210 / 283
第5章【石碑の守護者】
39罪 前世の繋がり②
しおりを挟む
「…………っ」
その瞬間だった、私は体の奥底で何かが蠢くような感覚を覚えた。
もちろん、それはただの気のせいかもしれない。はっきりと目に見えているわけではないが、それでもその兆しは嬉しいものだった。
(お願い…………私の記憶のもとに、私のなくした力のもとに――――)
私の前世を思い浮かべながら。私の失った力を思い浮かべながら、そんな風に心の中で唱えた。
その瞬間、私の脳裏に燿と耀さんの顔が思い浮かんだ。
――雪ちゃん、僕はここだよ……。
――雪さん、こちらです……私達はこちらにいます。
私の方に右手を差し出しながら笑顔を携えて待っている……そんな二人の姿が脳裏に過った。
「っ‼」
ハッと、私は目を見開き顔を上げた。
顔を上げた勢いで、私の髪の毛がゆらりと揺れた。その時、私の毛先が視界に映り込んだ。
前回のように色の変わった――――私の髪の毛。
「燿っ……耀さんっ」
二人の存在を強く感じた。
子ノ国の石碑で言っていた次の国で会えるというのは本当だったんだ、と安堵した。
「雪ちゃん、二人の場所……わかりそう?」
「うん。たぶん、分かると思う。静と真兄はわからなかった?」
「ええ……存在も何も感じなかったわ」
「おそらく、雪の前世が二人と関りが深いから感じやすいんだろう」
私と同じように前世の記憶と力を取り戻しているはずの静と真兄は、私と同じようには感じることはなかったらしい。
だけど、真兄の説明でなんとなくだけどしっくりくるものを感じた。
確かに、二人は私のことを呼んでいた。それはつまり、二人にとって私の前世の存在の方が強い繋がりがあるということだろう。
「案内してもらえますか?」
「うん――――こっち」
白卯の問いかけに私は静かにうなずき返すと、意識を集中させ耳を澄ませた。
聞こえてくる彼らの声を聴き洩らさないように、音をたどる。
――雪ちゃん。
――雪さん。
聞こえてくる二人の声が風にのって私のもとに届く。私はパッと視線を左に向けると、そのまま体をそちらへ向けた。
「こっちから燿と耀さんの声が聞こえる!」
「行こう」
「ええ」
先陣を切るように歩き出す私のあとを、ヴェル君と静が慌てて追うように歩き出す。
そして、そのあとを真兄と白卯がゆったりと追いかけてくる。
前を向いていて背後を見ていないのに、それが分かるのは神経が研ぎ澄まされているせいだろうか?
それとも、静まり返った森の中を歩く足音から、そんな風に想定しているだけなのだろうか。
答えは分からないけれど、私はみんなが私のあとをついて来てくれている事を頭で理解していて、歩みを止めることはなかった。
その瞬間だった、私は体の奥底で何かが蠢くような感覚を覚えた。
もちろん、それはただの気のせいかもしれない。はっきりと目に見えているわけではないが、それでもその兆しは嬉しいものだった。
(お願い…………私の記憶のもとに、私のなくした力のもとに――――)
私の前世を思い浮かべながら。私の失った力を思い浮かべながら、そんな風に心の中で唱えた。
その瞬間、私の脳裏に燿と耀さんの顔が思い浮かんだ。
――雪ちゃん、僕はここだよ……。
――雪さん、こちらです……私達はこちらにいます。
私の方に右手を差し出しながら笑顔を携えて待っている……そんな二人の姿が脳裏に過った。
「っ‼」
ハッと、私は目を見開き顔を上げた。
顔を上げた勢いで、私の髪の毛がゆらりと揺れた。その時、私の毛先が視界に映り込んだ。
前回のように色の変わった――――私の髪の毛。
「燿っ……耀さんっ」
二人の存在を強く感じた。
子ノ国の石碑で言っていた次の国で会えるというのは本当だったんだ、と安堵した。
「雪ちゃん、二人の場所……わかりそう?」
「うん。たぶん、分かると思う。静と真兄はわからなかった?」
「ええ……存在も何も感じなかったわ」
「おそらく、雪の前世が二人と関りが深いから感じやすいんだろう」
私と同じように前世の記憶と力を取り戻しているはずの静と真兄は、私と同じようには感じることはなかったらしい。
だけど、真兄の説明でなんとなくだけどしっくりくるものを感じた。
確かに、二人は私のことを呼んでいた。それはつまり、二人にとって私の前世の存在の方が強い繋がりがあるということだろう。
「案内してもらえますか?」
「うん――――こっち」
白卯の問いかけに私は静かにうなずき返すと、意識を集中させ耳を澄ませた。
聞こえてくる彼らの声を聴き洩らさないように、音をたどる。
――雪ちゃん。
――雪さん。
聞こえてくる二人の声が風にのって私のもとに届く。私はパッと視線を左に向けると、そのまま体をそちらへ向けた。
「こっちから燿と耀さんの声が聞こえる!」
「行こう」
「ええ」
先陣を切るように歩き出す私のあとを、ヴェル君と静が慌てて追うように歩き出す。
そして、そのあとを真兄と白卯がゆったりと追いかけてくる。
前を向いていて背後を見ていないのに、それが分かるのは神経が研ぎ澄まされているせいだろうか?
それとも、静まり返った森の中を歩く足音から、そんな風に想定しているだけなのだろうか。
答えは分からないけれど、私はみんなが私のあとをついて来てくれている事を頭で理解していて、歩みを止めることはなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる