉も
その行為になにも言わなかった。

我々は必要分の
装備を取り出し装備する。

弾薬などは
予備を持っていきたいが
個人携行では無理があった。

車両を使えば持っていける
かもしれないが
敵が検問などをやっている事は
容易に想像がついた。

見つかればアウトだ。

その後、穴を埋め戻し
再び元通りに偽装した。

「皆さんのご家族は
五色台にいます。」

紀伊3尉が我々に
向き直りそう伝えた。

五色台。

陸上自衛隊の
訓練施設があるところだ。

なるほど。

あそこなら陸自の管轄だし
宿舎などもある。

山奥の為土地勘の無い
敵の目からは隠しやすい
だろう。

「我々は山を経由しながら
敵に見つからない様に
五色台に向け前進します」

「その後はご家族と
合流し船で四国を
脱出します」

紀伊3尉の言葉に
胸の高鳴りを感じた。

家族に会う事が
できる。

それは私にとって
希望そのものだった。
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