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第2章【交わる二人の歯車】
7罪 嫉妬②
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「まあ、そうだね。魔国自体がピリッとする味付けが好きって奴が多いっていうのもあるけど」
「他にはどんなものが好きなの?」
あなたの事、興味津々ですと言わんばかりに問いかける静に、ヴェル君は「そうだなぁ」と少し考え始めたようで、二人の会話に間が空いた。
……寝よ。
二人のそんなやり取りを耳にした私は、なかなか寝付けなかったものの無理矢理にでも寝付こうと思った。目を瞑り、頭の中を真っ白にして夢の中へと落ちていこうと。
* * *
「ふ、あ……」
ふっと意識が浮上し、欠伸がついて出た。じんわりと目に欠伸によってにじみ出た涙を手の甲でごしごしと拭い、私はゆっくりと体を起こした。
「もう朝?」
テントの出入り口を開け、外を覗くと暗かった森は明るくなっていた。焚火の前にはもうすでに起きていたのかヴェル君の姿があった。
彼の後姿を確認できただけで、胸が躍るこの状況に私は本当に彼の事が大好きなんだなと思うと、少しだけ苦笑が漏れた。昨日聞き出してくれていたヴェル君の好みについて、いつ静から教えてもらえるのかなって少しだけ期待しながらテントから出た。そして、焚火で暖まるヴェル君に近づいて行った。
「おはよう、ヴェル君」
「っ⁉ お、はよう、雪ちゃん」
私の声に、ヴェル君はビクッと体を揺らした。そして、視線を向けて私だと理解すると作り笑いのような笑みを浮かべて挨拶を返してくれた。なんだか彼らしくない表情に、濁された言葉に、私は首を傾げた。
いつものヴェル君じゃないみたい……
「どうしたの? なにかあった?」
「え? そんな事ないよ?」
私の問いかけに、ヴェル君はハハハと笑いながら頭を左右に振った。けれど、その反応は何かありましたと言っている様にしか見えなかった。
もしかして、静にいろいろ聞かれてた時に私がヴェル君の事好きだってバレちゃった?
そんな心配が脳裏を過った。そして、この反応ということは、ヴェル君にとって私の気持ちは迷惑なんじゃないかとも思った。そんな心配が頭から離れない。
「本当に……?」
「うん、嘘つくわけないじゃん」
「……なら、いいけど……」
ヴェル君は否定をしてくれる。なんでもないと言ってくれる。だけど、一度過った考えはそう簡単に頭から離れてくれなくて、私の心を削っていく。
バレてしまっていたらどうしよう。迷惑だと思われていたらどうしよう。そんな負の感情がぐるぐるとする。
「おはよう、雪ちゃん、ヴェルくん」
「おはよう、雪、ヴェル」
聞こえた声に振り返れば、そこにはにっこりと微笑む静と真兄の姿があった。
「あ、おはよう、静ちゃん、真」
「昨日はありがとうね。ヴェルくん……とても、楽しかったわ」
ふふふ、笑う静にヴェル君は笑顔を返し「それならよかった」と言った。ほんの少し笑顔が引きつっていたように見えたのは私の気のせいだろうか?
「ぐっすり眠れた?」
「ええ。少しだけ腰が痛いけれど……」
私の問いかけに、静は腰を軽くさすりながら苦笑を浮かべた。トントンと軽く腰を叩く様子に、ヴェル君がビクッとしていたように見えたが気のせいかもしれない。さっきの反応があったからこそ、いろんな事が気になってしまってしょうがない。
「あ、わかる。やっぱりベッドと違うから体痛くなるよね」
「雪ちゃんも?」
「うん。腰も足も頭も……やっぱり柔らかくない地面だから仕方ないよね」
女子特有の同調に、私も静もきゃっきゃと話を弾ませた。元の世界でも柔らかいベッドで寝起きしていたし、こちらの世界に来てからも月の塔の部屋にあるベッドはとても柔らかかった。だからこそ、今回の野宿での地面の硬さは体に堪えた。
「まあ、それも今日限りだから。もうすぐ卯ノ国に着くよ」
「ほんと⁉」
ヴェル君の言葉に私は驚きの声を上げた。今日限りって事は、柔らかい布団かベッドが待っているという事だ。なんだかワクワクする。
「あれ、でも卯ノ国って神国でしょ……?」
なんでそれで今日限りなんだろう、と疑問に思って首を傾げた。戦う可能性のある妖のいる場所だ。どっちにしろ夜を越すにはテントで野宿するしかないのではないか? と思った。
「他にはどんなものが好きなの?」
あなたの事、興味津々ですと言わんばかりに問いかける静に、ヴェル君は「そうだなぁ」と少し考え始めたようで、二人の会話に間が空いた。
……寝よ。
二人のそんなやり取りを耳にした私は、なかなか寝付けなかったものの無理矢理にでも寝付こうと思った。目を瞑り、頭の中を真っ白にして夢の中へと落ちていこうと。
* * *
「ふ、あ……」
ふっと意識が浮上し、欠伸がついて出た。じんわりと目に欠伸によってにじみ出た涙を手の甲でごしごしと拭い、私はゆっくりと体を起こした。
「もう朝?」
テントの出入り口を開け、外を覗くと暗かった森は明るくなっていた。焚火の前にはもうすでに起きていたのかヴェル君の姿があった。
彼の後姿を確認できただけで、胸が躍るこの状況に私は本当に彼の事が大好きなんだなと思うと、少しだけ苦笑が漏れた。昨日聞き出してくれていたヴェル君の好みについて、いつ静から教えてもらえるのかなって少しだけ期待しながらテントから出た。そして、焚火で暖まるヴェル君に近づいて行った。
「おはよう、ヴェル君」
「っ⁉ お、はよう、雪ちゃん」
私の声に、ヴェル君はビクッと体を揺らした。そして、視線を向けて私だと理解すると作り笑いのような笑みを浮かべて挨拶を返してくれた。なんだか彼らしくない表情に、濁された言葉に、私は首を傾げた。
いつものヴェル君じゃないみたい……
「どうしたの? なにかあった?」
「え? そんな事ないよ?」
私の問いかけに、ヴェル君はハハハと笑いながら頭を左右に振った。けれど、その反応は何かありましたと言っている様にしか見えなかった。
もしかして、静にいろいろ聞かれてた時に私がヴェル君の事好きだってバレちゃった?
そんな心配が脳裏を過った。そして、この反応ということは、ヴェル君にとって私の気持ちは迷惑なんじゃないかとも思った。そんな心配が頭から離れない。
「本当に……?」
「うん、嘘つくわけないじゃん」
「……なら、いいけど……」
ヴェル君は否定をしてくれる。なんでもないと言ってくれる。だけど、一度過った考えはそう簡単に頭から離れてくれなくて、私の心を削っていく。
バレてしまっていたらどうしよう。迷惑だと思われていたらどうしよう。そんな負の感情がぐるぐるとする。
「おはよう、雪ちゃん、ヴェルくん」
「おはよう、雪、ヴェル」
聞こえた声に振り返れば、そこにはにっこりと微笑む静と真兄の姿があった。
「あ、おはよう、静ちゃん、真」
「昨日はありがとうね。ヴェルくん……とても、楽しかったわ」
ふふふ、笑う静にヴェル君は笑顔を返し「それならよかった」と言った。ほんの少し笑顔が引きつっていたように見えたのは私の気のせいだろうか?
「ぐっすり眠れた?」
「ええ。少しだけ腰が痛いけれど……」
私の問いかけに、静は腰を軽くさすりながら苦笑を浮かべた。トントンと軽く腰を叩く様子に、ヴェル君がビクッとしていたように見えたが気のせいかもしれない。さっきの反応があったからこそ、いろんな事が気になってしまってしょうがない。
「あ、わかる。やっぱりベッドと違うから体痛くなるよね」
「雪ちゃんも?」
「うん。腰も足も頭も……やっぱり柔らかくない地面だから仕方ないよね」
女子特有の同調に、私も静もきゃっきゃと話を弾ませた。元の世界でも柔らかいベッドで寝起きしていたし、こちらの世界に来てからも月の塔の部屋にあるベッドはとても柔らかかった。だからこそ、今回の野宿での地面の硬さは体に堪えた。
「まあ、それも今日限りだから。もうすぐ卯ノ国に着くよ」
「ほんと⁉」
ヴェル君の言葉に私は驚きの声を上げた。今日限りって事は、柔らかい布団かベッドが待っているという事だ。なんだかワクワクする。
「あれ、でも卯ノ国って神国でしょ……?」
なんでそれで今日限りなんだろう、と疑問に思って首を傾げた。戦う可能性のある妖のいる場所だ。どっちにしろ夜を越すにはテントで野宿するしかないのではないか? と思った。
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