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拾弍ノ劔
七宝
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地面を蹴る、七宝は言っていた、壊れる心配は無いと。
床が少し揺れた。が、相当頑丈に造られているようだ。
ヒビが入った様子は無い。
奴が時の剣を取り出そうとしているのが見えた。
凛月のコイルを操作し、飛ばした小太刀で左手を弾く。
"なるほど、そっちはブラフか。"
彼は右手でアウラを握っている。
床の青葉が木の葉のように舞う。
そして左手に風の剣。
元々、アウラと風の剣は、一つの剣だった。らしい。
神器から分かれた時も。
彼の背中に竜巻が発生する。
---テンペスト---
凄まじい風圧が俺の軍服に傷をつける。
紋章が外れた。
装備が次々と吹き飛ぶ。
後ろでは伊桜里という少女が、必死に仲間を庇っている。
「なぁ七宝? ここじゃモノが壊れるだろ? 」
五つの剣が周り出す。
眩い光を発したかと思うと……
光が引き、目の焦点が合いはじめる。
俺の世界に飛び込んできたのは……
荒野だ。
アスファルト。
錆びた鉄の匂い。
鉄?
この赤ずんだ色は……
錆では無かった。
なんだろう、この標識は……
俺は極東の交通法にあまり詳しく無いのでわからないが……
↩️のマークに❌が付いている。
その標識の先には無数の死体が無造作に積まれていた。
これが鉄臭さの原因だ。
少し腐臭が混じっている。
蝿がタカる音。
それを炎が焼き尽くした。
「相当なマエストロだなお前は。」
背中に竜巻を宿した男が、コツコツと音を立てながらゆっくりとこちらに歩いて来る。
「火風水地光それに時間、これだけの能力がアレば世界なんて簡単に作れます。」
「まぁ今は闇の剣が無いので、不完全な世界ではありますが。」
「この世界は真っ暗だがなぁ。」
「……」
「まざかお前が乗ってくれるとは思わなかったよ。」
腐臭が、肉とポリエステルの焦げる匂いに変わっていく。
それに酸っぱい匂いが混じってきて、俺は思わず鼻を塞いだ。
「あなたと一度、サシでやってみたかったんですよ。」
「俺もだ。」
「さぁ覚悟して下さい。僕は罪人に厳しい。」
「望むところだ。」
奴の剣先から竜巻が飛んでくる。
俺は右に飛ぼうとした。
しかし……
"なんて重力だ。"
竜巻はすぐそこまで迫っている。
俺は回避から防御に切り替えた。
凛月のチャクラムを盾のように突き出す。
---雷壁---
チャクラムから、放たれた稲妻が、俺と竜巻の間に境界線を作り出す。
凄まじ電流が竜巻から俺を守る。
凄まじ圧力。
だが俺が押し込まれることは無かった。
「動けないのなら、動かなければ良いのだ。」
焦った七宝が重力操作を解除する。
急な重力変化に惑わされることなく、俺は、竜巻の攻撃に身を委ねると、跳躍し、廃墟の壁で磁力操作をする。
壁を走り、七宝の上に回り込む。
---雲竜風虎---
背中から放たれた風を纏った龍と、虎がが、俺の背中に迫ってきている。
「ギギィ。」
主柱が折れたのであろう。
耐久度を無くしたビルがコチラに倒れかかってくる。
それを察知した七宝が、その場から離れる。
俺も紙一重、高層ビルの壁を蹴ると、七宝向けて急降下した。
---堕雷---
俺の攻撃が、七宝へと当たるその瞬間、彼の輪郭が薄れたかと思うと、その場から消える。
俺の背後でビルが倒れる。
時の剣の能力だ。
分身……ではない。
質量はあった。
「なるほど。中々リスキーなことをして来るじゃないか。」
本体は別の高層ビルの上に立っていた。
「時間を止めた残影を残すことも出来ました。」
「でも、それじゃあ貴方は欺けない。」
彼は俺が攻撃を当てる寸でのところで時の剣の力を使い、体内時間を加速させた。
タイミングをミスすれば、俺の攻撃をモロ受けていただろうに。
「私たちもあの竜と虎のようになれれば良かったんですよ。」
「お前が竜で俺が虎か? 」
「ハハハ。」
「何がおかしいんですか? 」
「そんなもん無理に決まってるだろ? 」
「俺の方が強いんだから。」
「すぐにそんな口は聞けなくしてあげますよッ!! 」
彼は急降下すると……
ワープして後ろに回って来るようだ。
時の剣で加速しているようだが、僅かに右に旋回する残影が見えた。
目が慣れ始めたところか。
右に回ったのは、俺が右利きだということを知っているから。
いや、人類の殆どは右利きだったな。
胸を大きく右側にそらす。
遅れて彼の突き攻撃がやって来る。
「どうした? チマチマとした飛び道具は? 」
「そんなことしなくても勝てるということを証明して見せますよ。」
俺は突き攻撃の間際、彼の周りを回っている剣の数を数えた。
壱、弐、参、肆
火の剣が足りない。
「凛月ッ。」
コイルで小太刀を奴に向けて弾き飛ばす。
その後、七宝の周りで爆発が起こる。
もちろん彼は……
無傷だ。
風で爆風を防いでいる。
不意に熱気を感じて、その場から離れる。
遅れて七宝が右腕を横に振り下ろす。
俺のいたところで爆発が起こる。
ガラスの破片が顔に飛んでくる。
咄嗟に左腕で目を守った。
左腕に破片が刺さる。
その僅かな時間に、七宝が距離を詰めて来る。
「しまっ。」
「ここは私の空間なんです。能力を自由に試行できないわけがないでしょう。」
彼のアウラの軌道を小太刀で反らせる。
防御は…間に合わない。
「クッ。」
さっきガラスの破片を受けた左腕を風の衝撃波がなぞる。
「どこまでも卑怯な奴だ。」
「私の持てる全てを出さないと、貴方には勝てませんよ。」
「それがこの騙し討ちか。」
七宝がアウラをコチラに翳す。
俺を吹き飛ばすつもりだ。
よほど接近戦に持ち込まれたくないのだろう。
俺は身に任せて、バックステップする。
右手を振り下ろそうとしている。
凛月を操作し、鎖鎌のようにして使うと、彼の右腕弐巻きつけ、引きちぎる。
彼の顔が勝利を確信したモノに変わる。
凄まじい熱気。
まざか……
右手を振るという行動を行わなくても、爆発は起こせるのか?
目の前が眩い光に包まれる。
左目が真っ暗になった。
目が眩んだわけではない。
潰れたのだ。
咄嗟に守った右目だけは生きている。
だが、左半身の機能が軒並み死んでいる。
耳も聞こえ無い。左腕は感覚が無いし、無理矢理動かそうにも動かない。
どうやら刺さったガラスが溶けて、筋肉の間に練り込み、邪魔をしているみたいだ。
俺は電気でガラスを溶かして抜き取ると、傷口を焼いて塞いだ。
左腕がぶちぶちと嫌な音を立てているが問題ない。
その間に、七宝が死角から止めの一撃を放とうとしているのは、分かっている。
俺は嗅覚を巧みに使い、彼の位置を彼にバレないように割り出す。
焦げ臭い。
腐臭と鉄と焼けた匂いで、嗅覚はまるで使い物にならなかった。
ならば。
肌で空気の流れを感じる。
「できた。」
俺は七宝に気づいていないフリをする。
気をつけねばならない。
彼は完璧主義者だ。
時の剣を使い、一気に距離を詰めて来るに違いない。
俺の攻撃が届く範囲に、奴が入った瞬間、一気に畳み掛ける。
あと数メートル。
気をつけろ。
さっき時の剣を使った時は、体感で一キロ以上移動していた。
もう俺は、彼の射程範囲に入っている。
「ココダッ。」
---八又ー大蛇滅殺斬---
右手の小太刀から、左手のチャクラムから、同時に大蛇滅殺斬を放つ。
一撃目を…
弾かれ。
二撃目を
防がれる。
三撃目は
風圧に防がれ、
四撃目は
避けられる。
五撃目を
相殺され、
六撃目が
頬を掠る。
七撃目は
軌道をずらされると、
八撃目で
大きくノックバックさせられた。
彼の顔は見えない。
だが俺を超えられたことに満ちているに違いない。
「甘い。」
俺はそう呟くと、奥の手を発動させた。
---輪廻界雷---
コイルで加速した二対の武器に引き付けられ、俺は体勢を立て直す。
そのまま奴の懐に入ると……
傷が痛む。かまいたちが俺の体を抉っている。
だが構うものか!!
俺は英雄だ。
痛みは知っている。
殺されたモノのそれも
殺したモノのそれも
こんな痛み、奴らに比べれれば大したモノではない。
俺は七宝の顔を見上げた。
やっと見えた。
彼の顔は驚愕に満ちている。
奴の口角が上がる。
この男は何を誇らしげにしているのだ。
負けたんだぞ。
この俺にーーーーーーー----------__________
世界が崩れ去り、ユグドラシルの葉に、自身の血を落とした。
斥と伊桜里がコチラにやって来る。
「大丈夫ですか? 」
「君だな。俺の息子に闘い方を教えてくれたのは……」
「いえ…何も。慎二には何も。」
「人に教えることってとても難しいことなんです。」
「ありがとう。」
「慎二郎さんっ!! 」
斥が俺を支えようとしている。
身体に刺さっているガラスが危ない。
俺は彼を優しく離した。
「俺は処刑されるだろう。」
「お前は……」
「はい!! 必ず!! 」
言わなくても伝わったようだ。流石息子の親友だ。
「アイツは俺の親友です。どんな形になっても、そして貴方は……」
「オイ、やめろっ!! 」
ドミートリィという青年が、闇の剣を必死に引っ張っている。
「返し…て…もらうぞ。そ…の…け…んは、私…の…だ。」
左腕は無くなっているが、まだ能力を使う余力が残っている。
俺にはもう、足を一歩踏み出す力すら無かった。
「くそッ。」
斥が七宝に飛びかかろうとした。
「うわっ。」
水の剣に弾かれる。
俺も地の剣の重力に引かれ、七宝のカイナに収まる。
「慎二郎さん!! 」
伊桜里の悲鳴が聞こえる。
闇の剣が光り、次元に穴を開ける。
斥が上官の名前を呼んでいる。
「七宝さんッ。」
「お前はそこに残ってろ。」
「どのみち帰っても処刑されるだけだ。」
「隊長の犠牲を無駄にするな。」
そこから俺の記憶はない。
気がつくと培養液に入れられていたからだ。
床が少し揺れた。が、相当頑丈に造られているようだ。
ヒビが入った様子は無い。
奴が時の剣を取り出そうとしているのが見えた。
凛月のコイルを操作し、飛ばした小太刀で左手を弾く。
"なるほど、そっちはブラフか。"
彼は右手でアウラを握っている。
床の青葉が木の葉のように舞う。
そして左手に風の剣。
元々、アウラと風の剣は、一つの剣だった。らしい。
神器から分かれた時も。
彼の背中に竜巻が発生する。
---テンペスト---
凄まじい風圧が俺の軍服に傷をつける。
紋章が外れた。
装備が次々と吹き飛ぶ。
後ろでは伊桜里という少女が、必死に仲間を庇っている。
「なぁ七宝? ここじゃモノが壊れるだろ? 」
五つの剣が周り出す。
眩い光を発したかと思うと……
光が引き、目の焦点が合いはじめる。
俺の世界に飛び込んできたのは……
荒野だ。
アスファルト。
錆びた鉄の匂い。
鉄?
この赤ずんだ色は……
錆では無かった。
なんだろう、この標識は……
俺は極東の交通法にあまり詳しく無いのでわからないが……
↩️のマークに❌が付いている。
その標識の先には無数の死体が無造作に積まれていた。
これが鉄臭さの原因だ。
少し腐臭が混じっている。
蝿がタカる音。
それを炎が焼き尽くした。
「相当なマエストロだなお前は。」
背中に竜巻を宿した男が、コツコツと音を立てながらゆっくりとこちらに歩いて来る。
「火風水地光それに時間、これだけの能力がアレば世界なんて簡単に作れます。」
「まぁ今は闇の剣が無いので、不完全な世界ではありますが。」
「この世界は真っ暗だがなぁ。」
「……」
「まざかお前が乗ってくれるとは思わなかったよ。」
腐臭が、肉とポリエステルの焦げる匂いに変わっていく。
それに酸っぱい匂いが混じってきて、俺は思わず鼻を塞いだ。
「あなたと一度、サシでやってみたかったんですよ。」
「俺もだ。」
「さぁ覚悟して下さい。僕は罪人に厳しい。」
「望むところだ。」
奴の剣先から竜巻が飛んでくる。
俺は右に飛ぼうとした。
しかし……
"なんて重力だ。"
竜巻はすぐそこまで迫っている。
俺は回避から防御に切り替えた。
凛月のチャクラムを盾のように突き出す。
---雷壁---
チャクラムから、放たれた稲妻が、俺と竜巻の間に境界線を作り出す。
凄まじ電流が竜巻から俺を守る。
凄まじ圧力。
だが俺が押し込まれることは無かった。
「動けないのなら、動かなければ良いのだ。」
焦った七宝が重力操作を解除する。
急な重力変化に惑わされることなく、俺は、竜巻の攻撃に身を委ねると、跳躍し、廃墟の壁で磁力操作をする。
壁を走り、七宝の上に回り込む。
---雲竜風虎---
背中から放たれた風を纏った龍と、虎がが、俺の背中に迫ってきている。
「ギギィ。」
主柱が折れたのであろう。
耐久度を無くしたビルがコチラに倒れかかってくる。
それを察知した七宝が、その場から離れる。
俺も紙一重、高層ビルの壁を蹴ると、七宝向けて急降下した。
---堕雷---
俺の攻撃が、七宝へと当たるその瞬間、彼の輪郭が薄れたかと思うと、その場から消える。
俺の背後でビルが倒れる。
時の剣の能力だ。
分身……ではない。
質量はあった。
「なるほど。中々リスキーなことをして来るじゃないか。」
本体は別の高層ビルの上に立っていた。
「時間を止めた残影を残すことも出来ました。」
「でも、それじゃあ貴方は欺けない。」
彼は俺が攻撃を当てる寸でのところで時の剣の力を使い、体内時間を加速させた。
タイミングをミスすれば、俺の攻撃をモロ受けていただろうに。
「私たちもあの竜と虎のようになれれば良かったんですよ。」
「お前が竜で俺が虎か? 」
「ハハハ。」
「何がおかしいんですか? 」
「そんなもん無理に決まってるだろ? 」
「俺の方が強いんだから。」
「すぐにそんな口は聞けなくしてあげますよッ!! 」
彼は急降下すると……
ワープして後ろに回って来るようだ。
時の剣で加速しているようだが、僅かに右に旋回する残影が見えた。
目が慣れ始めたところか。
右に回ったのは、俺が右利きだということを知っているから。
いや、人類の殆どは右利きだったな。
胸を大きく右側にそらす。
遅れて彼の突き攻撃がやって来る。
「どうした? チマチマとした飛び道具は? 」
「そんなことしなくても勝てるということを証明して見せますよ。」
俺は突き攻撃の間際、彼の周りを回っている剣の数を数えた。
壱、弐、参、肆
火の剣が足りない。
「凛月ッ。」
コイルで小太刀を奴に向けて弾き飛ばす。
その後、七宝の周りで爆発が起こる。
もちろん彼は……
無傷だ。
風で爆風を防いでいる。
不意に熱気を感じて、その場から離れる。
遅れて七宝が右腕を横に振り下ろす。
俺のいたところで爆発が起こる。
ガラスの破片が顔に飛んでくる。
咄嗟に左腕で目を守った。
左腕に破片が刺さる。
その僅かな時間に、七宝が距離を詰めて来る。
「しまっ。」
「ここは私の空間なんです。能力を自由に試行できないわけがないでしょう。」
彼のアウラの軌道を小太刀で反らせる。
防御は…間に合わない。
「クッ。」
さっきガラスの破片を受けた左腕を風の衝撃波がなぞる。
「どこまでも卑怯な奴だ。」
「私の持てる全てを出さないと、貴方には勝てませんよ。」
「それがこの騙し討ちか。」
七宝がアウラをコチラに翳す。
俺を吹き飛ばすつもりだ。
よほど接近戦に持ち込まれたくないのだろう。
俺は身に任せて、バックステップする。
右手を振り下ろそうとしている。
凛月を操作し、鎖鎌のようにして使うと、彼の右腕弐巻きつけ、引きちぎる。
彼の顔が勝利を確信したモノに変わる。
凄まじい熱気。
まざか……
右手を振るという行動を行わなくても、爆発は起こせるのか?
目の前が眩い光に包まれる。
左目が真っ暗になった。
目が眩んだわけではない。
潰れたのだ。
咄嗟に守った右目だけは生きている。
だが、左半身の機能が軒並み死んでいる。
耳も聞こえ無い。左腕は感覚が無いし、無理矢理動かそうにも動かない。
どうやら刺さったガラスが溶けて、筋肉の間に練り込み、邪魔をしているみたいだ。
俺は電気でガラスを溶かして抜き取ると、傷口を焼いて塞いだ。
左腕がぶちぶちと嫌な音を立てているが問題ない。
その間に、七宝が死角から止めの一撃を放とうとしているのは、分かっている。
俺は嗅覚を巧みに使い、彼の位置を彼にバレないように割り出す。
焦げ臭い。
腐臭と鉄と焼けた匂いで、嗅覚はまるで使い物にならなかった。
ならば。
肌で空気の流れを感じる。
「できた。」
俺は七宝に気づいていないフリをする。
気をつけねばならない。
彼は完璧主義者だ。
時の剣を使い、一気に距離を詰めて来るに違いない。
俺の攻撃が届く範囲に、奴が入った瞬間、一気に畳み掛ける。
あと数メートル。
気をつけろ。
さっき時の剣を使った時は、体感で一キロ以上移動していた。
もう俺は、彼の射程範囲に入っている。
「ココダッ。」
---八又ー大蛇滅殺斬---
右手の小太刀から、左手のチャクラムから、同時に大蛇滅殺斬を放つ。
一撃目を…
弾かれ。
二撃目を
防がれる。
三撃目は
風圧に防がれ、
四撃目は
避けられる。
五撃目を
相殺され、
六撃目が
頬を掠る。
七撃目は
軌道をずらされると、
八撃目で
大きくノックバックさせられた。
彼の顔は見えない。
だが俺を超えられたことに満ちているに違いない。
「甘い。」
俺はそう呟くと、奥の手を発動させた。
---輪廻界雷---
コイルで加速した二対の武器に引き付けられ、俺は体勢を立て直す。
そのまま奴の懐に入ると……
傷が痛む。かまいたちが俺の体を抉っている。
だが構うものか!!
俺は英雄だ。
痛みは知っている。
殺されたモノのそれも
殺したモノのそれも
こんな痛み、奴らに比べれれば大したモノではない。
俺は七宝の顔を見上げた。
やっと見えた。
彼の顔は驚愕に満ちている。
奴の口角が上がる。
この男は何を誇らしげにしているのだ。
負けたんだぞ。
この俺にーーーーーーー----------__________
世界が崩れ去り、ユグドラシルの葉に、自身の血を落とした。
斥と伊桜里がコチラにやって来る。
「大丈夫ですか? 」
「君だな。俺の息子に闘い方を教えてくれたのは……」
「いえ…何も。慎二には何も。」
「人に教えることってとても難しいことなんです。」
「ありがとう。」
「慎二郎さんっ!! 」
斥が俺を支えようとしている。
身体に刺さっているガラスが危ない。
俺は彼を優しく離した。
「俺は処刑されるだろう。」
「お前は……」
「はい!! 必ず!! 」
言わなくても伝わったようだ。流石息子の親友だ。
「アイツは俺の親友です。どんな形になっても、そして貴方は……」
「オイ、やめろっ!! 」
ドミートリィという青年が、闇の剣を必死に引っ張っている。
「返し…て…もらうぞ。そ…の…け…んは、私…の…だ。」
左腕は無くなっているが、まだ能力を使う余力が残っている。
俺にはもう、足を一歩踏み出す力すら無かった。
「くそッ。」
斥が七宝に飛びかかろうとした。
「うわっ。」
水の剣に弾かれる。
俺も地の剣の重力に引かれ、七宝のカイナに収まる。
「慎二郎さん!! 」
伊桜里の悲鳴が聞こえる。
闇の剣が光り、次元に穴を開ける。
斥が上官の名前を呼んでいる。
「七宝さんッ。」
「お前はそこに残ってろ。」
「どのみち帰っても処刑されるだけだ。」
「隊長の犠牲を無駄にするな。」
そこから俺の記憶はない。
気がつくと培養液に入れられていたからだ。
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