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次元の腕
霊山へ
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「なぁ、アスピ? 」
「なぁに? 」
彼女はハァハァと息を荒げながら、険しい山岳を登っている。
無理もない。俺とリワンは、師匠に扱かれていたから、登山には慣れているが、彼女は違う。
「私の故郷のこと、知っているでしょ。バロア城は山城なのよ。」
ソレぐらいは知っている。
だからこそ、神父と海賊が、汗どころか、息一つ挙げていないことに俺は驚愕した。
「で? 話って? 」
彼女の意識を確認するためにしたことだ。
受け答え次第では、先頭の神父たちを止めなければならなかった。
「アスィールの両親は今でも、ノースランドに匿われているんだよな? 」
「うん、アソコの人たちは、アスィールに対して何かと親切だから。」
「なんでかは知らないけど。」
「祠だ。見えてきたぞ。」
上から神父の声が聞こえた。
そういえば、もうすぐ霊山の中腹だ。
中腹には、風化によって山岳が抉り取られた平地が存在する。
「ちょっと休憩しよう、アスピの息が上がっている。」
「すまない。私も焦っているのかも知れない。」
「焦っているのは……私も同じよ。早くいきましょう。」
「だめだ。山を舐めるな。」
おそらく、アスピの息が上がっているのは、彼女が寝不足だということもあるだろう。
彼女は、旅に出るというのに、この数日間も、融合魔術の研究で寝ていない。
目にクマができていた。
神父は、彼女の状態に気づくと、状況を理解したらしく
「野営にしよう。」
と言った。
「フォース!! 」
「知っている。女は、身体がしんどくなる日があると聞いた。」
「アスィールから。」
「しばしの沈黙。」
「なんでやねん。」
海賊が神父を殴った。
「なんで、そうフォースはデリカシーが無いんや。」
「ドレイクが、フォース相手に関西弁になってる。」
リワンがそう呟いた。
「ドレイク姉ぇさ…… 」
アスピは力が抜けたのか、リワンにもたれかかる。
「アスピ、気づかなくてごめん。」
「だから疲れとるだけやっちゅうねん。」
* * *
たっぷり6時間休息を取った後、俺たちは再び山を登り始めた。
そして……
「「「懐かしい。」」」
ある意味、ここは始まりの場所だ。
俺たちにとっては、孤児として拾われて、マスター・リーからその力の断片を受け取った場所。
そして神父にとっては
「全てはここから始まった。アスィールとの長い長い冒険の。」
マスター・リーの遺言を受け取った場所。
教皇から、その任を任されるキッカケとなった。
「中を入念に調べてみよう。何か分かるかも知れない。」
「ほら、エッちゃんも探す。」
「分かったよ。」
自分でしてしまったことに、なんともいえない罪悪感を覚えながら、祠の中へと入ろうとする。
[ファイアー・アロー]
詠唱音。
俺は、火の矢を素手で掴むと、辺りを見渡した。
数は百? いや、千はいる。
冒険者たちか
俺たちは付けられていた、アスピの体調を気にする辺り、その辺のリスクについてのヘッジが丸々抜け落ちていた。
少し考えれば分かることだ。
アスィールの首には多額の報奨金がかかっている。
「アンタらも冒険者だろう? 」
「でなければ、魔王を倒せるわけがねえ。」
その考え方には誤りがある。
というか、現に、俺たちには一人たりとも、冒険者など居ない。
次元の腕を使用した際の因果の縺れによる、女神の拒絶反応、宗教上の理由、処刑するために。
あらゆる理由で俺たちは、女神の加護を受けていない。
倫理観が歪んでいる彼らが、俺たちに何をするか。
ソレは想像力の足りない俺でも容易に想像できた。
[殺すなよ。]
この勇者様は、俺から話しかけても、何も答えないくせに、向こうから用がある時は一方的に話しかけてくる。
「力を貸せ。ふんで俺の呼びかけには答えろ。」
[僕はまだ君のことを信用していない。なんなら態度で示してほしい。]
「俺がいないと、現実に干渉出来ないくせに、随分と上から目線じゃないか。」
[やれやれ、人生の先輩には、少しは敬いの心というものを向けてほしいものだね。]
「[ लुमा]」
俺たちは同時に時空間魔術を発動させると、有象無象へと突っ込んだ。
[竜は使わないの? ]
「あの術は殺しすぎる。」
地面にクレーターを穿ち、冒険者たちを吹き飛ばす。
彼らは死んでも死なない
だから、心持ちか身体が軽かった。
コレは彼に信用してもらうための戦いではない。
自分に対するけじめだ。
巨躯のハルバードが、俺の左頬を掠める。
背筋を使い、大きく身体を逸らすと、同時にばね仕掛けのように、つま先を築き上げる。
巨躯巨大な獲物は吹き飛び、宙を舞った。
瞬間移動し、ハルバードを受け取ると、刃の部分をへし折り、石突を構える。
一人目の戦士の腹を吹き飛ばすと、二人目のソードダンサーの胸ぐらを掴み、泉へと投げる。
三人目の中段水平斬りを、低い姿勢でやり過ごすと、ハルバードをクルクルと回して足元を掬う。
振りかぶった斬り下ろしのシルエットを時空壊で強化した身体で避けると、飛び散った岩のカケラを蹴飛ばして、こめかみにぶち当てる。
四方八方から襲いかかってきた前衛職をハルバードで弾き返すと、そこへ詠唱の終わった魔術師たちが集中砲火を喰らわせる。
--- 燠見---
可視光線を越えて、魔力の本質を視る。
ギガ・ファイアーを弾き、コキュートスをディスペルする。
続くギガエルダーを空高く打ち上げると、太陽の陽によって浄化する。
サイクロンを、ハルバードで、綿飴のように絡めとると、その他諸々の魔術を巻き込む。
そのまま魔術師諸共を吹き飛ばす
その間、カンマ一秒。
彼らには、おそらく何が起きていたか分からないだろう。
サイクロンに巻き上げられた俺はゆっくりと地面に着地すると、一緒に巻き上げられた魔術師を出前のように重ねた。
彼らを床に寝かせると。
<救助求む>
という看板を、分かりやすい位置に突き立てた。
コレで運び屋たちの、仕事も捗るであろう。
「貴女がやらなくても、私たちがやったのに。」
「俺のケジメだよ。」
アスピとハイタッチしてから、唖然としている神父の肩を叩く。
「ぼーっとしてないで行くぞ。」
「全員生きている。」
そういや、神父は神父だったな
なんて当たり前のことが脳裏に浮かんだ。
こんな破戒僧が神父だなんて世も末だぜ。
俺たちは、今度こそ、師匠の作った祠へと入った。
「なぁに? 」
彼女はハァハァと息を荒げながら、険しい山岳を登っている。
無理もない。俺とリワンは、師匠に扱かれていたから、登山には慣れているが、彼女は違う。
「私の故郷のこと、知っているでしょ。バロア城は山城なのよ。」
ソレぐらいは知っている。
だからこそ、神父と海賊が、汗どころか、息一つ挙げていないことに俺は驚愕した。
「で? 話って? 」
彼女の意識を確認するためにしたことだ。
受け答え次第では、先頭の神父たちを止めなければならなかった。
「アスィールの両親は今でも、ノースランドに匿われているんだよな? 」
「うん、アソコの人たちは、アスィールに対して何かと親切だから。」
「なんでかは知らないけど。」
「祠だ。見えてきたぞ。」
上から神父の声が聞こえた。
そういえば、もうすぐ霊山の中腹だ。
中腹には、風化によって山岳が抉り取られた平地が存在する。
「ちょっと休憩しよう、アスピの息が上がっている。」
「すまない。私も焦っているのかも知れない。」
「焦っているのは……私も同じよ。早くいきましょう。」
「だめだ。山を舐めるな。」
おそらく、アスピの息が上がっているのは、彼女が寝不足だということもあるだろう。
彼女は、旅に出るというのに、この数日間も、融合魔術の研究で寝ていない。
目にクマができていた。
神父は、彼女の状態に気づくと、状況を理解したらしく
「野営にしよう。」
と言った。
「フォース!! 」
「知っている。女は、身体がしんどくなる日があると聞いた。」
「アスィールから。」
「しばしの沈黙。」
「なんでやねん。」
海賊が神父を殴った。
「なんで、そうフォースはデリカシーが無いんや。」
「ドレイクが、フォース相手に関西弁になってる。」
リワンがそう呟いた。
「ドレイク姉ぇさ…… 」
アスピは力が抜けたのか、リワンにもたれかかる。
「アスピ、気づかなくてごめん。」
「だから疲れとるだけやっちゅうねん。」
* * *
たっぷり6時間休息を取った後、俺たちは再び山を登り始めた。
そして……
「「「懐かしい。」」」
ある意味、ここは始まりの場所だ。
俺たちにとっては、孤児として拾われて、マスター・リーからその力の断片を受け取った場所。
そして神父にとっては
「全てはここから始まった。アスィールとの長い長い冒険の。」
マスター・リーの遺言を受け取った場所。
教皇から、その任を任されるキッカケとなった。
「中を入念に調べてみよう。何か分かるかも知れない。」
「ほら、エッちゃんも探す。」
「分かったよ。」
自分でしてしまったことに、なんともいえない罪悪感を覚えながら、祠の中へと入ろうとする。
[ファイアー・アロー]
詠唱音。
俺は、火の矢を素手で掴むと、辺りを見渡した。
数は百? いや、千はいる。
冒険者たちか
俺たちは付けられていた、アスピの体調を気にする辺り、その辺のリスクについてのヘッジが丸々抜け落ちていた。
少し考えれば分かることだ。
アスィールの首には多額の報奨金がかかっている。
「アンタらも冒険者だろう? 」
「でなければ、魔王を倒せるわけがねえ。」
その考え方には誤りがある。
というか、現に、俺たちには一人たりとも、冒険者など居ない。
次元の腕を使用した際の因果の縺れによる、女神の拒絶反応、宗教上の理由、処刑するために。
あらゆる理由で俺たちは、女神の加護を受けていない。
倫理観が歪んでいる彼らが、俺たちに何をするか。
ソレは想像力の足りない俺でも容易に想像できた。
[殺すなよ。]
この勇者様は、俺から話しかけても、何も答えないくせに、向こうから用がある時は一方的に話しかけてくる。
「力を貸せ。ふんで俺の呼びかけには答えろ。」
[僕はまだ君のことを信用していない。なんなら態度で示してほしい。]
「俺がいないと、現実に干渉出来ないくせに、随分と上から目線じゃないか。」
[やれやれ、人生の先輩には、少しは敬いの心というものを向けてほしいものだね。]
「[ लुमा]」
俺たちは同時に時空間魔術を発動させると、有象無象へと突っ込んだ。
[竜は使わないの? ]
「あの術は殺しすぎる。」
地面にクレーターを穿ち、冒険者たちを吹き飛ばす。
彼らは死んでも死なない
だから、心持ちか身体が軽かった。
コレは彼に信用してもらうための戦いではない。
自分に対するけじめだ。
巨躯のハルバードが、俺の左頬を掠める。
背筋を使い、大きく身体を逸らすと、同時にばね仕掛けのように、つま先を築き上げる。
巨躯巨大な獲物は吹き飛び、宙を舞った。
瞬間移動し、ハルバードを受け取ると、刃の部分をへし折り、石突を構える。
一人目の戦士の腹を吹き飛ばすと、二人目のソードダンサーの胸ぐらを掴み、泉へと投げる。
三人目の中段水平斬りを、低い姿勢でやり過ごすと、ハルバードをクルクルと回して足元を掬う。
振りかぶった斬り下ろしのシルエットを時空壊で強化した身体で避けると、飛び散った岩のカケラを蹴飛ばして、こめかみにぶち当てる。
四方八方から襲いかかってきた前衛職をハルバードで弾き返すと、そこへ詠唱の終わった魔術師たちが集中砲火を喰らわせる。
--- 燠見---
可視光線を越えて、魔力の本質を視る。
ギガ・ファイアーを弾き、コキュートスをディスペルする。
続くギガエルダーを空高く打ち上げると、太陽の陽によって浄化する。
サイクロンを、ハルバードで、綿飴のように絡めとると、その他諸々の魔術を巻き込む。
そのまま魔術師諸共を吹き飛ばす
その間、カンマ一秒。
彼らには、おそらく何が起きていたか分からないだろう。
サイクロンに巻き上げられた俺はゆっくりと地面に着地すると、一緒に巻き上げられた魔術師を出前のように重ねた。
彼らを床に寝かせると。
<救助求む>
という看板を、分かりやすい位置に突き立てた。
コレで運び屋たちの、仕事も捗るであろう。
「貴女がやらなくても、私たちがやったのに。」
「俺のケジメだよ。」
アスピとハイタッチしてから、唖然としている神父の肩を叩く。
「ぼーっとしてないで行くぞ。」
「全員生きている。」
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