平等社会(ユートピア)

ぼっち・ちぇりー

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ファイル:1 リべレイター・リベリオン

しんがり

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「なんだぁ。あの公安の数は。」
 俺たちのアジト(仮)の周りを、公安が取り囲んでいた。
「あのマスター、私たちの居場所をゲロった見たいね。後で始末しておかなきゃ。」
 俺は屋上から飛び降りると、公安の電気エンジン車目掛けて急降下した。
「ちょっと!! 何しているの? 」
「お前はそこで見ていろよ西郷。どうせ多人数相手じゃ話に何ねえだろ? 」
 姿勢が崩れ、頭が地面と接吻する準備を始める。
 俺は右手を伸ばし、車をゴムに変えると、その弾性によって、衝撃を吸収させた。
 腕が明後日の方向へと捻じ曲がる。
 アスファルトのヒビが、放射状に広がった。
 左手で折れた右手を治すと、公安バッチをつけた役員らしき人物が、俺の前に出てきた。
「まざかそちらの方からやってくるとはなぁ。摩天楼の錬金術師。」
 大麻好大。
 裏社会の人間でも知らないものはいない。
 弱い奴が公安に捕まる。それはソイツの問題だ。
 ソイツが弱いから捕まった。
 公安に罪はない。
 だがコイツは違った。
 手錠のない能力者を見つけると、多人数で囲んで、捕獲し、手錠をつけると、仲間の居場所を吐かせるという名目で、ストレス発散のために、部下とリンチを行う。
 わざと俺たちに見えるように、民衆を盛り上げるために、見せつけるように。
 それを見て良心を痛めるものなどいない。
 なぜならそれは、俺たちが能力者だからだ。
「よお。お前が大麻好大だな。」
「ぶっ殺してやるよ。」

      * * *

 俺たちがアジトへ来る頃には、公安の部隊は全滅しており仰向けで倒れている大麻もそこにいた。
「大麻だ。」
「見れば分かるでしょ。」
「助けないのか? 」
「そんな義理ないわよ。彼はただ、私の婚約者って言うだけ、それ以上でもそれ以下でもないわ。」
 化学工場の廃墟。
 両隣の建物は、最新式の錆びない金属でできた現代の産物であるのにも関わらず、ここは旧世代の鉄筋コンクリートでできた赤茶色の廃屋。
「奴らはここに? 」
 入口は、人がひとりやっと入れるほどの片扉。
「どうする? 正面からカチ込むか? 」
「もうとっくにバレてるわよ。隠れる必要もない。」
 彼女はそう言うと、俺を手招きした。
「はぁ? 」
「はぁ? じゃないでしょ。ホラ、アンタが先に入る。」
「やっぱりそうなるのか。」
 俺は手錠を外されることもなく、建物の中に押し込まれた。
 トラップは無く、待ち伏せしている様子もない。
 俺たちは忍足でゆっくり忍び寄ると、二階のロフトに、見慣れた機械が鎮座していることに気づく。
「待ってたよ北条さん? 」
 バーで出会った魔眼の能力者の方。
 万城千里だ。
「どうした? 仲間は? 逃げたのか? 」
 彼女は笑顔で答えた。
「ここに残ったのは私の意志。」
「もう一度君と戦って見たかったから。」
 鵞利場がそこで叫んだ。
「リミット・パージ。」
 俺の手錠が解除されて、能力が発動する。
「おい!! 」
 彼女を問答無用で無力化するつもりだ。
 が、彼女は目を押さえることも、血を噴き出させることも、頭を抱えることもなかった。
「九条リーダーの言った通り。君の能力の本質。見えたよ。」
 彼女は袖口から無数の針を指に滑り込ませると、俺の方に突っ込んできた。
"迎え撃つ。"
 【石壁セキヘキ
 石火と筋肉の動きは逆方向。
 関節のバネを利用して、攻撃を受け流す。そう護るための武術。
 しかし、攻撃は俺の防御膜をすり抜けて、拳の第二関節へと届いた。
「ぐッ。」
 滴る鮮血。紅い四つの窪みから、鮮やかな液体が噴き出てきた。
 俺は口でそれを啜ると、再び構え直す。
「大丈夫? 」
 後で鵞利場が心配をしている。
「問題ない。傷はそんなに深くないさ。それにまだ関節も動く。」
 万城は宙返りし、俺たちと距離を取ると、必死に目を凝らしているようであった。
「見えるよ。君の本質。君の思考、あなたの思考。物理法則。建物の外で行われていること。全部見える。」
 目が充血して、瞳孔が開いている。
 彼女がいくら、俺の能力を理解しているからと言って、負荷がかかっていないわけではないのだろう。
 今も、チクチクとダメージが蓄積されていっている筈だ。
「もうやめろ。何のために戦う。」
 彼女は少し口角を上げた。
「戦う理由なんてない。何もない。だから私は戦うの。能力者のあなたになら、分かるでしょ。こんな世界になんて何もないって。」
「だから九条リーダーが『意味のある世界へ行こう。』って言った時は、少しだけ、ほんの少しだけ。何て言うんだろう。そう、心が震えたの。それでね。少しだけ楽になったんだ。」
「私は楽になりたい。君にも理解できるでしょ。手錠のない世界。」
「まざか貴方!! 」
 鵞利場が、ロフトの転移装置に向かうため、階段を登り始めた。
 が、その行動を読んだかのように、万城が、針の一本を、彼女の太ももに通す。
「ガッ。」
「鵞利場!! 」
 右脚を貫通している。
 恐らく神経と筋肉を通っているんだ。
 大動脈は外している? わざとか?
「もちろん。私の役割は足止めだから。君たちを殺すことが目的じゃないの。」
 訳が分からない。
 なぜ、鵞利場は転移装置を目指したのだ?
 リベリオンがどこにも分からないのに。
 逃げた?
 逃げた?
 に・げ・た ?
「君は私の思った通り鈍いんだね。鵞利場さんは一瞬で気がついたよ。」
 そう__
「そう君の思っている通り、リーダーたちは、異世界に逃げたんだ。平等社会のしがらみから逃げるために。」
「君も一緒に逃げない? 君がいてくれた方がリーダーも喜ぶと思うし。」
 階段の上で鵞利場が叫んだ。
「北条、その女に耳を貸すのはやめなさい。これは業務命令よ。」
 俺は右手でそれを退けた。
「北条!! 」
「お前らは、異世界で何をするつもりだ? ここでお前らがやって来たように、殺人、略奪を繰り返すのか? 」
 そこまで言ったところで、万城の堪忍袋のオが切れたようであった。
「どの口が言うのよ。私たちから全て奪おうとしているのは貴方たちじゃない。貴方たちは、何の罪もない人たちを罪人にして、動物のように扱って。それを平和の象徴としているのよ!! 貴方が今、両手につけているものは何よ。なんで貴方たちは自由に生きていけて、私たちはダメなの? ユートピアって何よ。結局、自分より能力のある人間を虐げて、不条理の吐口にしているだけじゃない。」
 彼女は目から真紅の涙を流していた。
「おかしい。」
「何も見えなくなって来た。」
 彼女はその場に泣き崩れると、辺り一体の錆を、赤の液体で上書きする。
「無事、金川さんたちを異世界に送れた。私の役目はここで終わり。」
 外で公安のサイレンが鳴り始める。
 俺は転移装置むけて歩き出した。

 

 
 


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