40 / 104
呪いを解くため
航海
しおりを挟む
「アスピ。船内のチェック終わった。故障箇所はなし、スクリューはちょっと消耗してるかも。」
「ありがとう。アスィール。」
彼女はそうとしか言わない。
というか、そういう余裕もないのだろう。
額の汗が、それを物語っていた。
僕は体育座りになって、彼女をじっと見る。
「……イーストランドまで、半分切ったわよ。」
「…… 」
僕はなんと声をかければいいのか分からなかった。
そういう器用さはないけれど、だからと言って、僕が彼女に出来ることはコレぐらいしかなった。
「ぐぐっ。」
彼女の鼻から、真紅の液体が垂れる。
だいぶ体力を消耗しているのだ。
「来ないで!! 大丈夫だから。」
「やめて!! 話して!! 」
「休憩しよう!! アスピが死んじゃうよ。」
「休憩したら!! フォースさんが死んじゃうじゃない。」
僕は彼女を担ぎ上げると、透明なアクリルの筒からつまみ出してから、自身が操縦席の座った。
「私はね。アンタたちのことを心では見下していたのよ。」
中は血の匂いで充満していた。
きっと何度か血を吐いたのだろう。
この船は……危険だ。
「バレてないと思った? 」
「ムカつく。ホントアンタ。」
「ホラ、そっちにも魔力を回して。レーダーが供給不足になってるでしょ。」
言われるがまま、魔力を流し込む。
僕の魔力総量はそんなに少ないわけでは無い。
だが、こんなに連続して大量の魔力を消費したことは無かった。
「私ね。一人でなんでも出来ると思ってた。だけど、あの城じゃ私は、何にも出来なくて。アンタに助けられて、フォースさんがあんなことになってしまって。自分でもどうしたら良いか分からなくて。」
「昔ね。剣を握ったこと……あるのよ。」
「振るえなかったんでしょ。」
「フッ そうよ。私は兄さんのようには、なれなかった。」
「兄さんと同じ血を引いている。でも、加護を授かったのは、兄さんだけだったから。私はその出涸らし。」
「なんかさ。アスピは器用なのに気にしすぎてるよね。疲れてるんだよ。ちょっと休んだら。」
彼女は力無く怒った。
「こっちは真剣に悩んでいるっていうのに。」
「フォースはなんでアスピと旅をするようになったんだろうね。」
「……なりゆきでしょう。貴方と剣を取りに行くために。」
「僕は違うよ。決闘した時の短縮詠唱魔術、そして上級魔術。回復魔術も使えて、山を登っても息が上がらなくて、船を操縦するのが上手いアスピと一緒に冒険したいと思ったから。」
「僕、ドジで不器用で、魔術もあんまり得意じゃ無いからさ。」
「アスピとなら、きっと魔王を倒せると思った。だからアスピについて行ったんだ。」
「そうね。アンタみたいなのは……私やフォースさんがいないと、買…もの…も。」
彼女はそれからスースーの息で寝てしまった。
今言ったことは本心だ。
彼の兄、真の勇者なら
そう、剣技と攻撃呪文と回復・補助呪文を使いこなせれる彼なら仲間なんていなくても、自分一人で魔王を倒し得たかも知れない。
彼はそういう運命を持って生まれてきた人間なのだから。
だが、僕たちは違う。
僕は回復魔術が使えないし、フォースは補助魔術が使えない。それでアスピは剣が扱えない。
だから、三人で一役を買わないといけない。
僕たちは勇者じゃ無いのだから。
「プープー」
急に船内のアラームが赫く光始める。
レーザーが真っ赤に染まっていた。
どうしよう、点検が行き届いて無かったのか、魔力供給量を間違えたか
「敵か味方か、こちらに向かってきている船がある。」
「漁船だったら良いのだけど、魔族か海賊か。」
「まぁ後者ならこんな派手な信号は出さないだろうから。」
「よほどのバカか私たちが舐められてるのか。」
「アスィール。甲板を見てきて。気をつけてね。魔弾が飛んでくるかも知れないから。」
アスピに言われるがまま、僕は甲板へと出る。
霧が深い。
深い濃霧の中から、一隻の趣味の悪い船が姿を現し、僕たちの魔導船の船側へと、彼らの船首が行儀悪くぶつかった。
「あーあ。海賊ねコレは。私たち死ぬかも。」
ガラの悪い男たちが、渡り板をこちらに下ろすと、自身の獲物を舐めながらゾロゾロとやってくる。
「ヒャッハー!! 」
「コレ、王家の船だぜ。タンマリ財宝あるはずだ!! 」
「その前に、汚物を消毒しねえとな。」
僕は腰から乙姫を引き抜くと、アスピを庇った。
「また私を!! 」
「ええい、寝てろよ。」
僕も心に余裕がなく、彼女を怒鳴ってしまう。
だけど僕もこのままやられてやる気なんて微塵もないからな。
コイツらに捕まって、奴隷として売られるなんて!!
「オイ、オマエら、一番はアタイや言うたやろ。誰や最初にこの船に乗り込んだんは。」
「へへい姉貴、すみません。」
「ッ。まぁええわ。お前は早漏やて船ん中で有名やからな。」
それから女は僕たちの方を見た。
「なんや、アンタら二人か。他に乗客は? 」
下にフォースがいる。
だけどそれを知られてしまえば、彼女たちにどうされるかは分からない。
僕はコックリ頷いた。
「二人をこんな大勢で取り囲んでも樂しゅーない。オイ、オマエら。アタイの仕事の理念を言ってみ? 」
「「「仕事は楽しく。」」」
「そう、それだけや。仕事なんて邪魔くさいもんやし。食うために、いかに楽しむかってもんやろ? 」
「なぁそこのお前。もやし男。アタイと勝負せいや。負けたらこの船はいただくで。お前らは泳いで岸まで行きな? 」
「その勝負受けて立つけど、船は上げられないから。コレは人から借りてるものだからさ。」
「んなら、まずはアンタのタマからいただくことにするわ。覚悟せえや蛮勇。」
彼女は自分の船の甲板から飛び降りた。
「ありがとう。アスィール。」
彼女はそうとしか言わない。
というか、そういう余裕もないのだろう。
額の汗が、それを物語っていた。
僕は体育座りになって、彼女をじっと見る。
「……イーストランドまで、半分切ったわよ。」
「…… 」
僕はなんと声をかければいいのか分からなかった。
そういう器用さはないけれど、だからと言って、僕が彼女に出来ることはコレぐらいしかなった。
「ぐぐっ。」
彼女の鼻から、真紅の液体が垂れる。
だいぶ体力を消耗しているのだ。
「来ないで!! 大丈夫だから。」
「やめて!! 話して!! 」
「休憩しよう!! アスピが死んじゃうよ。」
「休憩したら!! フォースさんが死んじゃうじゃない。」
僕は彼女を担ぎ上げると、透明なアクリルの筒からつまみ出してから、自身が操縦席の座った。
「私はね。アンタたちのことを心では見下していたのよ。」
中は血の匂いで充満していた。
きっと何度か血を吐いたのだろう。
この船は……危険だ。
「バレてないと思った? 」
「ムカつく。ホントアンタ。」
「ホラ、そっちにも魔力を回して。レーダーが供給不足になってるでしょ。」
言われるがまま、魔力を流し込む。
僕の魔力総量はそんなに少ないわけでは無い。
だが、こんなに連続して大量の魔力を消費したことは無かった。
「私ね。一人でなんでも出来ると思ってた。だけど、あの城じゃ私は、何にも出来なくて。アンタに助けられて、フォースさんがあんなことになってしまって。自分でもどうしたら良いか分からなくて。」
「昔ね。剣を握ったこと……あるのよ。」
「振るえなかったんでしょ。」
「フッ そうよ。私は兄さんのようには、なれなかった。」
「兄さんと同じ血を引いている。でも、加護を授かったのは、兄さんだけだったから。私はその出涸らし。」
「なんかさ。アスピは器用なのに気にしすぎてるよね。疲れてるんだよ。ちょっと休んだら。」
彼女は力無く怒った。
「こっちは真剣に悩んでいるっていうのに。」
「フォースはなんでアスピと旅をするようになったんだろうね。」
「……なりゆきでしょう。貴方と剣を取りに行くために。」
「僕は違うよ。決闘した時の短縮詠唱魔術、そして上級魔術。回復魔術も使えて、山を登っても息が上がらなくて、船を操縦するのが上手いアスピと一緒に冒険したいと思ったから。」
「僕、ドジで不器用で、魔術もあんまり得意じゃ無いからさ。」
「アスピとなら、きっと魔王を倒せると思った。だからアスピについて行ったんだ。」
「そうね。アンタみたいなのは……私やフォースさんがいないと、買…もの…も。」
彼女はそれからスースーの息で寝てしまった。
今言ったことは本心だ。
彼の兄、真の勇者なら
そう、剣技と攻撃呪文と回復・補助呪文を使いこなせれる彼なら仲間なんていなくても、自分一人で魔王を倒し得たかも知れない。
彼はそういう運命を持って生まれてきた人間なのだから。
だが、僕たちは違う。
僕は回復魔術が使えないし、フォースは補助魔術が使えない。それでアスピは剣が扱えない。
だから、三人で一役を買わないといけない。
僕たちは勇者じゃ無いのだから。
「プープー」
急に船内のアラームが赫く光始める。
レーザーが真っ赤に染まっていた。
どうしよう、点検が行き届いて無かったのか、魔力供給量を間違えたか
「敵か味方か、こちらに向かってきている船がある。」
「漁船だったら良いのだけど、魔族か海賊か。」
「まぁ後者ならこんな派手な信号は出さないだろうから。」
「よほどのバカか私たちが舐められてるのか。」
「アスィール。甲板を見てきて。気をつけてね。魔弾が飛んでくるかも知れないから。」
アスピに言われるがまま、僕は甲板へと出る。
霧が深い。
深い濃霧の中から、一隻の趣味の悪い船が姿を現し、僕たちの魔導船の船側へと、彼らの船首が行儀悪くぶつかった。
「あーあ。海賊ねコレは。私たち死ぬかも。」
ガラの悪い男たちが、渡り板をこちらに下ろすと、自身の獲物を舐めながらゾロゾロとやってくる。
「ヒャッハー!! 」
「コレ、王家の船だぜ。タンマリ財宝あるはずだ!! 」
「その前に、汚物を消毒しねえとな。」
僕は腰から乙姫を引き抜くと、アスピを庇った。
「また私を!! 」
「ええい、寝てろよ。」
僕も心に余裕がなく、彼女を怒鳴ってしまう。
だけど僕もこのままやられてやる気なんて微塵もないからな。
コイツらに捕まって、奴隷として売られるなんて!!
「オイ、オマエら、一番はアタイや言うたやろ。誰や最初にこの船に乗り込んだんは。」
「へへい姉貴、すみません。」
「ッ。まぁええわ。お前は早漏やて船ん中で有名やからな。」
それから女は僕たちの方を見た。
「なんや、アンタら二人か。他に乗客は? 」
下にフォースがいる。
だけどそれを知られてしまえば、彼女たちにどうされるかは分からない。
僕はコックリ頷いた。
「二人をこんな大勢で取り囲んでも樂しゅーない。オイ、オマエら。アタイの仕事の理念を言ってみ? 」
「「「仕事は楽しく。」」」
「そう、それだけや。仕事なんて邪魔くさいもんやし。食うために、いかに楽しむかってもんやろ? 」
「なぁそこのお前。もやし男。アタイと勝負せいや。負けたらこの船はいただくで。お前らは泳いで岸まで行きな? 」
「その勝負受けて立つけど、船は上げられないから。コレは人から借りてるものだからさ。」
「んなら、まずはアンタのタマからいただくことにするわ。覚悟せえや蛮勇。」
彼女は自分の船の甲板から飛び降りた。
0
あなたにおすすめの小説
竜皇女と呼ばれた娘
Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた
ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる
その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ
国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……
「無能」と捨てられた少女は、神の愛し子だった――。 凍てつく北の地で始まる、聖獣たちと冷徹公爵による「世界一過保護な」逆転生活。
秦江湖
恋愛
魔法適性「鑑定」がすべてを決める、黄金の国ルミナリス。 名門ベルグラード公爵家の末娘アデリーンは、十五歳の鑑定式で、前代未聞の『鑑定不能(黒の沈黙)』を叩き出してしまう。
「我が家の恥さらしめ。二度とその顔を見せるな」
第一王子からは婚約破棄を突きつけられ、最愛の三人の兄たちからも冷酷な言葉とともに、極寒の地「ノースガル公国」へ追放を言い渡されたアデリーン。
着の身着のままで雪原に放り出された彼女が出会ったのは、一匹の衰弱した仔狼――それは、人間には決して懐かないはずの『伝説の聖獣』だった。
「鑑定不能」の正体は、魔力ゼロなどではなく、聖獣と心を通わせる唯一の力『調律師』の証。
行き倒れたアデリーンを救ったのは、誰もが恐れる氷の公爵ゼノスで……。
「こんなに尊い存在を捨てるとは、黄金の国の連中は正気か?」
「聖獣も、私も……お前を離すつもりはない」
氷の公爵に拾われ、聖獣たちに囲まれ、これまでの不遇が嘘のような「極上溺愛」を享受するアデリーン。
一方で、彼女を捨てた黄金の国は、聖獣の加護を失い崩壊の危機に直面していた。
慌ててアデリーンを連れ戻そうとする身勝手な王族たち。
しかし、彼らの前には「復讐」の準備を終えたアデリーンの兄たちが立ちはだかる。
「遅いよ。僕らのかわいい妹を泣かせた罪、一生かけて償ってもらうからね」
これは、すべてを失った少女が、真の居場所と愛を見つけるまでの物語。
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
ボンクラ王子の側近を任されました
里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」
王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。
人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。
そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。
義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。
王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?
余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした
ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。
しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義!
そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。
「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」
「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」
イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。
ある日、夢をみた。
この国の未来を。
それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。
彼は言う。
愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?
婚約破棄は構いませんが、私が管理していたものは全て引き上げます 〜成金伯爵家令嬢は、もう都合のいい婚約者ではありません〜
藤原遊
ファンタジー
成金と揶揄される伯爵家の令嬢である私は、
名門だが実情はジリ貧な公爵家の令息と婚約していた。
公爵家の財政管理、契約、商会との折衝――
そのすべてを私が担っていたにもかかわらず、
彼は隣国の王女と結ばれることになったと言い出す。
「まあ素敵。では、私たちは円満に婚約解消ですね」
そう思っていたのに、返ってきたのは
「婚約破棄だ。君の不出来が原因だ」という言葉だった。
……はぁ?
有責で婚約破棄されるのなら、
私が“善意で管理していたもの”を引き上げるのは当然でしょう。
資金も、契約も、人脈も――すべて。
成金伯爵家令嬢は、
もう都合のいい婚約者ではありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる