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82話 切り札
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8月31日 2230 大津
我々は佐藤と共にワゴンにいた
家族と合流して佐藤に導かれるままに
山荘へと向かった。
山荘は周囲を拒絶する様に
ひっそりと建っていた。
「ここは…」
「なんも聞くな
安全な場所だから
いいから入れ」
そういうと山荘に
案内してくれた。
中は質素だった。
必要最低限のものしか
置かれていない為
生活感はない。
はじめての山荘に
娘の美樹が無邪気に
喜んでいた。
その姿を佐藤は微笑みながら
見ていた。
必要な事しか喋らないが
どうやら悪い人間にも
思えなかった。
嫁たちが台所で
食事を作ってくれたので
夕食を取り、しばらくしてから
我々の家族は話をしたいからと
別室に通された。
どうやら佐藤は聞かれたくない
話をするらしい。
我々は居間にある
ソファーに座り
佐藤と私と霞2曹と紀伊三尉で
会談が始まった。
「アンタら、どこの部隊の人間だ」
佐藤の問いに紀伊3尉が答える。
「香川から来ました」
佐藤が驚いた様に言った。
「おいおいおい、
香川から家族を連れてここまで
きたのかよ。
よく捕まらなかったな」
「ん?香川……14旅団か
なるほど、どうりで」
香川から14旅団に即座に
結びつける辺りどうやら
佐藤が防衛省関係者である事は
間違いなさそうだった。
「それで紀伊さん
アンタさっき西日本新政府に対して
切り札があると言っていたが…
そいつを聞いてもいいかい?」
紀伊3尉は少しためらうように目を閉じると、
静かに口を開いた。
「我々、駐屯地の仲間は虐殺されました」
佐藤が目を見開いた。
そして静かに紀伊3尉に次の言葉を待った。
「西日本新政府が建国されその領土に属していた
自衛隊は解体されました。
その直後に駐屯地内の組織的虐殺が
おきました」
「なるほど、
アンタらその生き残りって訳か…」
佐藤はしばらく考えた後、
口を開いた。
「同情はするがそれだけだと
正直切り札にはならないぞ
各地で似たような事は
起きているからな……」
「その虐殺の指揮を取っていた
人物が問題なのです」
「………どういう意味だ?」
紀伊3尉は黙って
スマートフォンを取り出し
机の上に置かれた動画を
再生した。
そこには駐屯地で行われた
体育館の虐殺の映像が
映し出されていた。
私は思わず紀伊3尉の顔を見る。
この動画は紀伊3尉が撮ったものだろう。
私はあの惨劇を見た時に
ただただ戦慄するしかなかった。
だがどうやら紀伊3尉は冷静に
後々の証拠としてこの動画を
撮っていた事だ。
動画は途中から踊り歌っている
老人の顔にフォーカスされていた。
動画は微かに震えているものの
確かにその顔を捕らえていた。
その顔を見た時に佐藤はスマートフォンを
鷲掴みにしてその顔を食い入るように見た。
「………陸 和平(ルー・ホーピン)!!!!」
信じられないという顔で佐藤はこちらを
見つめていた。
「……やはり、そうですか……」
紀伊三尉が静かに答えた。
「どういう事ですか?」
私の問いに佐藤が答えた。
「この老人は、大老とあだ名される
玉金書記長の実質的な後ろ盾だ!
そして占領軍の総司令官でもある」
「この映像は非戦闘員化した
正規軍人に対する組織的殺害!
完全な戦争犯罪案件だ!
それにルー・ホーピンが関わっている
明確な証拠になる!!」
「動画だけでなくアンタらの証言があれば
ルー・ホーピンを排除できるかもしれない
全てがひっくり返るぞ!!!」
佐藤の言葉を聞いた時
逆転の希望を我々は確かに
感じていた。
我々は佐藤と共にワゴンにいた
家族と合流して佐藤に導かれるままに
山荘へと向かった。
山荘は周囲を拒絶する様に
ひっそりと建っていた。
「ここは…」
「なんも聞くな
安全な場所だから
いいから入れ」
そういうと山荘に
案内してくれた。
中は質素だった。
必要最低限のものしか
置かれていない為
生活感はない。
はじめての山荘に
娘の美樹が無邪気に
喜んでいた。
その姿を佐藤は微笑みながら
見ていた。
必要な事しか喋らないが
どうやら悪い人間にも
思えなかった。
嫁たちが台所で
食事を作ってくれたので
夕食を取り、しばらくしてから
我々の家族は話をしたいからと
別室に通された。
どうやら佐藤は聞かれたくない
話をするらしい。
我々は居間にある
ソファーに座り
佐藤と私と霞2曹と紀伊三尉で
会談が始まった。
「アンタら、どこの部隊の人間だ」
佐藤の問いに紀伊3尉が答える。
「香川から来ました」
佐藤が驚いた様に言った。
「おいおいおい、
香川から家族を連れてここまで
きたのかよ。
よく捕まらなかったな」
「ん?香川……14旅団か
なるほど、どうりで」
香川から14旅団に即座に
結びつける辺りどうやら
佐藤が防衛省関係者である事は
間違いなさそうだった。
「それで紀伊さん
アンタさっき西日本新政府に対して
切り札があると言っていたが…
そいつを聞いてもいいかい?」
紀伊3尉は少しためらうように目を閉じると、
静かに口を開いた。
「我々、駐屯地の仲間は虐殺されました」
佐藤が目を見開いた。
そして静かに紀伊3尉に次の言葉を待った。
「西日本新政府が建国されその領土に属していた
自衛隊は解体されました。
その直後に駐屯地内の組織的虐殺が
おきました」
「なるほど、
アンタらその生き残りって訳か…」
佐藤はしばらく考えた後、
口を開いた。
「同情はするがそれだけだと
正直切り札にはならないぞ
各地で似たような事は
起きているからな……」
「その虐殺の指揮を取っていた
人物が問題なのです」
「………どういう意味だ?」
紀伊3尉は黙って
スマートフォンを取り出し
机の上に置かれた動画を
再生した。
そこには駐屯地で行われた
体育館の虐殺の映像が
映し出されていた。
私は思わず紀伊3尉の顔を見る。
この動画は紀伊3尉が撮ったものだろう。
私はあの惨劇を見た時に
ただただ戦慄するしかなかった。
だがどうやら紀伊3尉は冷静に
後々の証拠としてこの動画を
撮っていた事だ。
動画は途中から踊り歌っている
老人の顔にフォーカスされていた。
動画は微かに震えているものの
確かにその顔を捕らえていた。
その顔を見た時に佐藤はスマートフォンを
鷲掴みにしてその顔を食い入るように見た。
「………陸 和平(ルー・ホーピン)!!!!」
信じられないという顔で佐藤はこちらを
見つめていた。
「……やはり、そうですか……」
紀伊三尉が静かに答えた。
「どういう事ですか?」
私の問いに佐藤が答えた。
「この老人は、大老とあだ名される
玉金書記長の実質的な後ろ盾だ!
そして占領軍の総司令官でもある」
「この映像は非戦闘員化した
正規軍人に対する組織的殺害!
完全な戦争犯罪案件だ!
それにルー・ホーピンが関わっている
明確な証拠になる!!」
「動画だけでなくアンタらの証言があれば
ルー・ホーピンを排除できるかもしれない
全てがひっくり返るぞ!!!」
佐藤の言葉を聞いた時
逆転の希望を我々は確かに
感じていた。
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