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勇者になるために
道化師のクラン
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[[煉獄流水]]
ドレイク姉さんの最上級水魔術と、私の最上級炎魔術が合わさり、翠色に変色する。
「さぁさぁ、大道化師クランに浴びせられますは、うつしよから生まれし業火と、冥府より流れし嘆きの川。」
「見事耐えることができれば、拍手喝采をお願いします。」
魔王軍の一人、道化師のクラン。
この男がセブンスを誑かして!!
私たちの業火と濁流は、道化の身体を覆い込むと……
次の瞬間、魔術はかき消され、道化師は再び地に足をつけた。
かれこれ、六時間ほど彼に魔術をぶつけているが、一向にダメージを受けている様子がない。
コレも彼の能力、liar clownの能力の一つ。
私の魔力も限界に近く、鼻から温かい液体が垂れて来ているのが感じ取れる。
あれだけ精力旺盛なドレイク姉さんも、目にクマを作って、息を荒げている。
私たちが攻撃の手を緩めたことで、新たなクランが生まれる。
「さぁさぁ、私を殺し続けないと、新たな私が生まれてしまいますよ。」
分裂方式はねずみ算、おそらく一体一体が分身では無く本体なのだ。
殺し続けなければ、クランは増え続け、私たちでは対処しきれなくなる。
前を張っていたフォースも、ガス欠で疲れ果てている。
無理もない。
彼は六時間ぶっ通しで、彼を殴り続けていたのだから。
私たちメイジの比では無いだろう。
「まだ、倒れるわけには。」
「無理は禁物ですよフォースさん。」
「しっかしまぁ、人間ってのは弱いな。」
クランはフォースを指差した。
「なぁ、十二使徒よ? 」
「お前も魔眼持ちにならないか? 」
「私としては不本意なんだがね。魔王様はとても器の大きなお方だ。自分に忠誠を誓う者は、魔族であろうと人間であろうと分け隔てなく力を与えると、そうおっしゃった。」
「お前は、私利私欲を満たす人間と、民のために尽くそうとお考えの魔王様、どちらの味方をするべきだか、もう答えは出ているだろう? 聖職者。」
フォースが両膝をついて項垂れた。
初めてみる彼だ。
それから、地面の砂を力強く握りしめた。
それから静かに語りだす。
「……そうやって、セブンスを唆したのか、この外道。」
「それに、私はもう聖職者では無い。オマエの、お前たちのせいでな。」
「居場所も大切な人間も奪われた。」
「人間たちを恨んでいない事はないし、魔族に悔恨があるわけでもない。」
「だけど。」
「お前は俺を怒らせた、道化のクラウン。」
フォースは歯を食いしばり、私たちに見せたこともないようなクシャクシャの顔に涙を溜めて、クランを睨んだ。
「私が、いつ、貴方たちに何をしたっていうんですか? 全部、全部悪いのは人間の方ではないですか? 自分たちで人間の闇を作り、それを貴方たち十二使徒に押し付けた。人類のそういう要素こそ、この世界に不要な存在だ。彼はソレを正そうとした。己の手を汚し、世界を浄化するために。彼は正しい行いをしたのです。私はソレを手助けした。ただそれだけだ。貴方がすべきは、私に憎悪を向けることでは無く、四大陸の王を殺し、世界を浄化することです。」
「ゴチャゴチャうっせえぞ、御託や方便なら、アイツから嫌と言うほど聞かされたんだよッ。」
フォースの両腕に下げられた棺桶が、粉々に砕け、中から無数の銃口が飛び出る。
「掃除の時間だ。掃除は俺の担当。そうだったよなセブンス。」
彼がトリガーを引いて、激しい炸裂音と共に、鉄の弾丸が、クランたちに襲いかかる。
「激しい断末魔と共に、クランは身体に穴をあけて、チリと化す。」
私たちは側でソレを見ていた。
青空に灰の雨が降る。
「アスピ、身体に浴びるんとちゃうぞ。」
ドレイク姉さんのマントに包まれる。
周りはよく見えなかったけど、フォースの咆哮と、クランの断末魔は絶え間なく続いている。
物静かなフォースさんも、時々激情する事は、あった。
今、この現状を目にして分かった事だけど、フォースさんが本当の意味でキレた事なんて今まで一度もなかったんだ。
暫くして、発砲音も、断末魔も止んで、私は姉さんのマントから外を除いた。
最後の一人となった隻腕のクランと、銃の反動で両手の銃が効かなくなったフォース。
「……ざん…ねん。やはり人間は魔族には勝てないんです。所詮は下等生物。」
クランは懐のステッキから刃を弾き出すと、フォースの胸へと突き立てた。
「貴方には苦しんで死んでもらいますよ。私をここまでコケにした貴方は楽には殺してあげませーん。」
ドレイク姉さんは落ちて来たフォースをしっかり受け止める。
私は回復魔術を……
どうしよう、魔術が発動しない。
さっきのドレイク姉さんとの大技で全て……
「オイ、バカ。アンタ、魔力切れで死にたいんか? 」
フォースさんを一番気にかけているのは姉さんだ。姉さんは回復魔術が使えない。
何としてでもフォースを助けないと。
「ハハハ、実に滑稽。己の無力さを胸に刻みながら、私にジックリと殺されてくださーい。」
再びクランが分裂し始める。
---全快---
懐かしくも心地よい木漏れ日のような暖かみに包まれて、私たちの傷が見る見る修復していく。
青藍の剣に白銀の盾、漆黒の兜に燃えるような赤の鎧。
「アレは…… 」
「「「アスィール!!? 」」」
道化師も、今の状況に混乱している。
彼が今ここにいる。
と言う事は即ち。
「アスピ。遅くなった。後は僕に任せてくれ。」
ドレイク姉さんの最上級水魔術と、私の最上級炎魔術が合わさり、翠色に変色する。
「さぁさぁ、大道化師クランに浴びせられますは、うつしよから生まれし業火と、冥府より流れし嘆きの川。」
「見事耐えることができれば、拍手喝采をお願いします。」
魔王軍の一人、道化師のクラン。
この男がセブンスを誑かして!!
私たちの業火と濁流は、道化の身体を覆い込むと……
次の瞬間、魔術はかき消され、道化師は再び地に足をつけた。
かれこれ、六時間ほど彼に魔術をぶつけているが、一向にダメージを受けている様子がない。
コレも彼の能力、liar clownの能力の一つ。
私の魔力も限界に近く、鼻から温かい液体が垂れて来ているのが感じ取れる。
あれだけ精力旺盛なドレイク姉さんも、目にクマを作って、息を荒げている。
私たちが攻撃の手を緩めたことで、新たなクランが生まれる。
「さぁさぁ、私を殺し続けないと、新たな私が生まれてしまいますよ。」
分裂方式はねずみ算、おそらく一体一体が分身では無く本体なのだ。
殺し続けなければ、クランは増え続け、私たちでは対処しきれなくなる。
前を張っていたフォースも、ガス欠で疲れ果てている。
無理もない。
彼は六時間ぶっ通しで、彼を殴り続けていたのだから。
私たちメイジの比では無いだろう。
「まだ、倒れるわけには。」
「無理は禁物ですよフォースさん。」
「しっかしまぁ、人間ってのは弱いな。」
クランはフォースを指差した。
「なぁ、十二使徒よ? 」
「お前も魔眼持ちにならないか? 」
「私としては不本意なんだがね。魔王様はとても器の大きなお方だ。自分に忠誠を誓う者は、魔族であろうと人間であろうと分け隔てなく力を与えると、そうおっしゃった。」
「お前は、私利私欲を満たす人間と、民のために尽くそうとお考えの魔王様、どちらの味方をするべきだか、もう答えは出ているだろう? 聖職者。」
フォースが両膝をついて項垂れた。
初めてみる彼だ。
それから、地面の砂を力強く握りしめた。
それから静かに語りだす。
「……そうやって、セブンスを唆したのか、この外道。」
「それに、私はもう聖職者では無い。オマエの、お前たちのせいでな。」
「居場所も大切な人間も奪われた。」
「人間たちを恨んでいない事はないし、魔族に悔恨があるわけでもない。」
「だけど。」
「お前は俺を怒らせた、道化のクラウン。」
フォースは歯を食いしばり、私たちに見せたこともないようなクシャクシャの顔に涙を溜めて、クランを睨んだ。
「私が、いつ、貴方たちに何をしたっていうんですか? 全部、全部悪いのは人間の方ではないですか? 自分たちで人間の闇を作り、それを貴方たち十二使徒に押し付けた。人類のそういう要素こそ、この世界に不要な存在だ。彼はソレを正そうとした。己の手を汚し、世界を浄化するために。彼は正しい行いをしたのです。私はソレを手助けした。ただそれだけだ。貴方がすべきは、私に憎悪を向けることでは無く、四大陸の王を殺し、世界を浄化することです。」
「ゴチャゴチャうっせえぞ、御託や方便なら、アイツから嫌と言うほど聞かされたんだよッ。」
フォースの両腕に下げられた棺桶が、粉々に砕け、中から無数の銃口が飛び出る。
「掃除の時間だ。掃除は俺の担当。そうだったよなセブンス。」
彼がトリガーを引いて、激しい炸裂音と共に、鉄の弾丸が、クランたちに襲いかかる。
「激しい断末魔と共に、クランは身体に穴をあけて、チリと化す。」
私たちは側でソレを見ていた。
青空に灰の雨が降る。
「アスピ、身体に浴びるんとちゃうぞ。」
ドレイク姉さんのマントに包まれる。
周りはよく見えなかったけど、フォースの咆哮と、クランの断末魔は絶え間なく続いている。
物静かなフォースさんも、時々激情する事は、あった。
今、この現状を目にして分かった事だけど、フォースさんが本当の意味でキレた事なんて今まで一度もなかったんだ。
暫くして、発砲音も、断末魔も止んで、私は姉さんのマントから外を除いた。
最後の一人となった隻腕のクランと、銃の反動で両手の銃が効かなくなったフォース。
「……ざん…ねん。やはり人間は魔族には勝てないんです。所詮は下等生物。」
クランは懐のステッキから刃を弾き出すと、フォースの胸へと突き立てた。
「貴方には苦しんで死んでもらいますよ。私をここまでコケにした貴方は楽には殺してあげませーん。」
ドレイク姉さんは落ちて来たフォースをしっかり受け止める。
私は回復魔術を……
どうしよう、魔術が発動しない。
さっきのドレイク姉さんとの大技で全て……
「オイ、バカ。アンタ、魔力切れで死にたいんか? 」
フォースさんを一番気にかけているのは姉さんだ。姉さんは回復魔術が使えない。
何としてでもフォースを助けないと。
「ハハハ、実に滑稽。己の無力さを胸に刻みながら、私にジックリと殺されてくださーい。」
再びクランが分裂し始める。
---全快---
懐かしくも心地よい木漏れ日のような暖かみに包まれて、私たちの傷が見る見る修復していく。
青藍の剣に白銀の盾、漆黒の兜に燃えるような赤の鎧。
「アレは…… 」
「「「アスィール!!? 」」」
道化師も、今の状況に混乱している。
彼が今ここにいる。
と言う事は即ち。
「アスピ。遅くなった。後は僕に任せてくれ。」
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