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第2章【交わる二人の歯車】
16罪 好きな人は大好きな友達の恋人でした⑬
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「まあ、言いたくないなら聞かないが」
「そうですね。無理矢理聞き出すのはよろしくありません」
「……真兄、白卯……ごめんね、ありがとう……ありがとうっ」
ホッとしたのもあるし、二人のやさしさが凄く身に染みて余計に涙が溢れそうになった。じんわりと目頭が熱くなるのを感じたのと同時に、涙声になりつつあることに気付いた。だけど、私はそれを止めることも隠すこともせず、二人の目の前で堂々と涙を流した。
氷で冷えた布が私の涙を吸って、余計に冷たさを感じた。だけど、それが今は逆に心地よい。
「……っ」
声を殺して涙を流す私に対して二人は何も言わず、無言で泣き終わるのを待ってくれた。
* * *
あれから気が済むまで泣いた私は落ち着きを取り戻し、真兄と白卯と一緒に待ちくたびれていたヴェル君と静の元へやってきた。
「お寝坊さんね、雪ちゃん」
「あはは、待たせちゃってごめんね」
ヴェル君と並んで立つ静を見て胸がギュッと痛くなったけど、今はそんな事を気にしている暇はない。私は空笑いを浮かべ、右手で後頭部をガシガシと軽く掻きながら笑った。
「雪ちゃん、お酒残ってるんじゃない? 大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。それよりも、私より宴会楽しんでたみんなの方が大丈夫?」
ヴェル君の気遣いが今は痛くて苦しくて、私は間髪入れずに大丈夫だと返事を返すとすぐさまに同じような質問を皆に投げかけた。
私みたいにお酒を飲んだわけじゃないなら、たぶん大丈夫なんじゃないかなと思いながらも、もしかしたら楽しみつかれているとか、寝不足気味だとか、そういう事もあるかもしれないと思った。
だけど、そんな心配も無用だったみたいで、全員首を左右に振って「大丈夫」だと答えてくれた。
「それでは、これから皆さんは次の石碑を探しに……?」
「そうなるね。行き先は……」
「言わなくて結構ですよ。どこで誰が聞いているかも分かりません」
「……ん、ありがとう、白卯。そうさせてもらうよ」
いろいろと気を使ってくれている白卯の発言に、私もヴェル君も笑みを浮かべて白卯を見つめた。確かにここで行き先を伝える事は簡単なことかもしれない。ここまでよくしてくれた白卯にくらい、伝えてもいいんじゃないかとも思ってしまう。
けれど、誰が聞いているかもわからないし、どこからどう神国に伝わってしまうかもわからない。
「道中お気を付けてください、皆さま」
「ええ、お気遣いありがとう、白卯さん」
にっこりと微笑みお礼を伝える静に、白卯は深く頭を下げた。
もう少し、白卯と話をしてみたかったとも思ったけど、私たちにはゆっくりと出来るほど時間は多くない。後ろ髪引かれる思いを抑え込み、私たちは白卯に背を向けると卯ノ国を後にするのだった。
「そうですね。無理矢理聞き出すのはよろしくありません」
「……真兄、白卯……ごめんね、ありがとう……ありがとうっ」
ホッとしたのもあるし、二人のやさしさが凄く身に染みて余計に涙が溢れそうになった。じんわりと目頭が熱くなるのを感じたのと同時に、涙声になりつつあることに気付いた。だけど、私はそれを止めることも隠すこともせず、二人の目の前で堂々と涙を流した。
氷で冷えた布が私の涙を吸って、余計に冷たさを感じた。だけど、それが今は逆に心地よい。
「……っ」
声を殺して涙を流す私に対して二人は何も言わず、無言で泣き終わるのを待ってくれた。
* * *
あれから気が済むまで泣いた私は落ち着きを取り戻し、真兄と白卯と一緒に待ちくたびれていたヴェル君と静の元へやってきた。
「お寝坊さんね、雪ちゃん」
「あはは、待たせちゃってごめんね」
ヴェル君と並んで立つ静を見て胸がギュッと痛くなったけど、今はそんな事を気にしている暇はない。私は空笑いを浮かべ、右手で後頭部をガシガシと軽く掻きながら笑った。
「雪ちゃん、お酒残ってるんじゃない? 大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。それよりも、私より宴会楽しんでたみんなの方が大丈夫?」
ヴェル君の気遣いが今は痛くて苦しくて、私は間髪入れずに大丈夫だと返事を返すとすぐさまに同じような質問を皆に投げかけた。
私みたいにお酒を飲んだわけじゃないなら、たぶん大丈夫なんじゃないかなと思いながらも、もしかしたら楽しみつかれているとか、寝不足気味だとか、そういう事もあるかもしれないと思った。
だけど、そんな心配も無用だったみたいで、全員首を左右に振って「大丈夫」だと答えてくれた。
「それでは、これから皆さんは次の石碑を探しに……?」
「そうなるね。行き先は……」
「言わなくて結構ですよ。どこで誰が聞いているかも分かりません」
「……ん、ありがとう、白卯。そうさせてもらうよ」
いろいろと気を使ってくれている白卯の発言に、私もヴェル君も笑みを浮かべて白卯を見つめた。確かにここで行き先を伝える事は簡単なことかもしれない。ここまでよくしてくれた白卯にくらい、伝えてもいいんじゃないかとも思ってしまう。
けれど、誰が聞いているかもわからないし、どこからどう神国に伝わってしまうかもわからない。
「道中お気を付けてください、皆さま」
「ええ、お気遣いありがとう、白卯さん」
にっこりと微笑みお礼を伝える静に、白卯は深く頭を下げた。
もう少し、白卯と話をしてみたかったとも思ったけど、私たちにはゆっくりと出来るほど時間は多くない。後ろ髪引かれる思いを抑え込み、私たちは白卯に背を向けると卯ノ国を後にするのだった。
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