闇堕勇者と偽物勇者

ぼっち・ちぇりー

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次元の腕

魔法について

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 アスピが神父たちに手紙を出すと、彼らは、すぐに孤児院へと飛んできた。
「エシールの準備が出来たようだな。」
「ええ、元々彼の能力は、アスィールの能力とも遜色なかった。腐っても魔王の幹部ってことね。」
「アンタ!!俺を試したのか? 」
「思い上がらないでよ。まぁ、元々アンタが勇者の力を獲得することなんて期待していなかったけど。」
「今、アンタには伝説の勇者が付いている。」
 師匠が最終的にアスィールを昇華させようとした力。
 ソレが今、俺に力を貸していいる。
「んでなぁ、アスピよ。アテはあるんか? アスィールを元に戻す方法が。」
 アスィールは次元の腕でディアストと近しき存在となり、また、次元の腕の力で彼と融合
 このリワンとアスピの説が正しいのなら、まずは師匠が己の力を高めるために登っていた霊山に行くのが先決だろう。
「俺の師匠……マスター・リーが修行をしていたとされる霊山がある。そこに行けば何か分かるかもしれない。」
「アソコには何もなかった。彼の残した遺言と、力を分け与えられた龍以外は。」
「というか、お前が全部抹消したんだろう。エシール。」
 ぐうの音も出ない。
 俺はエシールに自身がスペアである事を知られないために、彼に関する情報一切を焼き払った。
 アソコにあるのは、フォースがマスター・リーの遺言を受け取るために倒した龍の遺骸しかない。
「行こう。みんな。私をそこへ連れて行って。」
 リワン……
 彼女には知る権利がある。
 時詠みの巫女として。
 俺たちをリセットするための人柱として彼女は育てられた。
「私も知りたい。アスィールの能力について。彼の過去についても。」
 アスピは即答した。
 彼女は藁をも掴む気持ちなのであろう。
 ディアストを連れ戻すために彼女は旅立った。
 この仲間たちと共に。
 例え自分が処刑されることになろうとも。
 やっとの思いで辿り着いた彼女は、また掴み損ねた。
「ビギニアでも、マスター・リーについての書物は一切合切が焼き払われていた。」
「ソレもお前がやったのか。」
「いや、王宮の方は……燃やそうとはしたよ。だけど、俺が来る頃には、綺麗にさっぱり丸ごと灰になっていた。」
 フォースは苦虫を噛み潰す。
「アスィールは実験そのものが凍結されたと言っていた。」
 リワンが珍しく頬を膨らませる。
「そうだよ。だから私たちは王宮を追放された。」
「エッちゃんのせいでね。」
「否定はしないよ。俺は自分で自分自身の師匠を殺した。俺が背負うべき業の中で、もっとも重いモノだ。」
 フォースが手を叩く。
「話を戻そう。だとすれば、ビギニアの書庫に、マスター・リーに対する情報が無くなっていたのは、エシールのせいではなく、城の関係者のせいというわけか。」
「………ペンタゴンを脅せば何か出てくるかも知れないな。」
「そう早まらないでダーリン。仮にペンタゴンが書物の廃棄に関わっていたとしても、焼き払われた書物も情報が手に入る見込みは薄いんじゃない? 」
「うむ。」
 神父が海賊にダーリンなんて言われている。
 非常にシュールな絵面だと思う。
「そうだ。ソレに師匠は秘密主義者だった、俺に真実を隠したように。」
「この魔法は危険な代物なんだ。なんかの手違いで、一般人に渡って仕舞えば、俺のような理性堕ちを起こす厄介な人間が増える。」
「書物を残していたとしても、アレは必ず書物を暗号化している。」
「解読できるのは……俺か、リワン姉さんと、王宮に集められたココの孤児のみ。」
 アスピが言葉を挟む。
「ちょっと待って、ソレならプライドの高いアンタならまだしも、王宮がソレを燃やす道理なんてなく無い?一般人に渡っても、解読させるリスクが低いのなら、厳重に管理させて、外交カードの一つとしてストックしとくはず。少なくとも私ならそうする。」
「ビギニア王は解読できていたんじゃ無いかしら。そうじゃ無いと、そんなリスクの高い行動は起こさないと思う。」
「そうならば、マスター・リーの秘密とは別に、何か重要な事柄が書かれていたと考えるのが妥当だな。」
「私聞いたよ、フォース。私たちに隠していることがあるって。」
 アスピが頬を膨らませる。
「イーストランドの語り部に会った時、マスター・リーについての書物をアスィールと一緒に読んだって。」
 フォースは申し訳なさそうに俯く。
「すまない。アスピを邪険にしたいわけではなかった。」
「マスター・リーは創造神アプスーと通じていたって。」
「そこで魔法という魔術とは似ても似つかない超常的な能力を手に入れたと。」
 ドレイクは、両腕を大の字に広げると、地面に倒れ込んだ。
「あー、もう、アンタら憶測ばっかりやんけ。とにかく、お前の師匠とやらの霊山へ行こうや。そこなら、何か分かるかも知れんのやろ? まずはソレからや。」
 彼女のいう通りだった。
 ビギニア王が、師匠の資料を廃棄させた理由。
 俺たちにも知られたく無い何か重要な理由があるに違いない。
 単に、書物を魔堕ちした俺に見せなくないという理由もあったかも知れない。
 だが、そこまで臆病な人間が、伝説の武具の一つを厳重に管理するとは思えない。
 たとえソレが、バロアとの友好の証だったとしても。


      * * *


「ビギニア王、彼らが動き出しましたよ。」
 王宮魔導師は、屈折魔術で、逆賊たちの行動を観察した。
「どうします? 処刑しますか? 」
「いや、彼らは仮にでも世界を救った英雄だ。ここで騒ぎを起こせば、私の立場も悪くなる。刺客を送らなかったのもその理由だ。」
「奴らを冒険者に尾行させろ。なに、アスィールには多額の報奨金をかけている。冒険者たちは血眼になって、彼らの跡をつけるさ。」
 ビギニア王は不敵に笑った。
 
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