異世界召喚されたら好きな人を親友に寝盗られた~七つの大罪(グリモワール)の一人だった私は、記憶を取り戻しながら好きな人も取り戻す!~

卯月えり

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第5章【石碑の守護者】

39罪 前世の繋がり②

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「…………っ」

 その瞬間だった、私は体の奥底で何かが蠢くような感覚を覚えた。
 もちろん、それはただの気のせいかもしれない。はっきりと目に見えているわけではないが、それでもその兆しは嬉しいものだった。

(お願い…………私の記憶のもとに、私のなくした力のもとに――――)

 私の前世を思い浮かべながら。私の失った力を思い浮かべながら、そんな風に心の中で唱えた。
 その瞬間、私の脳裏にひかる耀ひかりさんの顔が思い浮かんだ。

――雪ちゃん、僕はここだよ……。
――雪さん、こちらです……私達はこちらにいます。

 私の方に右手を差し出しながら笑顔を携えて待っている……そんな二人の姿が脳裏に過った。

「っ‼」

 ハッと、私は目を見開き顔を上げた。
 顔を上げた勢いで、私の髪の毛がゆらりと揺れた。その時、私の毛先が視界に映り込んだ。
 前回のように色の変わった――――私の髪の毛。

ひかるっ……耀ひかりさんっ」

 二人の存在を強く感じた。
 子ノ国の石碑で言っていた次の国で会えるというのは本当だったんだ、と安堵した。

「雪ちゃん、二人の場所……わかりそう?」
「うん。たぶん、分かると思う。静と真兄はわからなかった?」
「ええ……存在も何も感じなかったわ」
「おそらく、雪の前世が二人と関りが深いから感じやすいんだろう」

 私と同じように前世の記憶と力を取り戻しているはずの静と真兄は、私と同じようには感じることはなかったらしい。
 だけど、真兄の説明でなんとなくだけどしっくりくるものを感じた。
 確かに、二人は私のことを呼んでいた。それはつまり、二人にとって私の前世の存在の方が強い繋がりがあるということだろう。

「案内してもらえますか?」
「うん――――こっち」

 白卯はくうの問いかけに私は静かにうなずき返すと、意識を集中させ耳を澄ませた。
 聞こえてくる彼らの声を聴き洩らさないように、音をたどる。

――雪ちゃん。
――雪さん。

 聞こえてくる二人の声が風にのって私のもとに届く。私はパッと視線を左に向けると、そのまま体をそちらへ向けた。

「こっちからひかる耀ひかりさんの声が聞こえる!」
「行こう」
「ええ」

 先陣を切るように歩き出す私のあとを、ヴェル君と静が慌てて追うように歩き出す。
 そして、そのあとを真兄と白卯はくうがゆったりと追いかけてくる。
 前を向いていて背後を見ていないのに、それが分かるのは神経が研ぎ澄まされているせいだろうか?
 それとも、静まり返った森の中を歩く足音から、そんな風に想定しているだけなのだろうか。
 答えは分からないけれど、私はみんなが私のあとをついて来てくれている事を頭で理解していて、歩みを止めることはなかった。
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