【完結】擦れた桜章~自衛官だった私は、牢獄から日本の終わりを記録する~

@ヤマト

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92話 果て

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9月2日 0420 山中

私は国境線を守る
歩哨に銃撃を開始する。

初弾は命中。
一名を射殺する。

警戒態勢の為
即座に敵から応射が始まる。

私は木影に隠れつつ
応射を回避して

無線で連絡を取ろうとする。
一名を射殺する。

注意をこちらに引き付ける為に
大げさな音を立てて
こちらに向かってくるように
誘導する。

先手を取れたので
2名くらい射殺するのは
容易だった。

敵が追ってくるのが見えた。
どうやら誘導する事には
成功したらしい。

私は木を盾にして
身を隠しながら
ヒット・アンド・アウェイを
繰り返し敵を翻弄して
もう1人射殺する。

警戒して国境線に
張り付いて敵の歩哨
全員がこちらを追ってくる。

私は応戦を続けながら
国境線の様子を観察する。

視認できる遥か遠くで
佐藤達が国境線を
越えたのが見えた。

その時点で私は
自分の役割が終わった事を
悟ったのだ。

あとは自分も隠れながら
国境線を目指せばいい
そう思ったその時だった。

鈍い音を立てて
敵の一発の弾丸が
私の左腕を貫いた。

幸い弾丸は貫通している
ようだが動脈を傷つけたらしく
血が止まらない。

長くは動けそうに
なかった。

私は今まで戦闘で
銃撃を受けた事が無かった事が
密かな自慢だった。

自分ができる範囲での事をして
無理は死に直結するのでしない。
それを徹底して行っていた。

だが、今回は違う。

明らかな無理をした。

結果、負傷し窮地に
立たされている

幸運に見放された事を
実感して。

あと少しのはずの国境線が
ひどく遠くに感じていた。

「「いいか、死ぬな!
たとえ捕まっても生きていれば
俺が必ず助けに行く!
必ずまた、生きて会おう]」

霞2曹の最後のやりとり
そして家族の姿が
私の脳裏によぎった。

諦めるわけにいかなかった。

私は痛む腕を気にせず
追ってくる兵士を
撃ち殺す。

一発撃つ事に
血が激しく流れるのを感じ
視界がぼやけていく。

逃げながら
それを繰り返す。

1、2、3、4、5、6、7、8

どうやら、歩哨に
ついていた敵兵は
皆殺したようだ。

私は朦朧とする
意識の中で
一本の大木のそばに
座りこんだ。

装備されている
緊急医療キットを
取り出し左腕を
圧迫止血をする。

もはや一歩も
動けなかった。

凡人の私にしては
よくやった方だと言えるだろう。

だが、無茶をしたものだから
次はなくなっていた。

応援に来た敵兵によって
私はいつの間にか
包囲されていた。

しかし、なぜか私は
殺されなかった。

奥から一人の男が
やってくる。

立ち振る舞いや階級章から
高級将校である事が分かる。

「先ほど、土砂崩れのあった
辺りで見覚えがある顔の
死体が転がっていた。」

男の放つ言葉は流暢な
日本語だった。

聞き覚えのある声だった。

「もしやと思い殺す事無く
捕らえろという指示を出したが
どうやら正解だったようだ」

「俺の事を覚えているか?
あぁ、いやいいんだ。
俺はお前達の事を覚えている。
誰一人として許すつもりはない」

男の顔がはっきりと見えた。
その顔には見覚えがあった。

この戦争が始まり最初の山狩りを行った時
我々の小隊が最初に捕虜に取った
特殊工作員だ。

どうやら因果というものは
相当に皮肉屋らしい。

男は私の髪を
ガッと掴み
顔を無理矢理上げさせる。

「楽に死ねると思うなよ。
お前にも捕虜の屈辱を味わわせてやる」

男は狂気に満ちた目でそう告げると
中国語で何やら命令していた。

絶望的な状況なのかもしれないが
私にはもう自分の身がどうなろうとも、
興味がなかった。

自分の悲願は達成したからだ。

もう娘の手を引くことはできないが、
あの子は国境の向こうで生きている。
それだけで十分だった。

私は中国兵に連れていかれながら
空を見上げた。

いつの間にか雨が止み、
空には朝日が昇っていた。
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