闇堕勇者と偽物勇者

ぼっち・ちぇりー

文字の大きさ
69 / 104
勇者になるために

姑獲鳥の鎧

しおりを挟む
[閣下……閣下…… ]
 人?
 ここにはダミアンさん以外いないはずだ。
 また僕はおかしな空間に飛ばされてしまったのか。
 僕はため息をつきながら、目を擦り、何回目か分からない意識の覚醒をした。
「…… 」
 当然人なんていない。あるのは滝行を行っている自分と、打ち付ける水の音だけ。
 本当に僕はおかしくなってしまったのだろうか?
 それも無理は無い。
 むしろ人間の反応として正しい。
 身体が順応して来ているのだ。

 おかしなこの世界へと。

[閣下!! しっかりなされ!! ]

 ようやくソレが、伝説の武具、 姑獲鳥こかくちょうの鎧から放たれていることに気付いた。
 そういや、ポート王からそんなモノを貰ったなと、記憶を呼び戻す。
[もう五時間もこうして滝に打たれておられる。一度身体を温めなくては、身体を壊してしまいまする。]
 僕はゾロゾロと土手を目指して歩き出す。
 そして、地に足を付けると、姑獲鳥の鎧はすぐさま、鎧の力で僕を温めた。
「ありがとう…… 」
 僕は、そのまま力無く、地面に尻をついた。
[例には及ませぬ。某に出来ることは、コレぐらいですから。]
 僕は頭で手を組むと、そのまま寝転がった。
[気分が優れないようで。]
「なぁ姑獲鳥? 」
[姑獲とお呼び下さいませ。]
「分かった。」
[なんですか、閣下? ]
「みんな自分勝手なんだよ。神も人間も。」
「周りに振り回されてばっかりなんだ。」
「旅の仲間は、味方に裏切られるし、僕は奴隷の身だった見たいで、奴隷商に目をつけられるし、呪いを解いて、帰ってきたと思ったら反逆者扱い。ソレからサウスランドで、一悶着あったと思ったら、今度は帰国しろと来た。」
「神は神だ。僕をディアストのことを討伐するためのコマとして扱おうとして来た。」
「みんな、僕が勇者だからだって、そういう都合のいい理由で納得させようとするけど、それは違う。僕が振り回されているのは、僕に力がないから。」
「魔王みたいに強くなれば、僕もこの理不尽に打ち勝てるかな? 」
[じゃあ、閣下は魔王になれば良かったのでは? ]
[オイ、姑獲ッ!! ]
 ドゥルガがカタカタと揺れた。
[閣下が勇者になりたかった理由。それはもう貴方自身が一番良く気づいているでしょう。]
 そうだ。
 リワン姉さん。
 僕は最初からみんなのことなんて見ていなかった。
 武具を集めることに躍起になっていたのも、それでいて魔王軍の幹部たちの狼藉を許していたのも、全部僕のエゴ。
 僕はつくづく勇者には向いていないと思う。
 ダミアンさんに言われた通り、だから僕には災難ばかりが降りかかった。
 自業自得だ。
[閣下はとても殿に似ておられる。]
「殿下? 」
 少し考えてから、誰のことを言っているのかが分かった。
 彼が使えた人間は後にも先にも彼一人。
「伝説の勇者に? 僕が? 」
[左様でございまする。]
 姑獲は続けた。
[殿下は、スカサア陛下をとても慕っておられました。]
 それは彼女のあの境遇からも見てとれた。
 兜と一緒に数千年も閉じ込めていたのだから。
 争いを避けされる苦肉の策として、彼女を人柱とした。
 最初はそう思っていた。
 でも白竜との会話を聞いて僕は理解した。
 彼が、女王を時空に閉じ込めたのは、彼なりの不器用な愛だということに。
[『人を恨むな。』殿下からの伝言です。次の勇者と出会ったら伝えるようにと。]
「人を恨むな……か随分残酷なことを言うんだね君の相棒は。」
[使命とエゴは同一の存在では無い。]
[ですが、相反する存在でも……また無い。]
[『もしも人を恨んでしまうのなら、自分のエゴを思い出せ。』と。]
[殿下、御武運を。]
 忘れたわけじゃ無い。
 僕は使命という側面ばかりを重く見過ぎていたかも知れない。
 僕は伝説の勇者では無い。
 その伝説の勇者が、そう言っているなら尚更だ。
 僕には仲間がいる。
 今も前線で僕の帰りを待つ仲間たちが。
「少しぐらい彼らを信用しても良いんじゃ無いかな? 」
 僕が今すべきことは、時空間魔術を身につけること。
 そして

 リワン姉さん……

 魔王を倒して彼女と結婚する。
 婚約した彼女と。
 記憶喪失で何も知らない僕に、手取り足取り教えてくれた彼女と。

--- 次元の腕パラレル・スクランブル---

 深く暗い虚空spaceへと落とされる。
 やがて無数の星たちが輝き、瞬き、僕の右腕へと集まってくる。
 やがてそれは、僕の掌の中で、鍵型を形成した。
 誰に言われたわけでも無い。
 誰に教えられたわけでも無い。
 僕はその宇宙spaceの鍵穴に、を捩じ込んだ。
 は上手く回らない。
 錆びついているのか……
 それも少し違った。
 だが、鍵穴が間違っているわけでは無い。
 手応えがあった。
 重い、シリンダー錠は動かない。
 だけど、僕はコレ回さなくてはならない。
 コレは使命では無い
 義務でも無いし
 世界のためでも無い

みんなフォースたちのために!! 」

 錠が解けた。
 崩れるように空白spaceは崩れ去り、中から金色の光が溢れ出る。
 瞬い光に手覆い、やがて焦点を合わせた僕は、その時空space timeを見た。
「こんにちは、初めましてかな。ようこそ僕の空間へ。ずっと君がここに辿り着くのを待っていたよ。」
 そこには一人の青年が佇んでいた。
 
 

 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜

水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。 魔王乱立の時代。 王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。 だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。 にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。 抗議はしない。 訂正もしない。 ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。 ――それが、誰にとっての不合格なのか。 まだ、誰も気づいていない。 欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。

妹のために愛の無い結婚をすることになりました

バンブー竹田
恋愛
「エミリー、君との婚約は破棄することに決まった」 愛するラルフからの唐突な通告に私は言葉を失ってしまった。 婚約が破棄されたことはもちろんショックだけど、それだけじゃない。 私とラルフの結婚は妹のシエルの命がかかったものでもあったから・・・。 落ちこむ私のもとに『アレン』という大金持ちの平民からの縁談が舞い込んできた。 思い悩んだ末、私は会ったこともない殿方と結婚することに決めた。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

ボンクラ王子の側近を任されました

里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」  王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。  人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。  そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。  義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。  王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした

ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。 しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義! そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。 「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」

処理中です...