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亡霊共
源克二
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克二とは、訓練兵時代の旧友である。
「ってかよ。なんだぁその格好。」
「変装だ。吟遊詩人。女性陣の特注だ。」
「ええ……」
彼は真剣な顔になる。
「よくここが分かったな。」
「俺の索敵に引っかかりたくなかったら、アルミ箔でも頭に巻くんだな。」
が、それをされていたら、恐らく場所を特定する事は出来なかったであろう。
「てかお前、観戦武官になるんじゃなかったのか? なんでこんな危ない仕事をしてんだよ。」
彼は黙り込む。
それからポツリポツリと話し始めた。
「観戦武官じゃダメだったんだ。」
「あの時のスピード感、ボイラーの破裂しそうな音、手汗握るカーチェイス……」
「もう俺は刺激なしじゃ生きられなくなったんだ。お前のせいだぞ慎二。今、この一瞬にも、誰かが俺を殺しにくる。そうだセイ・ボイドだ。グランディルから逃げ出したセイ・ボイドだ。」
彼は極東の血生臭い沼にどっぷりハマっていた。
「他の仲間たちは? 」
「みんなラレオって言う反乱軍のリーダに捕まっている。場所は知っている、仲間から緊急通信が来たからな。慌てて極東に繋げようとした時、俺も捕まった。」
「場所を見してくれ。」
「ふむ、ここからさらに南、喜望峰辺りだな。歩いたら一週間はかかる。」
克二は手を打った。
「そのことなら、俺たちが森に隠した極東の電動馬がある。バッテリーは切れているかも知れないが……」
「なるほど、俺の未知術が有れば、馬を復活させられるわけか。早速やろう。」
(フラッ)
俺は足がふらついた。
「大丈夫か慎二? 」
「悪い、極東には昼に出たはずだったんだけど、その時間、メリゴは日が出て無かったみたいで、そこから夜行貿易船で真っ昼間に、ここまで来て……ええっと時間の感覚が分からなくなっちまったんだ。」
「なんだよ時差ボケか? 」
メリゴ大陸遠征の時は、大きく北に迂回していたため、そんなに気になる事は無かったが、今回は世界の裏側まで一っ飛びしたわけだ。
出発したのが朝五つで、今は十三時間ぐらい経っているので、夜五つくらいってところか。
「仮眠は必要か? 」
「いや、これぐらい慣れっこだ。電気馬のところへ行こう。
俺たちは小屋を出ると、クリアリングをし、森の中へと駆けて行った。
そこで草木を嗅ぎ分けながら、ヤドリギがぐるぐる巻きになっている電気馬を見つけた。
「ありがとう、ここまでで良い。と言いたいところだが……」
俺は少しここで考えた。
セイ・ボイドが情報源をおいそれと祖国に返してくれるだろうか?
克二はまた拘束されるか抹殺、うまくメリゴに逃げ込めたとしても、ワーメリゴンに危険が及びかねない。
「例田さん? 」
<はーい例田です。要件はなんですか手短にお願いします。今機嫌がものっ凄く悪くて、胃がキリキリ痛んでおかしくなりそうなので。>
「なんだせ……」
俺は克二の口を噤む。
「あー、源克二を救出したのですが、バイタルは安定しているのですが、人をヨコしてくれるのでしょうか? 」
<あーもー、次から次へと聞かないで!! とりあえず源克二一等兵を護衛しながら、他の隠密がいる場所へと向かってくれるかしら。>
「だそうだ。しばらくの間、宜しくな。」
そう言うと、克二は電気馬にヒョイっと跨る。
「なら運転は俺がするよ。お前はバッテリーの方を頼む。」
「すまんな。」
「なんかこうしていると、訓練兵時代を思い出すな。」
訓練兵時代、俺たちはペアで実技を受けることになった。
「一緒に馬田上官を追い回したっけな。懐かしいな。」
俺たちは最寄りの市場で食料と水を買ってから、南を目指した。
木々生い茂るジャングルを抜けると、木々は徐々に極東で見るのと似たようなものに変わっていく。
広葉樹林を抜けると、低木の多いサバナへと変わり、果てには草木の一本も生えない砂漠へとたどり着いた。
「ここか。」
「いかにも」と言う場所である。
「そうみたいだ、こうも露骨にあるとはな。」
ここで通信が入る。
<桐生慎二二等兵は強襲、源克二一等兵は、組織内の錯乱と捕まった人たちの解放をお願い。>
「「了解」」
「また捕まんじゃねえぞ。」
俺の言葉に、克二が薄ら笑みを浮かべた。
「そん時はまた助けてくれよな。」
「ってかよ。なんだぁその格好。」
「変装だ。吟遊詩人。女性陣の特注だ。」
「ええ……」
彼は真剣な顔になる。
「よくここが分かったな。」
「俺の索敵に引っかかりたくなかったら、アルミ箔でも頭に巻くんだな。」
が、それをされていたら、恐らく場所を特定する事は出来なかったであろう。
「てかお前、観戦武官になるんじゃなかったのか? なんでこんな危ない仕事をしてんだよ。」
彼は黙り込む。
それからポツリポツリと話し始めた。
「観戦武官じゃダメだったんだ。」
「あの時のスピード感、ボイラーの破裂しそうな音、手汗握るカーチェイス……」
「もう俺は刺激なしじゃ生きられなくなったんだ。お前のせいだぞ慎二。今、この一瞬にも、誰かが俺を殺しにくる。そうだセイ・ボイドだ。グランディルから逃げ出したセイ・ボイドだ。」
彼は極東の血生臭い沼にどっぷりハマっていた。
「他の仲間たちは? 」
「みんなラレオって言う反乱軍のリーダに捕まっている。場所は知っている、仲間から緊急通信が来たからな。慌てて極東に繋げようとした時、俺も捕まった。」
「場所を見してくれ。」
「ふむ、ここからさらに南、喜望峰辺りだな。歩いたら一週間はかかる。」
克二は手を打った。
「そのことなら、俺たちが森に隠した極東の電動馬がある。バッテリーは切れているかも知れないが……」
「なるほど、俺の未知術が有れば、馬を復活させられるわけか。早速やろう。」
(フラッ)
俺は足がふらついた。
「大丈夫か慎二? 」
「悪い、極東には昼に出たはずだったんだけど、その時間、メリゴは日が出て無かったみたいで、そこから夜行貿易船で真っ昼間に、ここまで来て……ええっと時間の感覚が分からなくなっちまったんだ。」
「なんだよ時差ボケか? 」
メリゴ大陸遠征の時は、大きく北に迂回していたため、そんなに気になる事は無かったが、今回は世界の裏側まで一っ飛びしたわけだ。
出発したのが朝五つで、今は十三時間ぐらい経っているので、夜五つくらいってところか。
「仮眠は必要か? 」
「いや、これぐらい慣れっこだ。電気馬のところへ行こう。
俺たちは小屋を出ると、クリアリングをし、森の中へと駆けて行った。
そこで草木を嗅ぎ分けながら、ヤドリギがぐるぐる巻きになっている電気馬を見つけた。
「ありがとう、ここまでで良い。と言いたいところだが……」
俺は少しここで考えた。
セイ・ボイドが情報源をおいそれと祖国に返してくれるだろうか?
克二はまた拘束されるか抹殺、うまくメリゴに逃げ込めたとしても、ワーメリゴンに危険が及びかねない。
「例田さん? 」
<はーい例田です。要件はなんですか手短にお願いします。今機嫌がものっ凄く悪くて、胃がキリキリ痛んでおかしくなりそうなので。>
「なんだせ……」
俺は克二の口を噤む。
「あー、源克二を救出したのですが、バイタルは安定しているのですが、人をヨコしてくれるのでしょうか? 」
<あーもー、次から次へと聞かないで!! とりあえず源克二一等兵を護衛しながら、他の隠密がいる場所へと向かってくれるかしら。>
「だそうだ。しばらくの間、宜しくな。」
そう言うと、克二は電気馬にヒョイっと跨る。
「なら運転は俺がするよ。お前はバッテリーの方を頼む。」
「すまんな。」
「なんかこうしていると、訓練兵時代を思い出すな。」
訓練兵時代、俺たちはペアで実技を受けることになった。
「一緒に馬田上官を追い回したっけな。懐かしいな。」
俺たちは最寄りの市場で食料と水を買ってから、南を目指した。
木々生い茂るジャングルを抜けると、木々は徐々に極東で見るのと似たようなものに変わっていく。
広葉樹林を抜けると、低木の多いサバナへと変わり、果てには草木の一本も生えない砂漠へとたどり着いた。
「ここか。」
「いかにも」と言う場所である。
「そうみたいだ、こうも露骨にあるとはな。」
ここで通信が入る。
<桐生慎二二等兵は強襲、源克二一等兵は、組織内の錯乱と捕まった人たちの解放をお願い。>
「「了解」」
「また捕まんじゃねえぞ。」
俺の言葉に、克二が薄ら笑みを浮かべた。
「そん時はまた助けてくれよな。」
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