神の壜(カミのフラスコ)

ぼっち・ちぇりー

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亡霊共

カタルゴの呪術使い

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 門扉を足で蹴飛ばし、大声を上げる。
「たのもー。」
 出来るだけ注意を引かせる。
「誰だ? 」
「クスリは止めろと……」
「違う、酔っ払いでもハシシでもねえ。侵入者だ。」
「おい、アイツだ。今アレクスが追っている。」
「命知らずの奴め、あのシラフ顔を、真っ赤にしてやれ!!リキュールみたいによ!! 」
 黒服の男が次々と俺に襲いかかってくる。
 が、園内は入りんで迷路のようになっているので、うまく逃げ回ることが出来た。
 俺はジャンプし、庭園迷路の壁に登る。
 俺を追いかけ、脚に手をかけようとしている筋肉やろうを足で蹴飛ばすと、よじのぼろうとしている細身の男の顔を蹴飛ばす。
 自体を理解した黒服たちが徐々に、庭園の壁の上へと登り始める。
 左右と後ろから黒服が俺を捕まえようとしている。
 前方では壁が途切れていた。
 俺はジャンプすると、黒服の頭を踏み台に、向こう側へと飛び乗る。
 着地し再び屋敷の中へと走り出す。
 後ろで黒服たちがドミノ倒しになっていた。
 俺の錯乱のお陰で、克二は無事、館内に潜入できたようだ。
 黒服たちの死角からこちらに手を振っている。
 俺もラレオを倒すべく、屋敷の両開き扉を足で蹴飛ばす。
 そこへ、仮眠をとっていた例田が慌てて通信を繋げてくる。
<むにゃ~っ……えっ何? 緊急事態? >
 俺が廊下を走り、個室から出てくる黒服を五人ほど始末している間、彼女は何が起こったのか分からず、唖然としていた。
<ちょっとちょっと強行突破は、らめぇ!! >
「へッ、全員始末しときゃーサイレントキルだ!! 」
[敵襲!! 敵襲!! 侵入者一名、緑色のとんがりキャップに緑色のロープ。スナ0キン。従業員たちは、速やかに戦闘体制に入り、侵入者を始末せよ。]
<何やってんのよ~どーしてくれんのよ!!今月は主婦・三種の神器を通販で買って、財布が厳しいってのに。>
「知るか、こちとら命張ってんだ。」
 端末が激しく震えた。
<命張ってんだ!! じゃ無いでしょうが!! 隠密しろよ隠密!! こちとら、アンタの命を心配して言ってあげているんでしょうが!! >
「あー、もううっセーよ。生活とか国際情勢とか……どーにでもなりやがれ!! 」
俺は左から来たショットガン持ちを左足で蹴飛ばし、右から来たトゥーハンドの顔に凛月の小太刀をお見舞いする。
 そのまま、ジャンデリアに凛月を引っ掛けると、ターザンし、最後の大扉へとたどり着いた。
 着地の余韻に浸ることもなく、再度扉を蹴飛ばす。
 中では、美女に囲まれている首領の顔があった。
 男が抱いていた女を逃すと、俺は口を開く。
「へー随分と豪勢な暮らしをしたいるじゃないか。金脈がよほど儲かっているようだな。」
 ラレオは立ち上がると、不敵に笑った。
「金だけじゃない、ダイアモンドもだ。」
「なるほどな。道理で反グランディルに軍資金を出せるわけだ。」
 彼は指をポキポキ鳴らす。
「なぁ小僧。大人を怒らせたらどうなるかを教えてやるよ。」
 赤い絨毯がたなびき、ラレオが消える。
 だが彼の動きを俺は目で捉えることが出来た。
 俺も瞬時に左側へ移動し、彼の小手を避ける。
 振動で地面が揺れ、フローリングがささぐれる。
 彼の手首から先が、光源を反射し輝く。
 俺の姿を目で捉えるなり、身体をバネのように縮ませると、勢いよく飛び上がってくる。
 俺は彼の体が、黒化していることを目視し、彼の能力を推察する。
---獄炎ゴクエン---
 試しに銃鬼で呪術を放った。
 彼を纏っていた、光沢も、黒い物体も、跡形もなく消えてしまった。
 バックステップ、燃える衣類を手で払うと、身体とは裏腹に涼しい表情をこちらに浮かべる。
「なるほど、カンが良いのか。」
 間違いない、彼の能力は炭素操作だ。黒澄と似たようなものだろう。
 彼は関節に異常がないか確認すると、再び構えた。
「だがなボウズ、毎回命を落としてから拾うようなやり方じゃ自分より強いやつに勝ち続けることは難しい。」
 彼が両手を振り上げると、両腕に雷が宿った。
「ここがお前の終着点だ。」
 明らかに戦い方が変わった。
 彼は俺の能力が火炎使いだとそう断定したはずだ。
 ここで攻撃の主軸を凛月へと変える。
 俺は彼の拳を避けながら、銃鬼で側頭を撃った。
---時空壊クロック・アウト---
 心拍数が急激に上昇し、世界が引き伸ばされる。
 そしてラレオの迸る拳を、凛月でガッチリ捉え、こちらに流れ込んでくる電気の本質を読み取った。
「なるほど、備蓄炭!! 」
 さっきとは違い、通電性のある物体。
 ラレオから送られてくる電流を凛月の電流で押し返す。
---雷刃ライジン---
 奴の腕がショートし、黒煙を上げている。
「エレクトロマスターか。俺の能力とは、ちと相性が悪い。」
 そういうと、彼は背中から十字架を取り出して、柄を引っこ抜く。
 すると、中から銀色に輝く刀身が現れた。
 俺はその輝きに戦慄する。
「バレてないと思ったか? 」
 彼が、対魔の剣を所持していると言う事実。
 それはつまり、俺が人ならざるものであると言う事がバレている。
「こういうのはあんまり柄じゃねえんだがな。俺もちと人外を生身で相手にすんのは堪えんだわ。」
 刀身を額に当てて祈る。
 彼の周りに光り輝く精霊が現れ、彼を包み込んだ。
 こんな大層なモノ、人間には作ることが出来ない。
 セイはカーミラと交戦することも考えていただろう。
 なら、鬼や吸血鬼に対するなんらかのメタを貼ってくることは想像しておくべきだった。
「拳銃のような呪具に、鎖付きのチャクラム……お前、台与鬼子だろ。」
 彼は、さっきの数十倍で距離を詰めてきた。
 俺が彼と出来るだけ距離を保ちながら、凛月を鞭のように使い、銃鬼でなけなしの牽制をする。
 少し近づいただけで力が持っていかれる。
<慎二、逃げて!! >
 さっきまでカンカンだった上官も、俺のピンチで取り乱している。
「出来るならやってますよ。」
 だがここで引くわけには行かない。
 せめて、克二たちが屋敷の外に逃げ切るまでは、持ち堪えなくては。
 生き物のように畝る凛月の鎖を高速で交わし、銀の剣でかき分けながら、こちらに接近してくる。
 接近戦ではこちらの部が悪い。
 重くなっていく身体。
 近づかれると、そうなるほどに、ヤツと距離を取ることが難しくなる。 
 ついに奴の斬撃が俺の頬を擦り、その箇所が灰化する。
 母親を思い出し、死が近くなっていることに、背筋が凍る。
 すると彼は左腕でボディーブローをかましてきた。
「がっ。」
 だが吹っ飛ばされたことにより、こちらにも猶予が生まれる。
---雷神砲ライジンホウ---
 声帯を絞り出し、右腕から未知術を捻り出した。
 が、それも、彼の周りを回っている精霊によって軽減され、鎧にはあまりダメージが届かない。
 それを良いことに、彼は避けるそぶりを見せることなく、俺に突っ込んできた。
 俺が壁に叩きつけられるよりも早く俺に追いつくと、顔を鷲掴みし、壁に叩きつけてくる。
 後頭部に物凄い痛みを感じると、目の前で崩壊する壁が通り過ぎていく。
 二、三回壁に叩きつけられ、そのまま中庭へと放り出される。
 そして剣を構えた銅像へと叩き落とされた。
 銅像の剣が胸に背中から刺さる。
 俺はそのまま地面までズルズルとはたき落とされた。
 ラレオが地面に着地し、手を払っているのが見える。
 俺の身体は銅像に貫かれ、手足と首だけになっていた。
 手足を動かして、起きあがろうとするも、引っ掛かって取れない。
「生き標本だ。なかなか芸術的だとは思わないか? 」
「身体が無いがな。」
「それもそうだ。」
 彼は銀の剣を逆手に持ち、俺の顔の上に持ってきた。
「じゃあな台与鬼子、今度は本当に殺してやる。」
「パンッ。」
 乾いた爆発音。
 それと共に、ラレオの右腕が、鎧ごと吹き飛んだ。
「チッ、邪魔が入ったか。」
「おいおい、大口叩いていた割には随分と苦戦してるじゃねえか。」
 仲間を逃すことに成功した克二だ。
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