神の壜(カミのフラスコ)

ぼっち・ちぇりー

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亡霊共

死闘

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 時空壊は既に発動している。
 が、彼もそれに迫る勢いで追いかけて来た。
 アルテマと凛月が激突し、その度に激しい音を立てる。
 噴水を隔て、追い越したところで俺たちは同時に術式を発動していた。
---land crusherランド・クラッシャー---
 ---紅電レッド・スプライト---
 地面から突き上がる岩石を、真紅の刃が斬り裂き、ドミニクを斬り裂く。
 確かに攻撃は、彼の急所へと届いたが、彼の身体は時間が巻き戻るように再生させれる。
「さぁさぁもっと楽しもう!! もっとお互いを共有し合うんだ!! この痛みで!! 」
「キメエんだよ死に損ないが!! さっさと死ね!! 」
 ドミニクは俺に急接近すると、俺の肩に噛み付いた。
「そうだそうだ!! その痛みに耐える顔!! 痛みこそこの世界の真理だ!! そしてお前はこの世界で唯一、その真理を共有できる人間だ。」
「狂ってやがる。」
 俺は正直、奴の豹変っぷりに引いていた。
 そして屋敷の壁を走り、跳び上がり、彼へ向けて回し蹴りを放つ。
 ドミニクは地面にアルテマを突き立てると、地面を隆起させ、尖った土塊を召喚する。
---ground spearグランド・スピアー---
 俺は空中でそれを交わすと、足に電撃を込めた。
---雷弦ライゲン---
 俺の足が三日月を描き、ドミニクの顔を跡形もなく吹き飛ばす。
 脳が吹き飛んでも、彼は綺麗さっぱり治ってしまう。
 彼の再生は吸血鬼や鬼などのそれとは比較にならないほど早く、正確だった。
「ウォォォール・トラップゥゥゥゥゥゥゥゥ。」.
 外壁から無数の針が出現し、俺とドミニクを串刺しにする。
"やはり、障害物の多い場所で奴と戦うのは悪手か……"
 俺は凛月の小太刀を地面に突き刺すと、チャクラムのコイルを操作し、空中に飛び上がる。
 俺をアルテマが発生させた土塊が、生き物のようにうねりながら追撃して来る。
 俺は砂漠の平地に着地すると、刺さった針をポキポキと抜き取る。
 そこにもう再生済みのドミニクが剣を突き下ろし、急降下してくる。
「シネェェェェェェェェ。」
 バックステップ、すぐさま身体を反時計回りに回し、攻撃を避ける。
 大勢を低くし、水平斬を交わす。
 回し蹴りで奴の足を掬う。
 砂地から違和感を感じて、両手で飛び上がる。
 地面が隆起する。
 バックステップ、これまたバックステップ。
 俺の目の前に次々とトラップが出現する。
「おいおい、逃げてるだけじゃ俺には勝てねえぞ。」
 彼の言う通りだ。
---影結カゲムスビ---
 俺の影が体と融合し、薄黒く染まる。
 奴の攻撃は、確かに俺の体を貫いたが、俺の体は液体のように弾けると、また元通りになる。
---影丸カゲマル---
 小太刀から手を離し、ホルスターから銃鬼を取り出すと、奴に向けて引き金を引く。
 漆黒の狼が銃口から飛び出し、ドミニクを追尾する。
---黒龍丸コクリュウマル---
 続いて、虚数電子の塊が、銃口から発車されて、左右からドミニクを挟み撃ちにした。
 俺は銃鬼を宙に放り投げると、小太刀を握りなおし、彼へと接近した。
---雷核ライカク---
 二匹の幻影に、シールドを付与した。
 彼らの攻撃の隙を見て、俺も激撃を加える。
 俺は幻影たちと目の前の、理解し難い嫌悪感までも感じる狂人を殴り殺した。
 殺して生き返り、生き返りは殺して、一方的に彼を攻撃する。
 顔が潰れても再生し、首がもげても元通りにくっつく。
 心臓を潰されて絶頂し、両足をもぐと慈しみの眼差しを俺に向ける。
 俺は気持ち悪くなり、至近距離で最後の大技を放った。

---rail gunロンギヌス---

 チャクラムでアンペールの法則が完成し、鎖が勢いよく突き出される。
 小太刀が亜光速で突き出され、幻影たちは、それを察すると後ろに引いた。
 小太刀はドミニクを地中深くまで吹き飛ばすと、マントルに押し当てる。
「はぁはぁ。」
 怒りに任せてドミニクを殺した俺は、疲弊した顔で後ろを振り返る。
 そこには一人の女が立っていた。
「ドミニク・ブレイクは、本当に桐生慎二郎を殺したのかな? 」
 俺は状況も忘れて、女に食いかかる。
「奴は丹楓村を襲った。奴は確かに父さんの頭を踏んづけて不敵に笑っていた。」
「母さんは、聖に犯し殺された。奴が殺したようなもんだ。」
「後ろ、未だ彼は生きているよ。」
 全身が炭化し、それは本当に人間だった物なのか分からない。
「あー良い!! 良いぞ!! もっとだもっとだ!! もっと俺を楽しませろ!! 」
 炭化した部分がペリペリと剥がれ、ドミニクのアルテマまで、自身の赤黒い頭身を爆発させ、今は真っ赤に炎を宿している。
---magma feastスルトの宴---
 あちこちからマグマが噴き上げる。
 溶岩に当てられて、幻影たちが消滅する。
 地面が焼けるように熱くなったのを確認し、火柱から逃げる。
「ハハハハハ愛してるぜフイナンセッ。」
 彼は吹き上げた火柱から全てを吸収し、自分の周りに集める。
 おそらくマントルのエネルギーを全て吸収している。
"このままでは世界の法則が乱れる。"
---氷雷フリーズ・プラズマ---
 俺の未知術が及ぶ、ギリギリの箇所で、未知術を使い空気を圧縮する。
 それをドミニクの周りで無理矢理引き伸ばした。
 空気が凍る。彼の元に集まって来ていたエネルギー体は、冷気によって冷え固まる。
「んがんがんがんがかここくこけけこここく。」
 奴が必死に能力を発動させているのが分かる。
 俺も負けずと、未知術の発動を続けた。
 マグマは、黒く固まっていき、やがて効力を無くすと、地面に激突した。
 どうやらマグマが完全に固まり、窒息したようだ。
 俺はその黒い球体に接近し、岩石を真っ二つにする。
---雷刃ライジン---
 中で、潰されて、中身が飛び出ているドミニクだったものを見た。
---陰牙烈斬インガレツザン---
 対象を影ごと葬り去り、この世から消し去る外道の呪術。
 俺が彼の首を落とすところで、再び女が俺に問いかけた。
「残念なら、君の父を瀕死の状態にしたのは、彼じゃないよ。」
 なぜ、この女はそれを知っているんだ?
 俺は振り返り、正体不明の女に対して半ば怒鳴る形で質問を投げつける。
「だったら誰が殺したって言うんだ!! 」
「本人に直接聞いてみたらどうかな? 」
 聞くまでもなく、顔を再生させたドミニクが話し出した。
「そうだ。慎二郎は、俺が来た頃には、瀕死の状態にされていた。俺は村を襲ったが、慎二郎には攻撃していない。」
「だったらなぜ俺にッ! 」
「慎二ぃいいいいいい。」
 陰牙烈斬を発動させている凛月の刃を、ドミニクが再生させた腕で自らの首に引きつける。
「おい、辞めろ!! 」
「俺を殺して俺と一つになれェェェェェェェェェ。」
「話せ気狂いめガァ。」
 俺たちは転がりながら、凛月を右に左に動かす。
「そして弟ともう一度戦うんだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
「俺と一緒に憎き弟を殺すんだあぁぁぁぁぁぁぁ。」
「アイツを殺せるのはお前だけだ。」
「唯一俺に感情を向けてくれたお前だけだぁぁぁぁぁぁ。」
「お前と一緒になりたい。お前と痛みを共有したい。」
「お前と一緒に弟に傷つけられたい。」
「俺はお前に消されて、初めて人生をはじめられるんだぁぁぁぁぁぁ。」
 全身を回復させたドミニクが、凛月を自分の方へと引っ張る。
 影の力は後10秒は継続する。
 それまでに刃が少しでも彼に触れれば、俺は彼を殺したことになる。
「おい、鬼影!! 止めろッ。」
---ソイツは無理な注文だな慎二。コイツは俺の仇を横取りした張本人だ。俺がこの手でッ---
「鬼影ッ。」
 そして俺の陰牙烈斬が、彼の首を斬り裂いた。
 ドス黒い血が、影のようになって地中に飲み込まれていく。
「ヒハヒハハハハハハ。これで、これでカーミラを殺せる。この手で、憎きカーミラを。」
「兄さん……」
 俺はその聞き覚えのある声を聞いて、戦慄を覚える。
 最悪だ。よりによってアイツが来るなんて。
 カーミラは膝を突き、泣き崩れると、憎しみのこもった眼差しを俺に向けた。
「なんで……兄さんを殺したんだ!! 」
 俺もその言葉に怒りを覚えた。
「兄が、兄さんを殺しただよ。テメェは、これまでにどれだけの人間を殺めて来た? ソイツ一人一人にも家族がいたんだっ!! お前はソイツら一人一人の名前を覚えていんのかよ。俺は母親をお前らに殺された。斥は家族と幼なじみを、槍馬のオヤジは、右腕を!! 」
「先に手を出して来たのはテメーらの方じゃねえか。」
「被害者になったときだけ、都合よくキレてんじゃねえぞ。このクソ偽善者。」
「台与鬼子ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ。」
「カーーミ~ラぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
 俺は全ての憎しみを彼へとぶつけた。



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