闇堕勇者と偽物勇者

ぼっち・ちぇりー

文字の大きさ
63 / 104
サウスランドへ

拘束

しおりを挟む
 僕は着地して、ドレイクの横に立つ。
 ドレイクが拳を突き出して来たので、僕もそれを返した。
「コレが、魔王の幹部っちゅう奴か? 」
「たぶん……そうだと思う。僕もあんまり戦ったことは無かったから。」
「決めた。ウチも魔王を倒す。」
 一瞬意味を理解できなかった。
「売られた喧嘩は必ず返す。ウチらのセオリーや。」
 そうだ、フォース。
 僕が声を上げる前に、ドレイクは、木の根元で倒れているフォースの元へと走っていった。
 肋が何本か逝っている。
 背中にはべっとりと血が付いていた。
「オイ、アスィール。回復魔術は使えんのか? 」
 多分、治癒魔術では間に合わない。
 というか、身体に余計な負荷を掛けて余計にフォースを苦しめてしまうかもしれない。
 僕は額に汗をかきながら、恐る恐るドレイクへと問うた。
「ドレイクは? 」
「……ウチが有神者に見えるか? 」
 アスピを呼びにアジトまで戻るか……
 いや、それじゃ間に合わない。
「姐さ~ん。」
 ドレイクは下っぱ達の悲鳴を聞き取ると、苦虫を噛み締める様な顔をして、それから火中へと走っていた。
 今、彼を救えるのは僕だけだ。
 正直、神とか信じてなかったけど。
 今はそれ以外に頼れる存在が無かった。
 宗教とは、そういう人間にこそ、本当に必要な存在なのだ。
 僕は今、そういう人間になっている。

--- 次元の腕パラレル・スクランブル---

 神様、どうか!!
 俺に力を
 貴方の奇跡を
 ほんの少しでも良いから
 僕に分けてください
 フォースを助けて


---傷快ショウカイ---



 僕の両手が碧く光り、それと同時にフォースの傷がどんどん癒えていく。
 治癒とは違う、生物代謝とは違う、特殊な現象がフォースを治した。
「このままじゃ埒が空かん。」
 ドレイクは下っぱ達を庇いながら、魔族や魔物達を切り刻んでいく。
 その過程で、彼女の顔はどんどん赤黒く染まっていった。
 禍々しい魔族の血を、ドレイクに纏わりつく光が浄化していく。
「魔導砲 撃て。」
 光の杭は、ドレイクの海賊帽子を吹き飛ばすと、背後の魔獣を、額から脊椎、尻尾までを貫き、灰へと返した。
「全軍、突撃!! 」
 ドレイク怯むことも、驚くこともなく、そそくさと走って来た。
「みろ、ポートの国旗や。」
 僕もドレイクも、予想外の増援に安堵することは無かった。
 僕たちがディアブロスを倒した後、あまりにもタイミングが良すぎる。
 僕もドレイクも、お尋ねモノの身である以上、なんの咎めもなく見逃してくれるわけが無い。
「ふんッ。」
 危険を察知したフォースが勢いよく起き上がる。
 そして、ドレイクと目を合わせた。
 互いに無言だ。
 ドレイクの顔が次第に紅くなる。
 今のドレイクは役に立たない。
 僕がどうするべきか考えないと。
「居たぞ。捕まえろ。」
 僕は二人を担ぎ、逃げようとした。
[ファイアー・アロー]
 一人の術士の魔術が、ガッチリ僕の左脚を捉える。
 僕は痛みに悶えながら、地に落ちた。

      * * *

「起きろ、王の御前であるぞ!! 」
 兵士に籠手で叩かれ、鈍痛で目覚めた。
 両手の自由が効かない。
 ドゥルガも、乙姫も当然没収されていた。
「やめろ、手荒にしろとは命令していない。」
 目の前の厳格な漢は、頭の上に冠を乗せて、紅色のマントを被っている。
「申し遅れた。私がポート王だ。この様な形で王宮に招いてしまって申し訳ない。」
「なんというか……落ち着いているな。は。」
 周りを見渡すと、アスピも、フォースも、ドレイクも捕まっていた。
「あいにく、慣れているもんでね。こういう扱いは。」
「貴様っ!! 」
「コラ、待ちなさい。縄を解け。彼らと話をしたい。」
 縄を外された瞬間、全身に痛みが走る。
 節々が痛い。
「我々を試したな。」
 一番最初に口を開いたのはフォースだった。
「すまない。君たちの手配書はビギニア王たちから受け取っている。」
「だからこそ、君達の本質を知りたかった。だから試した。」
 ドレイクが眉をしかめる。
「モノは言いようやな。ウチらがディアブロスを倒さんかったら見殺しにする気やったんやろ? 」
「そうだ。」
 ドレイクが、他の兵士たちに押さえられる。
「アンタのせいで、村も、兄弟達も、フォースも、みんな失うところやったんや。」
「アスィールが回復魔術を使ってくれんかったら!! 」
 周りでどよめきが起こる。
 そして、フォースもアスピも驚いていた。
 どういうことだ?
「アスィール。アンタも神に認められたのよ。」
 ポート王は咳払いをすると、僕の方をジッと見た。
 しばらく。
 それから口を開いた。
「君は教会での洗礼や、修行の経験はあるかね? 」
 僕には、セカンドに孤児院から連れ出される以前の記憶が無い。
 だけど、それなら以前も回復魔術を使えていた筈だし、それは無いと思う。
「いいえ?その様な経験は全く。」
 僕の顔に、紅い液体が降り掛かる。
「王の体に傷をつけたな。死罪じゃ済まんぞ。」
 兵士は腰を抜かすと、口をパクパクさせながら、ズルズルと後ずさる。
「やめろ、彼は恩赦する。剣を下ろせ。」
 彼はメイド達に右手を差し出し、傷を介抱されながら、僕たちと会話を続ける。
「お前の兄、ディアストもそうだった。」
「教会に信仰を示さなくても、生まれつき回復魔術が使えた。」
「攻撃魔術の最少年齢はだいたい五歳ぐらい。」
「この意味が分かるな。」
 アスピはコックリ頷いた。
「はい、兄さんは生まれつき神の……アプスーの奇跡が使えました。」
 生まれつき?
 ならば、ディアストがあの年齢まで生かされていた理由は……
「勇者の親族は皆そうだ。自身の家族が勇者であることを隠そうとする。無論私でもな。」
 僕はアスピを覆うように前へと出た。
 皆が警戒する。
 ただ、一人、王を除いて。
「僕が勇者だとしたら……どうするの? 処刑する? それともビギニアに引き渡す? 」
「ソナタに力を貸そう。」
 震えていた足に力が入らなくなり、膝を突く。
「私に膝付いている時間など無いぞ。」
「オイ、伝説の武具一式を持ってこい。」
 兵士達が、顔を真っ赤にしながら、ドゥルガ、乙姫、アペシュ、それから、真紅の鎧と、空色の靴を持って来た。
「コレはソナタに託す。どうか魔王を倒してくれ。」
 王が僕に頭を下げる。
 僕はどうしたら良いか分からなくて慌てふためいた。
「もうええやろ。ウチの兄弟達を解放してもらおか? 」
 王は頭を上げると、ドレイクを睨んだ。
「王に命令するな。それは私が決めることだ。」
「彼らには、海軍として、我が国の兵士になってもらう。」
 ドレイクは胡散臭そうな目で彼を見た。
「使えんで、アイツら。」
 執事の一人が声を上げた。
「悪人を、役人として起用するなんて、私も納得できません。」
「悪人かどうか、使えるかどうかは、私がこの目で見て判断する。」
「なぜか分かるか? 」
 執事は頭を下げて答える。
「ポート王が、王たる所以です。」
 そこへドレイクの部下達が入って来た。
「おい、アンタら、ウチ無しでやっていけるわけないやろ? 」
「姐さんは寝相は悪いし、髪の手入れも出来ないし、料理も出来ない。正直もう疲れましたよ。」
 王の御前でそんなデリカシーのない事を言われたドレイクがどうなるかは、想像するまでもない。
「貴様らぁッ!! 」
「姐さん、魔王を倒すんだって?行って来なよ。アイ・フリードみたいな立派な海賊になるんだろ? 」
 ポート王は僕に一枚の手紙を差し出した。
「ビギニア王から、お前宛の手紙が届いている。今すぐ戻ってくるようにとな。」
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜

水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。 魔王乱立の時代。 王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。 だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。 にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。 抗議はしない。 訂正もしない。 ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。 ――それが、誰にとっての不合格なのか。 まだ、誰も気づいていない。 欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。

妹のために愛の無い結婚をすることになりました

バンブー竹田
恋愛
「エミリー、君との婚約は破棄することに決まった」 愛するラルフからの唐突な通告に私は言葉を失ってしまった。 婚約が破棄されたことはもちろんショックだけど、それだけじゃない。 私とラルフの結婚は妹のシエルの命がかかったものでもあったから・・・。 落ちこむ私のもとに『アレン』という大金持ちの平民からの縁談が舞い込んできた。 思い悩んだ末、私は会ったこともない殿方と結婚することに決めた。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

ボンクラ王子の側近を任されました

里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」  王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。  人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。  そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。  義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。  王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?

魔女とお婿様

深月織
ファンタジー
ある日突然やって来た、私のお婿様は―― 秘密を隠した王子と魔女の新婚(?)ラブコメ。 ’08年~なろうにて掲載 ※とても初期の作品です ※※文章がとても初期です ※※※ファイル迷子予防のために載せておきます

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

処理中です...