神の壜(カミのフラスコ)

ぼっち・ちぇりー

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極東

星詠みの魔女

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 昼に、槍馬が極東で最近流行り出した小麦粉を焼いたスポンジのような生地に肉の塊を挟んだ食べ物を持ってきて、夜にはまた弁当を持って来てくれた。
 そうして二日目は何事も無かったかのように過ぎ去る。
 太陽が沈み、月が昇り、次の日、極東の入り口に、マントを羽織った一人の女が現れた。
 顔はフードで見えないが、手は透き通るような白で、唇はというと、林檎のように赤い。
「放浪商人をやっていたのですが、食糧が尽きてしまって。中に入れていただけますか? 」
 俺は遠目から門番と女のやりとりを訝しそうに見ていた。
「通行書の無いものは通さないのがルールだ。コレも極東の治安維持のため、理解されよ。」
 もう一人の門番も彼女に質問を投げかける。
「放浪商人だと。何を売っておる? 針か? 花か? 火打ち石か? 商品を見せてみい。」
 その言葉を聞くと女は頬を赤らめて答えた。
「嫌だ門番さん。私に脱げとそうおっしゃるのですね? 」
「どうか通して頂けませんか? 今日の夜はサービスしますから。」
 色香にあてられた門番たちが道を開ける。
 羅城門を通ろうとした女を俺は引き止めた。
「おい。」
 アイツらがエクスタシーに浸るとかそう言うことはどうでも良いが、極東にも遊女規制法というものが存在する。
「おい、ガキィ。空気読めよ。」
「アンタらも気をつけた方が良いぜ。極東に叛くと俺みたいになる。」
 これ以上違反指数を増やすことは出来ない。
 コレが発覚すれば今度は二週間どころでは済まない。
 それゆえに俺は目の前の違反行為を見逃すことが出来なかった。
「…ァーラビット。」
 彼女がフードの内側で呟く。
 俺の視界から彼女が一瞬にして消え去った。
"クソッタレ!! "
 俺は銃鬼を側頭に当てて、引き金を引くと、走りながら長っらしい詠唱を開始する。

____The thing seen in this world is slower than me……


 視界が収縮し、やがて薄い赤色のみが残る。
 真紅の二対の眼で逃げた女を捉えると、凛月を取り出し、コイルを操作して、彼女へ向けて小太刀を飛ばす。
「カンッ。」
 小太刀は乾いた音を立てて弾かれる。
"防御魔術? "
 極東の物ではない。
 奴はマントから右手を振り払い、火の鳥を飛ばしてくる。
 ファイアー・バードだ。
 極東の物ではないが、見慣れた術式。
 聖が使うそれだ。
 俺はそれを銃鬼で打ち消すと、彼女は続けて氷の刃や、風の虎、雷の黒馬を飛ばして来た。
 俺はそれらを凛月で全て弾き返すと、女が建造物の壁を登り、屋上へと姿を消したのを見る。
 磁場を形成して、壁に張り付き、そのまま登り始めた。
 屋上に身を乗り上げると、女が当然のように立っていた。
「鬼ごっこはもう終わりか? 」

 ---the blade of world end---

 彼女はその言葉と共に、マントを脱ぎ捨てた。
「初めまして台与鬼子さん。」
 彼女の首に刻まれた星座のマーク。
「不死の星詠みか。こんな辺鄙なところに何しに来た? ユーは何しに極東へ? 」
「貴方ね。カーミラを超電磁砲で吹っ飛ばしたっていうのは。」
 カーミラ……誰のことか分からなかったが、先日、ウボクに行ったときに戦った貴族みたいな奴のことだと理解して言葉を返した。
「そりゃーわざわざ危険を冒してまで俺に会いに来てくれたわけか。感動的だぜ。」
「一度会ってみたかったのよ。」
「カーミラの胸に風穴開けた人間のご尊顔をねぇェェ。」
 屋上に剣の雨が降る。
 異変に気づいた下層の住人がベランダから飛び出すと、俺たちに罵倒を浴びせようとする。
「バカ!! 出てくるな!! 」
 背中に雷核を展開し、男を覆うように深き渓谷へとダイブした。
「バカな男……。」
 背後で俺を憐れむ声が聞こえる。
---hydraウォーター・ドラゴン---
 俺は横目で背中から迫ってくる水龍を見た。
 二対の眼が俺をガッチリと捉え、飲み込まんとしている。
 回避するにも、蹴り上げる足場が見つからない。
「ハメられた。」
 俺はそのまま地面へと叩きつけられた。

 
 
 
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