【完結】擦れた桜章~自衛官だった私は、牢獄から日本の終わりを記録する~

@ヤマト

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80話 正体不明の男

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岡山を出てから
我々は京都の大津市に
向かって前進をしていた。

国境部に位置するのは
大阪、滋賀県の大津市、琵琶湖を挟み
福井の敦賀市だと道中で情報を集めた。

敵の本拠地である
大阪はまず除外して
迂回する。

敦賀は日本海側である為、
海運で兵隊を運んでいる可能性が
ある事

土地勘がない事を理由に、
除外した。

大津には饗庭野演習場が
ある為頻繁に訪れており
他の二つの箇所よりはマシだと
いう事でこの判断になった。

監視カメラが設置されているであろう
街中は避けて検問に注意して
迂回と停止を繰り返しながら
道を進み続ける。

目立たない売店や買い物をしたり
ガソリンスタンドなどで給油したが
物の値段が10倍近く値上がりしており、
崩壊していた。

山の中の道ですら時折
ドローンを見かける事がある。

寺社が取り壊され
いたる所で日本の本がそこら辺の畑で
焼かれているのを何度も目撃した。

その姿はもはや日本とは
呼べないものであった。

想定外の時間が
かかったが我々は
大津市にたどり着いた。

8月31日 1900 大津

国境線の街中には
いくつも検問が敷かれ
人だかりできている。

フェンスの他にも
応急処置なのか
車や看板、土嚢などを使って
足止め用のバリケードが
作られていた。

兵士によって厳重に
管理されており
複数の一般人の
地に伏した遺体が見えた。

張りぼてのバリケードでも
兵士は足止めさえできれば
小銃で撃つ事できる。

それが何重にも亘って
作られている所を見ると
容易に突破する事は
不可能だろう。

我々は山中に潜みながら
双眼鏡でその様子を
偵察していた。

銃を携帯して迷彩装備で
周りを警戒しながらの
偵察だった。

家族に関しては
ワゴンの中で待機
して貰っている。

「どうしますか?
紀伊三尉、我々だけならともかく
家族を連れて国境を超えるのは
難しいでしょう」

「そうですね。
まだ国境を固め切っては
ないようですが
山を抜けるしかないと
思います」

敵もまだそこまで
時間を与えられているわけではない

占領してすぐに
脱走者を完璧に防ぎ切るなんて
芸当は不可能なはずだった。

その時だった。

「停。(止まれ)」

気づけば中国軍が
そこにはいた。

人数は4人程
恐らくは巡回で、
我々に向けて銃を
向けていた。

最悪だ。

小銃を持っている以上
言い逃れはできない。

戦闘になり発砲すれば
仲間が集まってくるだろう。

警戒も強まる。

紀伊3尉と霞2曹は
既に銃を構えた
状態だった。

一触即発。

両者の間で
凄まじい緊張感が生まれた。

その時中国軍の後方から
一人の男が現れた。

この場に似つかわしくない
スーツ姿の男だ。

対峙している中国軍の死角を
突く形で、正体不明の男が持つナイフが
一人の首筋を貫いた。

流れる様に二人目の首を切り裂く。

残された二人はまだ何が起こっているのか
理解できていない。

中国兵は正体不明の男のナイフを
持った右手に注意し防ごうとするが、
体側につける形で隠し持った左手のナイフで
不意を突いて首を裂き
続けて隣にいたもう一人の首を貫いた。

銃を携行した4人を相手に
発砲すら許さない
圧倒的なCQC(近接格闘術)。

素早い最小限の身のこなしで
ナイフを首筋に刺していき、
あっという間に4人を殺して
しまった。

小銃は懐に入りこまれると弱い。
だが、それをわかっていても実行できる
人間は少ない。

明らかに軍隊格闘の動きだった。
只者ではない。

彼は倒れた相手の
頭を踏みつけて
死んだ事を確認した後に
銃をはぎ取っていく。


我々が唖然とする中
男が声をかけてくる。

「アンタら自衛隊だろう?
悪いが手伝ってくれ」

男は表情を変えずに
そう言い放った。
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