24 / 107
ファイル:1 リべレイター・リベリオン
休日
しおりを挟む
バシッ
何事だ!!
何かに殴られた?
刺客か?
そこまで意識が覚醒したところで、昨日俺は新居で床に就いたことを思い出した。
となると、今俺のことを殴っているのは、オブザーバー様だろう。
「もうちょっと寝かしてくれ。」
「ギューギュー。」
手首が元すごい力で締め上げられる。
「アイタタタタ。」
ベットから飛び上がる。
鵞利場はというと、俺の腹部を思いっきり蹴り上げ
「アガッ。」
宙返りすると、そのまま床に着地した。
「やっと起きた。」
「おい、さっきからよ。起こすにしても限度があるだろうが。ちょっとは気を遣えよ。」
「起きないアンタが悪いでしょ。ほら顔洗ってきて。日が暮れちゃうでしょ。」
んだって俺が。一人で行けばいいだろうと思ったが、俺はそこで考え直した。
彼女の身長はおよそ百三十センチ、一人で買い物をしていると、何かと不便なんだろうな。
と考えてから、だったらネット通販で良くね? と考え直してしまう。
だが、多分彼女にそれを言ったら怒られるので(鵞利場との接し方が分かってきた。)彼女に同行しようと思う。
どっちにしろ俺に休日の予定なんてない。
これまでも仕事で休暇が入れば、やることは昼寝だけだし(休日に何かアクションを起こすほど体力が残っていなかった。)、いい機会だろう。
相手が、この暴力女だということを除けば。
俺たちはマンションを後にすると、地下鉄が先の一件で使えなくなっているので、国営バスに乗る。
そして停留所を四つほどで、ショッピングモールの前に着いた。
俺たちは二人並んでショッピングモールの巨大な入り口をくぐる。
「なぁ鵞利場さんよ。買い物にはいつも誰かに同行してもらっているのか? 」
「仕方ないでしょ。この体じゃ、袋一つもまともに持てないんだから。」
怒らせてしまった。
「いつもは、宜野座さんか本堂長官がついてきてくれるわ。どっちかが暇な時間に。」
宜野座はまだ想像がつくが、本堂が鵞利場の買い物を手伝っていることは意外だった。
「宜野座さんはまだしも、長官がか? 」
「『部下の生活水準を守るのが上司の仕事だよキミィ。』だって。宜野座さんには服を見てもらって、本堂長官には食品を見てもらっているわ。」
「長官が食品なぁ。不安しかないんだが。」
「んもぉ。隙あらばプロテインなんだから『鵞利場くんは小さい。もっと筋肉をつけなさい。でなければ、立派な天鵝流の使い手にはなれないよ。』とか失礼しちゃうわ。」
「鵞利場は小さく無いよ。」
「アンタに同情されるとかムカつく!! 」
鵞利場は多分俺より強い。
彼女と会ったあの日、無能力者にリンチされた時、確信した。
洗練された彼女の流派は既に修羅の域に達している。
「でも助かったわ。今日はアンタが来てくれて。服にせよ日用品にせよ、無駄な遠慮が無くて済むから。」
無論、俺にはファッションセンスが無いし、栄養士の資格もない。
「んじゃ今日は荷物持ちよろしくね。」
「っぱりそうなるのかよ。」
俺は大麻のことが気になって、聞こうとしたが、やめておいた。
どうやら彼は、彼女の買い物に付き合うつもりなど微塵もないのであろう。
「やっぱり殺風景よね、店員がいないお店っていうのは。」
それは俺も同感だった。
高度なAIの発展にて、ここ百年間、接客業という職業は衰退の一途を辿っている。
アンドロイドという自立型AIが登場した当時は、街に失業者が溢れ、仕事をアンドロイドに奪われた人たちが、毎日のように、デモを行っていたらしい。
それも今は、IT業界の目玉、P.A社の公共事業や、失業者の雇入れによって、徐々に落ち着きを見せたらしいが。
これも、平等社会がIT大国となった所以だ。
だがそれでも、人々は人の温かみを求めている。
国営の鉄道には、相変わらず、生身の人間が乗せられているし、病院だってそう。
俺たちが入院した市民病院でも、未だに医者と看護士は、アンドロイドで代替されることはなく、日々、人々を看取っている。
今日でも、サービス業に勤しむ勤勉な人間は少なからず存在し、彼らは顧客に、人の温かみを提供しているのだ。
散々、洋服屋を連れ回された後、日用品と食品の買いだめを手伝わされた後、本堂から鵞利場の端末にメッセージが届く。
彼女はその長ったらしい文面を見るとため息をついた。
「はー、せっかくの休日なのに…… 」
「仕事か? 」
「そうよ。護衛の人手が足りなくなったんですって。」
護衛というのは、もちろん異世界人のことであろう。
「行くのか? 」
「当たり前でしょ。仕方ないわ。公安で働いているんだから、こういう事はしょっちゅう起きるの。急に人手が足りなくなって、非番の日に仕事が入ること。」
「ブラックだな。」
まぁそうも言っていられないだろう。彼女の労働水準を守れば守るほど、社会の秩序を乱してしまうのだから。
それだけ俺たちは、責任の重い仕事をしているのだ。
本堂だって休日に、こんなメッセージは送りたくなかったはずだ。
「さぁ帰るわよ。明日は現地に直行。出社はしなくていいらしいから。」
「ふぁーい。」
かくして、俺たちの一日限りの休日は幕を閉じた。
何事だ!!
何かに殴られた?
刺客か?
そこまで意識が覚醒したところで、昨日俺は新居で床に就いたことを思い出した。
となると、今俺のことを殴っているのは、オブザーバー様だろう。
「もうちょっと寝かしてくれ。」
「ギューギュー。」
手首が元すごい力で締め上げられる。
「アイタタタタ。」
ベットから飛び上がる。
鵞利場はというと、俺の腹部を思いっきり蹴り上げ
「アガッ。」
宙返りすると、そのまま床に着地した。
「やっと起きた。」
「おい、さっきからよ。起こすにしても限度があるだろうが。ちょっとは気を遣えよ。」
「起きないアンタが悪いでしょ。ほら顔洗ってきて。日が暮れちゃうでしょ。」
んだって俺が。一人で行けばいいだろうと思ったが、俺はそこで考え直した。
彼女の身長はおよそ百三十センチ、一人で買い物をしていると、何かと不便なんだろうな。
と考えてから、だったらネット通販で良くね? と考え直してしまう。
だが、多分彼女にそれを言ったら怒られるので(鵞利場との接し方が分かってきた。)彼女に同行しようと思う。
どっちにしろ俺に休日の予定なんてない。
これまでも仕事で休暇が入れば、やることは昼寝だけだし(休日に何かアクションを起こすほど体力が残っていなかった。)、いい機会だろう。
相手が、この暴力女だということを除けば。
俺たちはマンションを後にすると、地下鉄が先の一件で使えなくなっているので、国営バスに乗る。
そして停留所を四つほどで、ショッピングモールの前に着いた。
俺たちは二人並んでショッピングモールの巨大な入り口をくぐる。
「なぁ鵞利場さんよ。買い物にはいつも誰かに同行してもらっているのか? 」
「仕方ないでしょ。この体じゃ、袋一つもまともに持てないんだから。」
怒らせてしまった。
「いつもは、宜野座さんか本堂長官がついてきてくれるわ。どっちかが暇な時間に。」
宜野座はまだ想像がつくが、本堂が鵞利場の買い物を手伝っていることは意外だった。
「宜野座さんはまだしも、長官がか? 」
「『部下の生活水準を守るのが上司の仕事だよキミィ。』だって。宜野座さんには服を見てもらって、本堂長官には食品を見てもらっているわ。」
「長官が食品なぁ。不安しかないんだが。」
「んもぉ。隙あらばプロテインなんだから『鵞利場くんは小さい。もっと筋肉をつけなさい。でなければ、立派な天鵝流の使い手にはなれないよ。』とか失礼しちゃうわ。」
「鵞利場は小さく無いよ。」
「アンタに同情されるとかムカつく!! 」
鵞利場は多分俺より強い。
彼女と会ったあの日、無能力者にリンチされた時、確信した。
洗練された彼女の流派は既に修羅の域に達している。
「でも助かったわ。今日はアンタが来てくれて。服にせよ日用品にせよ、無駄な遠慮が無くて済むから。」
無論、俺にはファッションセンスが無いし、栄養士の資格もない。
「んじゃ今日は荷物持ちよろしくね。」
「っぱりそうなるのかよ。」
俺は大麻のことが気になって、聞こうとしたが、やめておいた。
どうやら彼は、彼女の買い物に付き合うつもりなど微塵もないのであろう。
「やっぱり殺風景よね、店員がいないお店っていうのは。」
それは俺も同感だった。
高度なAIの発展にて、ここ百年間、接客業という職業は衰退の一途を辿っている。
アンドロイドという自立型AIが登場した当時は、街に失業者が溢れ、仕事をアンドロイドに奪われた人たちが、毎日のように、デモを行っていたらしい。
それも今は、IT業界の目玉、P.A社の公共事業や、失業者の雇入れによって、徐々に落ち着きを見せたらしいが。
これも、平等社会がIT大国となった所以だ。
だがそれでも、人々は人の温かみを求めている。
国営の鉄道には、相変わらず、生身の人間が乗せられているし、病院だってそう。
俺たちが入院した市民病院でも、未だに医者と看護士は、アンドロイドで代替されることはなく、日々、人々を看取っている。
今日でも、サービス業に勤しむ勤勉な人間は少なからず存在し、彼らは顧客に、人の温かみを提供しているのだ。
散々、洋服屋を連れ回された後、日用品と食品の買いだめを手伝わされた後、本堂から鵞利場の端末にメッセージが届く。
彼女はその長ったらしい文面を見るとため息をついた。
「はー、せっかくの休日なのに…… 」
「仕事か? 」
「そうよ。護衛の人手が足りなくなったんですって。」
護衛というのは、もちろん異世界人のことであろう。
「行くのか? 」
「当たり前でしょ。仕方ないわ。公安で働いているんだから、こういう事はしょっちゅう起きるの。急に人手が足りなくなって、非番の日に仕事が入ること。」
「ブラックだな。」
まぁそうも言っていられないだろう。彼女の労働水準を守れば守るほど、社会の秩序を乱してしまうのだから。
それだけ俺たちは、責任の重い仕事をしているのだ。
本堂だって休日に、こんなメッセージは送りたくなかったはずだ。
「さぁ帰るわよ。明日は現地に直行。出社はしなくていいらしいから。」
「ふぁーい。」
かくして、俺たちの一日限りの休日は幕を閉じた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
草食系ヴァンパイアはどうしていいのか分からない!!
アキナヌカ
ファンタジー
ある時、ある場所、ある瞬間に、何故だか文字通りの草食系ヴァンパイアが誕生した。
思いつくのは草刈りとか、森林を枯らして開拓とか、それが実は俺の天職なのか!?
生まれてしまったものは仕方がない、俺が何をすればいいのかは分からない!
なってしまった草食系とはいえヴァンパイア人生、楽しくいろいろやってみようか!!
◇以前に別名で連載していた『草食系ヴァンパイアは何をしていいのかわからない!!』の再連載となります。この度、完結いたしました!!ありがとうございます!!評価・感想などまだまだおまちしています。ピクシブ、カクヨム、小説家になろうにも投稿しています◇
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
四人の令嬢と公爵と
オゾン層
恋愛
「貴様らのような田舎娘は性根が腐っている」
ガルシア辺境伯の令嬢である4人の姉妹は、アミーレア国の王太子の婚約候補者として今の今まで王太子に尽くしていた。国王からも認められた有力な婚約候補者であったにも関わらず、無知なロズワート王太子にある日婚約解消を一方的に告げられ、挙げ句の果てに同じく婚約候補者であったクラシウス男爵の令嬢であるアレッサ嬢の企みによって冤罪をかけられ、隣国を治める『化物公爵』の婚約者として輿入という名目の国外追放を受けてしまう。
人間以外の種族で溢れた隣国ベルフェナールにいるとされる化物公爵ことラヴェルト公爵の兄弟はその恐ろしい容姿から他国からも黒い噂が絶えず、ガルシア姉妹は怯えながらも覚悟を決めてベルフェナール国へと足を踏み入れるが……
「おはよう。よく眠れたかな」
「お前すごく可愛いな!!」
「花がよく似合うね」
「どうか今日も共に過ごしてほしい」
彼らは見た目に反し、誠実で純愛な兄弟だった。
一方追放を告げられたアミーレア王国では、ガルシア辺境伯令嬢との婚約解消を聞きつけた国王がロズワート王太子に対して右ストレートをかましていた。
※初ジャンルの小説なので不自然な点が多いかもしれませんがご了承ください
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる