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四国会議
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僕はポート王から封蝋の解かれていない一通の手紙を受け取った。
封の中身を王様が受け取っていないとすれば、手配書とは別にビギニア王はポート王に封書を送っているに違いない。
僕は身構えた。
そしてみんなも。
「お言葉ですが、ポート王。私たちは。」
フォースの言葉が終わる前に、王が僕たちの身体を再び縛った。
「なぜ私が縄を解き、ソナタらに隙を与えて、また拘束したかが分かるな。」
アスピが苦虫をすり潰す。
「私たちに敵意がないことを証明してくださったんですね。」
ポート王も同じく難しい顔をする。
「そうだ、だからアスィール。ソナタには伝説の装備を返した。」
「本当はね。受け答え次第では君たちを処刑するつもりだった。」
「だが私の目に狂いは無かったらしい。」
アスピがもがきながら叫んだ。
「だったら___ 」
ビギニア王は首を横に振る。
「悔しいようだが、コレはもう私たちだけで解決できる問題ではない。彼に背けば、私は三大陸から報復を受けることになる。」
堪忍袋の緒が切れたようにドレイクが怒鳴った。
「今は人間同士で争っとる場合とちゃうやろ。」
「何度も言わせるな。それは私が決めることだ。」
「そんな分かりきったことなんて、私にも、ここにいる腹心も、兵士達も、国民もみんな分かりきっている。」
「そう、国民もな。」
「私はそれだけ大きな責任を背負う立場にいる人間なのだ。」
「この問題は私個人の問題でも、お前達、勇者一行の問題でもない。」
「この国の命運を守るためには、お前達を売らなくてはならない。」
ポート王は続ける。
「人は、我々王を『神の使い』やら『全知全能の存在』と揶揄する。」
「だが、それは違う。我々すらも世界の一部、歴史を構成するワンピースでしか無い。」
「私は動かされているのだ。その神とやらに。そこに果たして、私の私的感情などという矮小な概念が入り込む余地があると……果たして君はそう思うかね? 」
長い間海賊のリーダーを務めた彼女だから刺さる言葉。
「っかんねえな。そういう難しいことは。こっちとら勝手に自由気ままにやらせてもろてたし。」
「でも分かるで。やつらを思う気持ちは、アタイも一緒や。」
「「姐さん!! 」」
「何やお前ら、王様んとこに雇ってもらえるんやろ。良かったやないか。」
「行ってくる。それまで王様の元で御利口にしとくんやぞ。」
「「ア"イ"ア"ィサー。」」
僕は兵士に向けて両手を差し出す。
それに続いてみんなも手を前に差し出した。
「お前ら、彼らは客人であり、この地の英雄だ。丁重にお迎えしろ。」
* * *
航海から数日後。
魔物は静かだし、魔王軍に目をつけられることもなく、僕たちの旅は順調に進んだ。
妙な静けさ。
ビギニアは、僕たちの手配書の他に、ポート王へ向けて、別の封書を送った。
というか、手配書なら首を、そのままウェストランドに送れば良いし、僕にこんな封書を送る必要なんてないのだ。
状況が変わったと見て良い。
僕は封蝋を切ると、中の羊皮紙を取り出した。
そこに書かれていたのは。
現在の指名手配が恩赦されていたこと。
まずコレには疑った。
だがしかし、文章はまだ続いており、その旨は、『魔王軍が、王都周辺の街や村を攻撃しており、その影響で物流が滞っており、兵糧責めに合っている。』ということだった。
同様の被害は他の二国でも続いており、打開策を練るために会議を開くらしい。
そのため、僕たちにも知恵を貸してほしいとのことだった。
「身勝手な話よね全く。私たちを犯罪者扱いしておきながら、必要になったから呼び戻すだなんて。」
「それより、要人が一つの場所に集まって大丈夫なんか? 」
「まぁウチらの船がこんなに安全なわけなんやから、そんなことは眼中に無いんやろうけど。」
「スカサァ女王とバロア王は、直接赴くことがないようだ。」
「それなら安心だよね。」
僕とアスピは顔を見合わせた。
「スカサァ女王が来ないなんて。私たちの立場が、良くなることは無さそうね。」
「仕方ないよ。いつ彼らが襲ってくるかは分からないんだ。」
「どんな話を持ちかけられるんだろうか。」
「最近変わったわね。アンタ。以前はそんな顔なんてしなかったのに。」
「そりゃ心配にもなるさ。コレは僕だけの問題じゃ無い。みんなを巻き込んでしまったわけだから。」
「ビギニア王が俺を許すとして、私は、ビギニア王を許せるだろうか。」
波風に当たり、髪をフサフサと揺らしながら、フォースは答えた。
以前のような放心状態とはまた違い、だがそれは、憎しみとも少し違う感情のような気がする。
「私は毎日祈った。そして、町民達に教えを解いた。人を恨むなと。人を妬むなと。」
「綺麗事ばかりを町民に対して。」
「そんな簡単なことでは無かった。もっと言葉を深く噛み締めるべきだった、自戒するように。ならば、今の私は、もっと楽になっていたかもしれない。」
「フォース。」
「いや、その考え方が甘いのだろう。コレは私に対する罰だ。楽になろうなどという甘い言葉は捨てる。」
「今は残った十二使徒をどう繋いでいくかを考えるべきだ。教皇様も、ファーストもそれを望んでいる。」
「行こう。フォース。それから、アスピにドレイク。」
船の汽笛はまだ鳴らない。
この一際、性能の良い魔導船でも、ウェストランドまではもう少しかかりそうだ。
封の中身を王様が受け取っていないとすれば、手配書とは別にビギニア王はポート王に封書を送っているに違いない。
僕は身構えた。
そしてみんなも。
「お言葉ですが、ポート王。私たちは。」
フォースの言葉が終わる前に、王が僕たちの身体を再び縛った。
「なぜ私が縄を解き、ソナタらに隙を与えて、また拘束したかが分かるな。」
アスピが苦虫をすり潰す。
「私たちに敵意がないことを証明してくださったんですね。」
ポート王も同じく難しい顔をする。
「そうだ、だからアスィール。ソナタには伝説の装備を返した。」
「本当はね。受け答え次第では君たちを処刑するつもりだった。」
「だが私の目に狂いは無かったらしい。」
アスピがもがきながら叫んだ。
「だったら___ 」
ビギニア王は首を横に振る。
「悔しいようだが、コレはもう私たちだけで解決できる問題ではない。彼に背けば、私は三大陸から報復を受けることになる。」
堪忍袋の緒が切れたようにドレイクが怒鳴った。
「今は人間同士で争っとる場合とちゃうやろ。」
「何度も言わせるな。それは私が決めることだ。」
「そんな分かりきったことなんて、私にも、ここにいる腹心も、兵士達も、国民もみんな分かりきっている。」
「そう、国民もな。」
「私はそれだけ大きな責任を背負う立場にいる人間なのだ。」
「この問題は私個人の問題でも、お前達、勇者一行の問題でもない。」
「この国の命運を守るためには、お前達を売らなくてはならない。」
ポート王は続ける。
「人は、我々王を『神の使い』やら『全知全能の存在』と揶揄する。」
「だが、それは違う。我々すらも世界の一部、歴史を構成するワンピースでしか無い。」
「私は動かされているのだ。その神とやらに。そこに果たして、私の私的感情などという矮小な概念が入り込む余地があると……果たして君はそう思うかね? 」
長い間海賊のリーダーを務めた彼女だから刺さる言葉。
「っかんねえな。そういう難しいことは。こっちとら勝手に自由気ままにやらせてもろてたし。」
「でも分かるで。やつらを思う気持ちは、アタイも一緒や。」
「「姐さん!! 」」
「何やお前ら、王様んとこに雇ってもらえるんやろ。良かったやないか。」
「行ってくる。それまで王様の元で御利口にしとくんやぞ。」
「「ア"イ"ア"ィサー。」」
僕は兵士に向けて両手を差し出す。
それに続いてみんなも手を前に差し出した。
「お前ら、彼らは客人であり、この地の英雄だ。丁重にお迎えしろ。」
* * *
航海から数日後。
魔物は静かだし、魔王軍に目をつけられることもなく、僕たちの旅は順調に進んだ。
妙な静けさ。
ビギニアは、僕たちの手配書の他に、ポート王へ向けて、別の封書を送った。
というか、手配書なら首を、そのままウェストランドに送れば良いし、僕にこんな封書を送る必要なんてないのだ。
状況が変わったと見て良い。
僕は封蝋を切ると、中の羊皮紙を取り出した。
そこに書かれていたのは。
現在の指名手配が恩赦されていたこと。
まずコレには疑った。
だがしかし、文章はまだ続いており、その旨は、『魔王軍が、王都周辺の街や村を攻撃しており、その影響で物流が滞っており、兵糧責めに合っている。』ということだった。
同様の被害は他の二国でも続いており、打開策を練るために会議を開くらしい。
そのため、僕たちにも知恵を貸してほしいとのことだった。
「身勝手な話よね全く。私たちを犯罪者扱いしておきながら、必要になったから呼び戻すだなんて。」
「それより、要人が一つの場所に集まって大丈夫なんか? 」
「まぁウチらの船がこんなに安全なわけなんやから、そんなことは眼中に無いんやろうけど。」
「スカサァ女王とバロア王は、直接赴くことがないようだ。」
「それなら安心だよね。」
僕とアスピは顔を見合わせた。
「スカサァ女王が来ないなんて。私たちの立場が、良くなることは無さそうね。」
「仕方ないよ。いつ彼らが襲ってくるかは分からないんだ。」
「どんな話を持ちかけられるんだろうか。」
「最近変わったわね。アンタ。以前はそんな顔なんてしなかったのに。」
「そりゃ心配にもなるさ。コレは僕だけの問題じゃ無い。みんなを巻き込んでしまったわけだから。」
「ビギニア王が俺を許すとして、私は、ビギニア王を許せるだろうか。」
波風に当たり、髪をフサフサと揺らしながら、フォースは答えた。
以前のような放心状態とはまた違い、だがそれは、憎しみとも少し違う感情のような気がする。
「私は毎日祈った。そして、町民達に教えを解いた。人を恨むなと。人を妬むなと。」
「綺麗事ばかりを町民に対して。」
「そんな簡単なことでは無かった。もっと言葉を深く噛み締めるべきだった、自戒するように。ならば、今の私は、もっと楽になっていたかもしれない。」
「フォース。」
「いや、その考え方が甘いのだろう。コレは私に対する罰だ。楽になろうなどという甘い言葉は捨てる。」
「今は残った十二使徒をどう繋いでいくかを考えるべきだ。教皇様も、ファーストもそれを望んでいる。」
「行こう。フォース。それから、アスピにドレイク。」
船の汽笛はまだ鳴らない。
この一際、性能の良い魔導船でも、ウェストランドまではもう少しかかりそうだ。
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