闇堕勇者と偽物勇者

ぼっち・ちぇりー

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勇者の妹

初対面

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 僕とフォースは黒服の紳士に連れられて、ダンスホールへと入った。
 フォースの後を追い、行き交う人たちを見る。
「あまりキョロキョロするな。怪しまれる。」
「フォースはビギニアの神父なんでしょ。以外に声をかけられないもんだなと。」
「今の私は裏の顔の人間だからな。こっちの私を知っている人間は少ない。」
「面の私は、敬虔なウェスタン教徒だからな。にいるはずが無いのだよ。」
「ついたぞ少年。」
 予定された時間より早く来たというのに、ダンスホールは人で溢れていた。
 王族・王家直属の貴族や、辺境の有力な農民までもが、あちらこちらで談笑を楽しんでいる。
 僕はナインスたちを見つける。
「お姉さんたちは、ちゃんと舞踏会に潜り込めたみたいだね。」
「お前は自分のすべきことに集中しろ。」
 フォースが低い声を鳴らす。
 僕はフォースに言われるがまま、アスピ・クリスチャンを探した。
 いや、探すまでも無かったかも知れない。
 頭に青の冠、首には十字架をかけ、藍色と白の修道服を来た少女……
 彼女がアスピ・クリスチャンだ。
 間違いない。
「おいちょっと待て。」
 僕はフォースの言葉を聞かなかった。
 僕は彼女の前に来ると、彼女へ向けて、イレブンスに習ったあいさつをした。
 もちろん、キスではなく、首を下げる方の。
 彼女は、貴族との会話を止めると、僕の方を見る。
「すみません。連れは舞踏会が初めてでして、まだマナーがなってないのです。」
「いいえ。お気になさらず。お話は聞いております。談笑は楽しいですけれども、約束に勝る談笑など存在しませんわ。」
 彼女は貴族の男へ会釈をしてから再びこちらに向き直り、会釈をした。
「ここでは何です。場所を変えましょう。国王からは既に許可を頂いておりますが。」
 彼女はお付きのモノを連れると、ダンスホールをそそくさと出る。
「クリスチャンさんは、国王にもうあった? 」
「アスピで良いですよ? はい。封書はもう渡し終わったので、私の業務はひとまず終わりました。ふぁ~疲れた。クリート。部屋はこの角を曲がった先で良かったですか? 」
「問題ありません。お嬢様。」
 長身で短髪のメイドが表情ひとつ変えずに答えた。
「私に何かついてますか? 偽勇者様? 」
 彼女にキッと睨まれる。
「クリートの胸。大きいでしょ。Iカップあるんだよ。」
「あ、Iカップ!! 」
 僕の脳がショートする。
 そのままアタフタ。何を言えば良いのか分からず、口を篭らせてしまう。
「やっぱりタダのスケベなガキじゃ無いですか。こんな奴と話をするまでもありませんよ。今すぐ宿に戻りましょう。明日も早いんですから。」
「ダメですよクリート。それならアナタ一人で宿に帰って下さい? 」
「私の護衛を放棄して……ね。」
 彼女は肩をガックリ落として頭が垂れる。
「ご一緒させていただきます。」
 僕たちは個室に連れられた。
 フォースの目がキッっと鋭くなる。
 彼は部屋にトラップや盗聴スクロールの類が仕掛けられていないかを探っているようだ。
 個室に入り、椅子に座るやいなや、アスピは身を乗り出して、僕の顔をマジマジと観る。
「あの。どうかしましたか? 」
 しばしの沈黙。
「やっぱり…‥.似てる。」
 クリートさんがため息をつく。
「ディアスト様には全然似ていませんよ。」
「もう!! クリートは、子供の頃の兄さんしか見てないでしょ。それに私が言っているのは、そういうことじゃなくて…… 」
 彼女は腕を組んで考え始めた。
「そう何というか。そう。雰囲気が似てるの。ディアスト兄さんそっくりなの。」
 彼女は僕の方を見て、
「勇者くん? 君の名前はなんていうの? 」
 と言った。
 それが自分に向けられた言葉だと気が付き。
「アスィールと言います。」
 とだけ答える。
 そして、ずっと黙っていたフォースが口を開く。
「アスピ様。単刀直入に申し上げます。なぜ、ウェストランドのビギニアまで来られたのですか? 」
「うん? 仕事だから。」
 フォースは顰めっ面で、どう言葉を返せば良いか分からなくなっている。
「国の意向? アナタは聞かされていないの? ビギニア城で、ビギニア家が代々守っているドゥルガの盾はバロア家のモノだったってこと。」
「友好の証に当時の国王同士が、守っている武具を交換したのよ。」
「すみません。それは初耳でした。」
「セブンスさんの件。聞いたわ。気を使わなくて良いのに。バロア王もそこまで考えていないわけじゃし。」
「作用ですか。飛んだご迷惑を。」
「ゴホン。」
 クリートさんの咳払いで、アスピさんは目の色を変える。
「実わね。私がウェストサイドの要求を飲んだことには二つ目的があるの。」
「一つは、私的な理由。そう。単純に勇者だって言われている人がどんな人か知りたかったから。」
「二つ目は公的な理由。君にも分かるよね。ウェストサイドの人間がさぁ。急に勇者を擁立したなんて、私たちの上の人間が聞いたらどうなるか分かっているよね。」
「コラコラ。そんな怖い顔はしないでよ勇者くん。私にその気は無くても上にはある。私は処刑人の妹で罪人の妹で兄と同じ孤児だし、形見はそんなに広く無いの。」
「だからさ。」
「君の力を私たちに見せてくれないかな? ごめん。君たちには何も言ってないんだけど。ビギニア王にはもうゲロっちゃったから。」


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