【完結】擦れた桜章~自衛官だった私は、牢獄から日本の終わりを記録する~

@ヤマト

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85話 希望に向けて

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9月1日 1000 山荘

翌朝家族に事情を話した。

妻の楓は事情を理解して
こう返した。

「危ないのは承知だけど
このまま西日本新政府にいよう
とは思わないわね」

「道中でここは元の
日本なのかと疑いたく
なったもの」

「こちら側の国で
美樹を育てようとは思わない。
なにをされるか分からないもの」

「大丈夫、足手まといには
ならない様にするわ。
美樹も私が守るわ」

楓は私の目をしっかりと見て
そういった。

その瞳には意思がこもっていた。
それを見て私も安心をする。

娘の美樹が私のズボンの裾を
引っ張っていた。

「またお山に行くの?」

「そうだ、けどこれで最後だ。
まあ、ちょっと長めの
遠足だと思えばいい」

不安にさせない様に
新隊員の時の行軍で
上官に言われた事をそのまま言う。

「だけど、お山に行くのは
これで最後だ」

「山から出たら
その後はお母さんと美樹と
一緒にいるよ」

「本当?」

美樹が笑いかける。
私はコクリと頷いた。

そうだ。

これが終わればまた
元の日々を過ごそう。

安心して家族で食卓を囲んで
娘の成長に一喜一憂しながら
家族で笑い合って食事を食べる。
そんな毎日を取り戻そう。

その為に何としても
この国境を超えるんだ!!

私は固くそう胸に誓った。

9月1日 1800 山荘

我々は身支度を整え
山荘を後にする。

空には雲がかかり
雨が降り始めている。

台風が近づいている為だ。

それはある意味
幸運であると言えた。

雨音で身を隠す事ができ
巡回の士気を下げる。

敵側もこんな日には
人出を割く事は難しいだろう。

もっとも我々にも
別の危険が伴う訳だが。

家族の分も含めて
佐藤はカッパを用意して
くれた。


「いいか、俺達は今から
山を抜けて国境線を突破する
地雷原地帯に関しては
迂回する」

佐藤が全員に語りかけた。

「地雷原を迂回するアテが
あるんですか?」

紀伊3尉が佐藤に
問いかける。

佐藤はコクリと頷いた。

「南に下っていくと
岩盤露出地帯がある。
そこには地雷が設置
出来ない。
ルートは確保してある。」

「敵に見つかっても
出来る限り交戦するな
隠れてやり過ごすんだ。
逃げきれないからな。」

「もちろん、発砲は
可能な限り避けろ」

佐藤が自衛官である
我々3人の方を見て
注意を促す。

「万が一見つかっても
佐藤さん、アンタなら何とか
できるんじゃないのか?」

霞2曹の問いに佐藤は
ガリガリと頭を掻いた。

「バカな事言うな
素人じゃあるまいし。
武装した相手との戦闘は
常にリスクがつきまとう」

「戦闘は極力避ける
するにしても必要がある時だけだ。
俺に期待すんなよ」

佐藤は手の平をヒラヒラ振りながら
ワゴンへと向かった。

我々も車に乗り込み
目的地へ向かう。

目的地付近で車を
乗り捨てて
そこから全員が
山に向けて歩き始める。

自分達の未来を
取り戻す為に
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