神の壜(カミのフラスコ)

ぼっち・ちぇりー

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拾弍ノ劔

交渉会合

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 僕はすぐに戦後協定の申し出を書類に書き写し、魔術師に飛ばされると、数時間後に返事が帰って来た。
 答えはYES、こんなにあっさりと承諾してくれるとは思っていなかったので、正直驚く。
 それからはセイに国のことを任せて、彼女の反対を押し切ると、護衛もつけずに大陸を横断する。
 空間転移を使い、三日三晩で極東へと着くことが出来た。
 大内裏は真夜中だというのに、明かりがついていて、流石に出直そうかと思ったが、坂上最高司令官に手招きされ、中でゆっくり休息をとることとなった。
 翌日、僕は布団とという寝具から起きると、朝食をご馳走になる。
 そしてそのあと、正装(ここには庶民の服で来なさいと言われていたので。)に着替えると、客間に入った。
 そこであることに気がつく。
「あの、七宝隊長は何処へ? 」
「ん? 彼かい? 彼なら南メリゴ大陸にドブネズミを狩りに行っているよ。おやおや顔色がよろしく無いようだな。食中毒かな? いや~そんなことはない。食材は皆、慎重に審査させているからね。そりゃそうだろ君、国賓に毒を盛るような国は、誰から信頼されるっていうんだい? こりゃ~料理長は打首かねぇ。僕の顔に毒を塗るとは……いやいやいやいやしてやられたよ。」
「いえ、その必要はありません。」
 なぜ坂上がそのことを知っているんだ? 
 マッチポンプ?
 何のために?
 それにしても周りくどすぎる。
 エイレネとの会話を盗み聞きされていたか。
「いやいや、気を遣わなくても良いんだよキミィ。私になんでも行ってくれ。」
「いえ、その、ドブネズミはちゃんと捕まえられたのでしょうか? 」
 精一杯の笑みを向ける。
 顔はひきついてる絶対に。
「残念ながらねぇ。巣穴に逃げられちゃったみたいでね。今、頑張って穴をほじくり回しているたいだけど……」
 彼は両掌を広げて傾げた。
「そうですか……それは残ッ残念ですね。ハハハ。」
「とても残念そうには見えないが。息を吹き返した魚みたいな顔をしてるよ君。」
「やだな坂上さん、僕は元からこんな顔なんですよ。影で家臣たちは僕のことをムルッカって呼んでるんですから。ホントに失礼な奴らです。」
「さて本題だが……」
 坂上が急に真剣な顔になる。
「セル帝国で不穏な動きがあってね。魔硝石やら火薬やらを大量に買い込んでいる。その内ワケも不明だ。他国と戦争してるわけでもないのに。軍事演習が若干増えたらしいが、んなもんあの国は普段からやっているからね。ということはだ。」
「自国に武器を溜め込んでいるんですね。」
「それ以外に無いよねぇ。さ~てどこにふっかけるつもりなのか。」
 僕は生唾を飲んだ。
「実はね、この国、今ピンチっぽいんだよね。」
 神様の予想通り、セル帝国と極東で戦争が起こることを予測していた。
「それで、あなたはこうやって協定を受け入れてくださったんですね。」
「そうそう、グランディルと戦争をする余裕なんて無くなった。その時に君の方から和平を持ちかけてくるなんて、願ったり叶ったりだよ。」
 この男にはどこまで見えているのだろう。
 僕は情報を少しでも聞き出すために、彼に訊いた。
「なぜ、セル帝国は極東に……」
「昔話さ。昔ね極東から神器のカケラを持って逃げた人間がいた。」
「それから? 」
 僕は息を呑んだ。
「父親はね、極東のアサシンに殺させたわけよ。でもねどういうわけか母と娘は生き残り、今極東に反旗を翻しているわけだよ。」
「やはり反乱の目は早めに摘んでおくべきだったな。」
「いや、摘めたのか。」
 そんなことで、なぜ今なのだろう?
 この男はまだ何かを隠している気がした。 
「いや、話が逸れたね、すまない。とはいうものの、こちらは差し出せるものが無いのだかね。君たちに中立条約を破ってまで戦争に加担してもらうメリットは……」
「金、黄金を分けて下さい。」
 自分でもびっくりした。
 自分の中にいるのだ、父の一部が。
 代行者の記憶が、少しずつ自分を侵食しているのを感じ取った。
「ふむふむ。中々痛いところをついてくるじゃないか。金山は極東の重要な資金源だからね。あー、でもそんなに期待しないでくれ。メリゴの奴はダメだから。あれは原住民たちとの約束があるからね。極東産のやつだけ。力で支配するってやつ、僕はあまり好きじゃなくてね。」
"どの口が言ってるのだろう。"
 急に坂上が迫ってくる。
 そして耳元でこう囁いた。
「人を使うには飴と鞭が大事なんだよ。支配者なら君も覚えておくと良い。ペロペロキャンディー君。」
 一瞬現れた彼のペルソナの裏側に気圧され、怖気付く。
 が、僕は必死にそれを隠すと、返事をした。
「はい、ありがとうございます。グランディルはセル帝国との中立協定を破棄し、あなた型に付きます。」
「よろしくぅカーミラクン。」
 差し出された右手を握る。
 シェイクハンドだ。



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