神の壜(カミのフラスコ)

ぼっち・ちぇりー

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亡霊共

サイボーグ

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「はカ…逃げろ!! 」
 俺は思わず叫んだが、声にならない。
「逃げてどうする? 」
 克二はスナイパーライフルを捨て去ると、右腕のボタンを押し、二の腕からナイフを取り出した。
"そういえば……あんなデカい銃、どこに隠し持っていたんだ? "
「上からは、技術の漏えいを防ぐために、交戦は避けろって言われてだけどよ。」
「徐々に極東も聖に追いつきつつあんのよ。」
「科学技術でな。」
 ラレオの右腕が炭素によって補完される。
 しかし、銀の鎧が再生することは無かった。
「対神聖術師装備、羊喰バッファロー・イーター。」
「なるほど!! 面白え。これは捕まえてセイ・ボイドに報告だな!! 」
 ラレオが体にダイアモンドを宿し、そのまま克二に襲いかかった。
---んがぁ---
 克二が口を開けると、中から炎が放出される。
 しかし、ラレオも止まらない。
 捨て身覚悟で突っ込んでいった。
 銀の剣を口に咥え、克二に飛びかかる。
「こーなっあら、おまえのかあだごおへんあんしてある。」
 克二が剣を避けた隙に、ラレオが克二の身体に触れようとする。
 いくら聖と渡り合う武器を持っていようとも、生身の人間が、呪術に耐性があるとは思えない。
「避けろ!! 」
 克二は避けない。
 ラレオの手が克二に触れる。
 そして克二から体の炭素だけを引き摺り出そうとしていた。
「ん?ぐっ? 」
 右手が怪しく光っている。呪術が発動していることは確かなんだ。
 しかし、克二の身体が崩れ去ることは無い。
「何がどうなって嫌がる? 」
 克二は自分の体全てを、極東のに置き換えているのか?? 
「生身の人間からこんな化け物が作れるなんて、各国からは喉から手が出るほどの技術だろうな。」
 克二は、超加速した右脚で、ラレオを蹴り飛ばした。
 が、さすがの能力者だ。咄嗟に彼は金剛で身体を固め、倒れないようになんとか踏ん張る。
 それを克二が追いかける。
 ラレオの顔に恐怖が浮かぶ。
「何がどーなっていやがる。おまえは人間じゃ無いのか? 」
「さぁな。人間か機械か。」
 逃げるラレオの右腕を掴み、反対側に投げ捨てる。
 彼は背中から地面に落とされる。
 続いて百烈脚、時空壊を発動させている俺にも見えない速さだった。
 彼は身体をミンチにされて、白目を剥いてなお蹴られ続けている。
「仲間の恨み!! キッチリハラさせてもらうからな。極東を舐めたらどーなるか!! おもいしれ!! 」
 銅像が砕け、俺の身体に再生が始まる。
 俺はラレオを蹴り続けている克二を止めた。
「おい、もう良い。おまえの身体の件は後で聞くとして、ズラがるぞ。隠密は全員助け出した。」
 克二も正気を取り戻したようで、スナイパーライフルを飲み込むと、出口へ向けて歩き出した。
「いっけねえ、悪いな俺としたことが、取り乱していたぜ。隠密の基本その壱『どんな時でも冷静に。』だったな。」
 早く克二達を外に連れ出さなくては。
 この大陸には、ラレオよりヤバいやつが、二人、いやもしかしたら三人いるかもしれない。
「お、やっぱり生きていやがったか。まぁ極東が易々とお前みたいなカードを切るとは思わなかったし、俺の読み通りといえば、読み通りなんだが……」
 その声は……忘れるわけが無かった、丹楓村を襲った張本人、メリゴ大陸遠征で、俺たちの前に立ちはだかったワーナキング。
 俺は思わず克二を突き飛ばした。
「おい!! どーいうつもりだ慎二!! 」
「安心しろよクソ野郎。俺が興味を持っているのはお前だけだ。」
 克二も彼のそのオーラに当てられて、身体が固まっている。
 それから背を向けて逃げ出した。
「分かった、隠密達を外へ逃すのを優先する。」
「さっきはありがとな。助かった。」
「ああ、死ぬなよ慎二。」
 ドミニクは丁寧にも、隠密達が逃げ出すのを待っていた。
「アイツらは囮だ。お前をつりだすためのなっ。」
「ふん、死んだ奴のためにここまでするとは、健気なこったね。」
 その言葉を聞くと、彼は頭を抱えて笑い出した。
「フフフ……ハハハハ。そうだ、そうだ、俺は今ここでお前を殺すために生き返った。セイ・ボイドの『魔法術』でな!! 」
 魔法術、文献で読んだことがある。人智を超えた神族のみに許された術式。
 この世の法則を書き換える大禁呪。
「こんな気持ちは初めてだ。またお前に会えるなんてな。」
 背筋が凍るような感覚。
 彼は本気で俺に殺意を向けている。
 が、しかしネットリとしたその眼差しには吐き気すら催した。
「消えろ死に損ない!! 」
「死に損ないはお前も一緒だろ台与鬼子。 」
「さぁ、『亡霊同士』殺し合おう。その命尽きるまで。」


 

 
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