神の壜(カミのフラスコ)

ぼっち・ちぇりー

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聖の国

姉妹喧嘩

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「父の力は、元々私が継承するはずだった。」
 俺は美奈の方を見た。
「そうだよお姉ちゃん。あの時、アイシャさんが来なかったから、カーミラと四人で楽しく暮らせていた。」
「カーミラの名前を出さないで!! 」
 セイはラッパのベルから槍を引き抜いた。
 美奈もそれに呼応して、錫杖を握る。
「なんでアンタは私の前に立つの? アンタも被害者でしょ? 」
 セイが美奈を糾弾する。
「ええ、お姉ちゃん。代行者たちは酷い人間だわ。」
「ったら何で私の前に立つの? なんで私の邪魔をするのよ!! 」
 彼女は深呼吸をする。
 俺も息を呑んだ。
 しばしの沈黙。
「お姉ちゃんが慎二のことを虫ケラって言ったから。私はそこに我慢できなかった。」
「なんで? あの下等生物に肩入れするの? なんでアイシャを助けたの? 」
「慎二はを助けてくれた。私を傷つけないように、幼馴染を演じてくれたから。」
 美奈が急に俺の方を見たのでビックリした。
「慎二? 私ね知ってたんだよ。慎二が本当は幼馴染じゃ無いってことを。」
 俺はむず痒くなった。
「やっぱり俺じゃ無理だったな。」
 彼女は微笑む。
「だって嘘つくの下手だし。」
 セイが叫んだ。
「私の復讐の邪魔をするっていうのなら、容赦はしないわよ。」
「たとえそれが妹だとしてもね。」
 俺は立ち上がる。
 ようやく身体が回復してきたからだ。
 美奈には「手を出すな」と言われた。
 が、ここで見ているだけというのも野暮だろう。
「美奈、俺もお前の力になりたい。」
「ちゃんとついてこなきゃダメだよ。神々の戦いに。」
---時空壊クロック・アウト---
 本日三回目の身体強化。
 身体も相当応えており、胸が痛い。
 だが不思議と苦しくは無かった。とても心地よい痛みだ。
 俺はセイとの距離を一瞬にして詰めると、叫んだ。
「こい!! 凛月ッ。」
 俺の両手に馴染みのある武器が現れる。そのまま体をくねらせて未知呪術を発動させる。
---紅電レッド・スプライト---
「ゴーン。」
 突如、鐘のような音が鳴り、術式が掻き消される。
 脳内イメージが無理やり塗り替えられた。
 赤みを帯びていた凛月が光を失う。
---Longinus確認の槍---
 今度は逆に彼女の光り輝く槍が俺を貫かんとする。
「シャッシャッ。」
 錫杖の音が聞こえると共に、俺と彼女の間に、見えない壁が生成される。
 が、ロンギヌスのエネルギーの余波を受け流すことなく直接受けた俺は、大きく後ろにノックバックした。
「いっつも一人で出しゃばるんだから。」
 そう言って美奈が俺に手を差し出す。
「悪いな。」
 俺は彼女のその手を握ると、美奈に槍で斬り下ろそうと振りかぶっているセイに向けて回し蹴りを放った。
 今度は手応えがあった。
 美奈とセイの防御術式で分かることは一つ。
 防御性能が高すぎて、空中では攻撃を受け流すことが難しいということだ。
 俺はそれを逆手に取って、セイのを蹴り飛ばした。
「やってくれるわね……」
 俺は止まらない。
 凛月のチャクラムに力を込めた。
 フレミングの法則を使い、自らぶっ飛ぶ。
 そしてセイ向けて渾身の突き攻撃を繰り出した。
---紫電ー雷閃シデン・ライセン---
 紫色に光るチャクラムを彼女へと押し込む。
「うおおお!! 」
 そのまま地下空洞の柱へと叩きつけた。
 柱を砕き、次の支柱にもう一度叩きつける。
 俺の作戦に気がついたのか、セイが防御術式を解除し、逃げ始める。
 神族の彼女から、鮮血が流れ始めている。
 そこに詠唱を終えた美奈が、最後の大技を放つ。
---अमिताभ無量光明---
 彼女の額が光り、両手から溢れんばかりの光が放出される。
 その光は数キロ先の地下空洞の壁を抉ると、そのまま世界をくり抜いた。
 アミターバが開けた穴から星が見える。
 が、セイは傷ひとつついていなかった。
 いや、俺が彼女につけた傷すら、完治している。
「ダメでしょレン? 」
"美奈のエネルギーをそのまま吸収したのか? バケモノめ!! "
 彼女は小指でラッパを引っ掛けて手に持つと、勢いよく吹いた。
「ブォーン。」
 不気味な音色。
 その音色共に、中から無数のイナゴが飛び出した。
 イナゴたちは俺にまとわりつくと、俺の肉を食らう。
「ぐあ"あ"あ"あ"。」
 俺の左半身に再び灰化が始まる。
---慎二!! しっかりして!! ---
---起きるのじゃ慎二!! ---
---オイ、ガキっしっかりしろ---
 俺の魔具たちの声が徐々に遠のいていく。
 美奈が必死にイナゴを払っているのが、うっすらと見える。
 俺は立ったまま意識を失った。
 

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