神の壜(カミのフラスコ)

ぼっち・ちぇりー

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終わり。

拘束

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 目が覚めると、俺は牢屋にぶち込まれていた。
「んッ。」
 額を手で拭おうとして、失敗する。
「なんだ? 手が動かねえ。」
 手枷だ。
 それよりもっと特筆すべきことがあった。
「凛月!! 」
 返事が返ってくることはない。
---奴なら極長に連れて行かれたぜ---
 代わりに鬼影が答えた。
「銃鬼、俺の枷を壊せるか? 」
---あいにくじゃが、ワシのこれを見てみい---
 銃口にお札が貼られている。
---穴に栓をするなど下品な奴らじゃ。後でお仕置きせねばならんの---
「クソっ。」
 まぁこうなることは半ば分かっていた。
 俺もここまでか。
 セイに殺されないだけマシだったな。
「ギィィ。」
 重い扉の音と共に、牢へと光が差す。
 コン コン コン
 軽い音がこちらに近づいてくる。
 1人の兵士が、俺の前に立った。
 教官の亀田だ。
「立て、極長がお呼びだ。」
「チッよりによってお前かよ。」
「言葉を慎めよ罪人。俺はお前の処分を任されている。今ここで殺しても良い。」
「やれるもんならやってみろ。」
(骨に響く衝撃。)
 俺は壁に叩きつけられた。
 あの時と同じように唾を吐きかける。
 が、彼が顔色を変えることはなかった。
「こい。」
 彼は俺の手枷の鎖を握ると、牢の外に引き摺り出す。
 あまりの眩しさにピントが合わない。
 牢を後にし、屋外に出る。
 そして俺は極長室へと連れて行かれた。
「グッモーニング桐生慎二二等兵。」
「煮るなり焼くなり好きにしろ。」
「いやいや、やけに素直じゃない? 何か企んでいるの? 」
「君、なんでここに連れて来れたか分かってる? 」
「ああ、知っているよ。アンタの秘密を知ったからだろ。」
 極長が俺の胸ぐらを掴んだ。
「あん時と変わらねえなクソガキ。」
 (「パンパン」極長が手を払う音。)
「はーい。君が任務をぐちゃぐちゃにして、挙句の果てに、ドミニク・ブレイクを殺したからですね~はーい。」
「ふん、その反応じゃ情報はホントみたいだな。」
「……殺すぞクソガキ。」
「そっくりそのまま返すぞクソジジイ。」
「この悪魔め、人殺し、犯人蔵匿。」
「ハハハハハ…何を勘違いしているかは知らないが。」
「慎二郎を殺したのは君じゃないか、君の、母の銃鬼で脳天をぶち抜いて。」
「俺じゃねえ。七宝だろ。七宝が父さんを殺したんだろ。出なきゃ聖なんかに負けるわけがねえ。」
 極長は捜査資料を取り出した。
「いや、だからね。ここにちゃんと書いてあるじゃないの。呪具による呪術での死亡って。むしろ私が君を見逃してあげたんだよ。この人殺し。」
 俺が父さんを撃ったのは事実だ。だが、そんな資料、いくらでも改竄できる。
「地獄に堕ちろ極悪党めが!! 」
 極長は両手を広げてたまげている。
「悪党? この世に悪党などいないよ慎二二等兵。」
「なん…だと。」
 俺はあまりの言葉に絶句した。
「悪党と善人の違いは、個々にとって都合が良いか悪いかの違いでしか無い。」
「そしてたった今君は都合が悪い人間、になったわけだ。」
「私が、二+二=五、二×二=五といえば、四と言っているお前はッ。」
 彼の回し蹴りで身体が吹き飛ぶ。
「悪人だ。」
 彼が俺の胸ぐらを掴む。
「さぁ二+二は? 」
 馬鹿げている。
「四だ。」
 もう一度ぶっ飛ばされる。
 極長室の赤い壁が凹む。
「二+二は? 」
「四だ。」
 今度は首の骨を折られる。
 視界がぐらつき、鬼の呪いで再び再生する。
「二+二は? 」
「二+二は? 」
「二+二は? 」
「二+二は? 」
「二+二は? 」

      「四だ。クソッタレ。」

「ああ、君はもう治療できないほどに、怪しい宗教団体に毒されたらしい。」
「もうこれは処刑するしか無いね。
「もう一度死んでくれ。」
「そして極東の英雄になってくれ。」

「君が極東史上最悪の悪党だ。君が死ねば、極東に平穏が訪れるッ。」

「狂ってやがる。」
 俺の本心から言葉が溢れた。
「明日から早速準備に取り掛かろう、君の処刑台、招待状、そして各情報誌によるインタビュー。忙しくなるぞ。」
 極長は扉の向こうの部下に向けて声をかけた。
「亀田くん。もう良い、彼をまた牢屋に運んでくれたまえ。食事は与えなくて良い。どうせ餓死しても生き返るんだろうからなこのバケモノめ。」
 俺は再び牢屋にぶち込まれた。
 

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