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ファイル:1 リべレイター・リベリオン
おつかい
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早足で市民病院へと向かう彼女を引き止める。
「おい、待てよ。オブザーバー。上司さん? 」
彼女は止まらない。
俺は彼女の肩を掴んだ。
[警告:ペナルティ3]
彼女は、俺の手錠のペナルティー数を見ると、無言でゼロに戻した。
「手錠やオブザーバーに危害を加えようとすると、ペナルティが追加されるの。言ってなかったわね。」
「五つ貯まれば、貴方はラストプリズンか、再教育。貴方は間違いなく前者。散々なぶられた挙句、脳髄引っこ抜かれるわ。」
「そんなことはどうだっていい。」
「それより。」
言葉にならない。
俺の語彙力では彼を言葉で表すことが出来なかった。
「アイツは何か嫌だ。アイツと一緒にいるのも、一緒にいるオマエを見るのも。」
彼女は力無く笑った。
「あら、嫉妬かしら? 」
彼女も大麻のことをあまり良く思ってはいない。
とても苦しそうだからだ。
でも彼女は彼の許嫁。
俺は縁談を断った人間がどうなるか知っている。
反逆者……平等社会の秩序を乱すモノ。
九条姉さんもそうだった。
だから俺は彼女にその言葉を伝えることが出来ない。
「ああ、嫉妬だよ。今の言葉、忘れてくれ。」
「アイツ、ほんと嫌い。」
彼女は地面に感情を吐露する。
「縁談の相手だから家のこともあるし、邪険に出来ないけど、アイツの言葉、一語一語を聞くたびに鳥肌が立つし、吐き気がするのよ。」
彼女はため息をついた。
「ごめんなさいね。取り乱しちゃって。」
「昔から嫌だったのよ。アイツのへばり付くようなネチッコい言動が。」
俺は彼女になんて言えばいいのか分からない。
あの頃の俺はガキだったが、また同じ過ちを繰り返すような気がする。
まともに努力して、公安にオブザーバーとして就職すれば、彼女を救えたんだろうが……
「どのような形になっても、俺はお前の味方だ。俺は執行者。お前はオブザーバー…だろ? 」
「……」
彼女がずっと俺の顔を見つめている。
何か変なこと言ったかな。
「アンタ血まみれじゃない。」
言われてみればそうだった。
彼女に指摘されて、全身に激痛が走る。
「イダダダダダ。」
「ほんと情けないわね。」
「あ、もしかして。貴方、痛みに慣れてないの? 」
「だから無能力者に殴られていた時も、仔犬みたいな目で私を見ていたのね。」
全部当たっている。
彼女の言う通りだ。
「痛みなんて、慣れるとか慣れないとかそういう問題じゃ無いだろ? 」
「はぁ。全身防弾チョッキがよく言うわ。」
裏路地から表に出た。
信号が青に変わる。
止まっていた人間社会のメカニズムが、再び動き出す。
俺たちもそれに歩調を合わせる。
誰一人それを乱すものはいない。
彼らは故意に歩調を合わせているわけでは無いのだろう。
人間一人一人が恣意的に動いている……
はずなのである。
彼らはそれに気づいていない。
今、俺が彼らと歩調をズラせば、彼らは一体どんな顔をするだろうか。
「ホラ、病院はこっちよ。」
彼女に手を引かれて、われにかえる。
「悪い、ボーっとしててな。」
「大丈夫? 多量出血で貧血になっているんじゃ? 」
「ありがとう。だけど問題無い。この通り、意識もしっかりしているよ。」
むしろ、俺は彼らの意識を心配した。
そもそも『意識』とはなんだろうか?
だがコレだけはハッキリしている。
彼らは無意識に生きている。
* * *
鎮痛剤を貰ってから、本堂がいる病室へと入る。
「お勤めご苦労。」
「長官、助けていただき、ありがとうございます。」
俺はなんのことか分からなかった。
「なーに部下の安全を守るのは上司の仕事だよ。」
「彼のパソコンには地図が表示されており、点が赤く点滅している。」
俺の手錠がトラッキングされているのだろう。
つまり長官は、俺の手錠にペナルティが増えたことを察知し、俺たちに身の危険が及んだことに気がついたのだ。
「あまりいい気では、ありませんけどね。」
そりゃそうだろう。
すると本堂は顎でキーボードを操作し(両腕は使えないので。)全ての端末機器の在処を表示した。
「我々も似たようなものだ。」
「この端末たちで、金の動きから心拍数、賢者になった回数まで事細かに記録されている。」
盗聴までされていなかったのが、不幸中の幸いだ。
さすれば、本堂に、鵞利場の言葉を全部聞かれていただろう。
俺も言動には気をつけなくてはいけない。
いつ、誰に俺たちの会話を聞かれているか分からないからだ。
「長官!! 」
かくかくしかじか…鵞利場は、ことの敬意を話した。
本堂は腕を組んで考える。
「ほう、ふーむ。私の酒か。てかなんで君がそんなこと知っているんだよ。」
それから、苦虫を噛み潰し、
「ああ、分かったよ許可しよう。コレも任務のためだ。私の部屋のボトルを一本持ち出すと良い。」
と答えた。
「ありがとうございます。本堂長官。」
俺たちは病室を出た。
「あと、本堂長官。」
長官は訝しそうにこちらを見た。
「なんだね? 」
「早く怪我を治して下さい。」
彼はため息をついた。
「そうなってくれると良いんだけどね。」
「おい、待てよ。オブザーバー。上司さん? 」
彼女は止まらない。
俺は彼女の肩を掴んだ。
[警告:ペナルティ3]
彼女は、俺の手錠のペナルティー数を見ると、無言でゼロに戻した。
「手錠やオブザーバーに危害を加えようとすると、ペナルティが追加されるの。言ってなかったわね。」
「五つ貯まれば、貴方はラストプリズンか、再教育。貴方は間違いなく前者。散々なぶられた挙句、脳髄引っこ抜かれるわ。」
「そんなことはどうだっていい。」
「それより。」
言葉にならない。
俺の語彙力では彼を言葉で表すことが出来なかった。
「アイツは何か嫌だ。アイツと一緒にいるのも、一緒にいるオマエを見るのも。」
彼女は力無く笑った。
「あら、嫉妬かしら? 」
彼女も大麻のことをあまり良く思ってはいない。
とても苦しそうだからだ。
でも彼女は彼の許嫁。
俺は縁談を断った人間がどうなるか知っている。
反逆者……平等社会の秩序を乱すモノ。
九条姉さんもそうだった。
だから俺は彼女にその言葉を伝えることが出来ない。
「ああ、嫉妬だよ。今の言葉、忘れてくれ。」
「アイツ、ほんと嫌い。」
彼女は地面に感情を吐露する。
「縁談の相手だから家のこともあるし、邪険に出来ないけど、アイツの言葉、一語一語を聞くたびに鳥肌が立つし、吐き気がするのよ。」
彼女はため息をついた。
「ごめんなさいね。取り乱しちゃって。」
「昔から嫌だったのよ。アイツのへばり付くようなネチッコい言動が。」
俺は彼女になんて言えばいいのか分からない。
あの頃の俺はガキだったが、また同じ過ちを繰り返すような気がする。
まともに努力して、公安にオブザーバーとして就職すれば、彼女を救えたんだろうが……
「どのような形になっても、俺はお前の味方だ。俺は執行者。お前はオブザーバー…だろ? 」
「……」
彼女がずっと俺の顔を見つめている。
何か変なこと言ったかな。
「アンタ血まみれじゃない。」
言われてみればそうだった。
彼女に指摘されて、全身に激痛が走る。
「イダダダダダ。」
「ほんと情けないわね。」
「あ、もしかして。貴方、痛みに慣れてないの? 」
「だから無能力者に殴られていた時も、仔犬みたいな目で私を見ていたのね。」
全部当たっている。
彼女の言う通りだ。
「痛みなんて、慣れるとか慣れないとかそういう問題じゃ無いだろ? 」
「はぁ。全身防弾チョッキがよく言うわ。」
裏路地から表に出た。
信号が青に変わる。
止まっていた人間社会のメカニズムが、再び動き出す。
俺たちもそれに歩調を合わせる。
誰一人それを乱すものはいない。
彼らは故意に歩調を合わせているわけでは無いのだろう。
人間一人一人が恣意的に動いている……
はずなのである。
彼らはそれに気づいていない。
今、俺が彼らと歩調をズラせば、彼らは一体どんな顔をするだろうか。
「ホラ、病院はこっちよ。」
彼女に手を引かれて、われにかえる。
「悪い、ボーっとしててな。」
「大丈夫? 多量出血で貧血になっているんじゃ? 」
「ありがとう。だけど問題無い。この通り、意識もしっかりしているよ。」
むしろ、俺は彼らの意識を心配した。
そもそも『意識』とはなんだろうか?
だがコレだけはハッキリしている。
彼らは無意識に生きている。
* * *
鎮痛剤を貰ってから、本堂がいる病室へと入る。
「お勤めご苦労。」
「長官、助けていただき、ありがとうございます。」
俺はなんのことか分からなかった。
「なーに部下の安全を守るのは上司の仕事だよ。」
「彼のパソコンには地図が表示されており、点が赤く点滅している。」
俺の手錠がトラッキングされているのだろう。
つまり長官は、俺の手錠にペナルティが増えたことを察知し、俺たちに身の危険が及んだことに気がついたのだ。
「あまりいい気では、ありませんけどね。」
そりゃそうだろう。
すると本堂は顎でキーボードを操作し(両腕は使えないので。)全ての端末機器の在処を表示した。
「我々も似たようなものだ。」
「この端末たちで、金の動きから心拍数、賢者になった回数まで事細かに記録されている。」
盗聴までされていなかったのが、不幸中の幸いだ。
さすれば、本堂に、鵞利場の言葉を全部聞かれていただろう。
俺も言動には気をつけなくてはいけない。
いつ、誰に俺たちの会話を聞かれているか分からないからだ。
「長官!! 」
かくかくしかじか…鵞利場は、ことの敬意を話した。
本堂は腕を組んで考える。
「ほう、ふーむ。私の酒か。てかなんで君がそんなこと知っているんだよ。」
それから、苦虫を噛み潰し、
「ああ、分かったよ許可しよう。コレも任務のためだ。私の部屋のボトルを一本持ち出すと良い。」
と答えた。
「ありがとうございます。本堂長官。」
俺たちは病室を出た。
「あと、本堂長官。」
長官は訝しそうにこちらを見た。
「なんだね? 」
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彼はため息をついた。
「そうなってくれると良いんだけどね。」
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