219 / 244
第8章 〝幸せ〟の選択 ─さよならの決意─
114・5時間目 正月は休むものでも休みはない
しおりを挟む
敦志にアドバイスをあげてから。
俺たちはなにもなかったかのように和気あいあいと会話を始めた。
そうそう、これでいいんだよ。敦志には深く悩んだりしている姿は似合わねェ。
誰かが悩んでいるとき、苦しんでいるとき、その場にいるにも関わらず、俺は助けることが出来なかった。
もう、苦しむのは十分だ。もう、悲しむのはこれまでだ。
俺は、初めて出来た後輩の助けになれるように、色々な本を読んだ。
神谷さんの影響で読書を始めたが、これが案外面白いンだよな。
俺の知らない世界が見えるようになると、また新しい世界を求めて、次々と読み進めてしまう。
読書の魔力って恐ろしいだろ? 俺はその沼にハマってしまったンだ。まるでガチャの課金を止められない廃人プレイヤーのようにな。
おかげでここ半年ほどほとんど寝てねェのはさすがに敦志にはないしょだが。
「敦志、お前って本読むか?」
「本、ですか? 全く読まないですね……。あ、でも」
敦志が読書好きの誰かの名前を言いかけたので先に俺は言うことにした。俺が知る限りの敦志の知り合いで読書好きなんて二人に絞られる。でもな、たぶん神谷さんが読書好きってことは知らねェと思うンだよな。あの人、俺にしか言ってねェから。だから、もう一人の読書好きの名前を言うか。
「祐麻だろ? アイツ、小説ばっか読んでるからよ」
「そうです。黒沢センパイ、祐麻のことも結構知ってるンですね。あいつとセンパイが話してるところほとんど見たことないのに」
「まぁ、昔からの付き合いだな。アイツ、青春をすることに対して後悔を抱えてるのは知ってるだろ?」
アイツは、考えすぎる性格だから、あんなことが起きたンだ。あと、周囲の環境も良くなかった。
「えぇ、知ってます。『青春の罪と罰』ですよね」
「そうだ。中学校の三年間で仲良くなれるはずだった部員と大切だった人を傷つけ、傷つき、すべての信用を失った、アイツの後悔の物語だ」
あの頃のアイツは──祐麻は酷かった。
会うたびに瞳から徐々に光が失われて、無気力と絶望に挟まれているそんな状態だったからなァ。
「『もし、出会う時期が違っていたなら、他の人が彼女らを傷つけていた』って祐麻は言うくらいですからね。そう思うと俺たちが今過ごしているこのなにもなくて少し退屈な『当たり前の青春』ってのは、本当は幸せなことなんだなって思います」
「暇ならバイトこいよォ……」
「いや、完全暇じゃないっすから! 勉強で忙しいんですよ!」
いつも通りのやり取りをしていると、俺がお気に入りの店、MISHIHANAに着いたのだった。
***
店内に入り、先に来ていた裕太や遼太郎、神谷さんに新年の挨拶をする。
黒沢センパイはいつも通り、だるそうに挨拶して一人席に座って三嶋さんと話していた。
それにしても、三嶋さんたちってほぼ年中無休で働いてるよな。正月って本来休むものなのに、全く休めてないじゃん。
カフェ特有のベル音と共に、今日やって来る客はいない。みっつの足音と共にやって来たのは三人の女子。
「敦志君! あけましておめでとう!」
「小春! 今年もよろしくな」
カフェの来客は小春、白咲さん、女郎の三人だった。
俺たちはなにもなかったかのように和気あいあいと会話を始めた。
そうそう、これでいいんだよ。敦志には深く悩んだりしている姿は似合わねェ。
誰かが悩んでいるとき、苦しんでいるとき、その場にいるにも関わらず、俺は助けることが出来なかった。
もう、苦しむのは十分だ。もう、悲しむのはこれまでだ。
俺は、初めて出来た後輩の助けになれるように、色々な本を読んだ。
神谷さんの影響で読書を始めたが、これが案外面白いンだよな。
俺の知らない世界が見えるようになると、また新しい世界を求めて、次々と読み進めてしまう。
読書の魔力って恐ろしいだろ? 俺はその沼にハマってしまったンだ。まるでガチャの課金を止められない廃人プレイヤーのようにな。
おかげでここ半年ほどほとんど寝てねェのはさすがに敦志にはないしょだが。
「敦志、お前って本読むか?」
「本、ですか? 全く読まないですね……。あ、でも」
敦志が読書好きの誰かの名前を言いかけたので先に俺は言うことにした。俺が知る限りの敦志の知り合いで読書好きなんて二人に絞られる。でもな、たぶん神谷さんが読書好きってことは知らねェと思うンだよな。あの人、俺にしか言ってねェから。だから、もう一人の読書好きの名前を言うか。
「祐麻だろ? アイツ、小説ばっか読んでるからよ」
「そうです。黒沢センパイ、祐麻のことも結構知ってるンですね。あいつとセンパイが話してるところほとんど見たことないのに」
「まぁ、昔からの付き合いだな。アイツ、青春をすることに対して後悔を抱えてるのは知ってるだろ?」
アイツは、考えすぎる性格だから、あんなことが起きたンだ。あと、周囲の環境も良くなかった。
「えぇ、知ってます。『青春の罪と罰』ですよね」
「そうだ。中学校の三年間で仲良くなれるはずだった部員と大切だった人を傷つけ、傷つき、すべての信用を失った、アイツの後悔の物語だ」
あの頃のアイツは──祐麻は酷かった。
会うたびに瞳から徐々に光が失われて、無気力と絶望に挟まれているそんな状態だったからなァ。
「『もし、出会う時期が違っていたなら、他の人が彼女らを傷つけていた』って祐麻は言うくらいですからね。そう思うと俺たちが今過ごしているこのなにもなくて少し退屈な『当たり前の青春』ってのは、本当は幸せなことなんだなって思います」
「暇ならバイトこいよォ……」
「いや、完全暇じゃないっすから! 勉強で忙しいんですよ!」
いつも通りのやり取りをしていると、俺がお気に入りの店、MISHIHANAに着いたのだった。
***
店内に入り、先に来ていた裕太や遼太郎、神谷さんに新年の挨拶をする。
黒沢センパイはいつも通り、だるそうに挨拶して一人席に座って三嶋さんと話していた。
それにしても、三嶋さんたちってほぼ年中無休で働いてるよな。正月って本来休むものなのに、全く休めてないじゃん。
カフェ特有のベル音と共に、今日やって来る客はいない。みっつの足音と共にやって来たのは三人の女子。
「敦志君! あけましておめでとう!」
「小春! 今年もよろしくな」
カフェの来客は小春、白咲さん、女郎の三人だった。
0
あなたにおすすめの小説
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。
高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。
「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」
そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。
彼女の名は、立石麻美。
昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。
この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。
その日の放課後。
明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。
塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。
そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。
すべてに触れたとき、
明希は何を守り、何を選ぶのか。
光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる