平等社会(ユートピア)

ぼっち・ちぇりー

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ファイル:1 リべレイター・リベリオン

帰宅

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 自宅に帰ってきた俺たちは、マンションの入り口でそれぞれ端末をかざして中に入る。
「そういや、アクシデントが立て続けにあったことで、自宅に帰れたのは何日振りかしら? 」
 そういや二週間とちょっと前、朝初出社で転移装置の輸送任務に失敗し、そのまま病院送りになったと思えば、次は立て続けにリベリオンの居場所の操作、そのまま大麻に連れ去られたので、その間、ここへ帰ってくることは無かった。
 鵞利場も万城にケガをさせられていたし、あの後すぐに病院送りになったのだろう。
 一週間に二回病院送りになるなど、犯罪課の仕事は命懸けだなぁ~と思っていたが、まぁ生きているだけまだマシだろう。
 犯罪課にどれだけ殉職者がいるかは知らないが、俺たちは、あのリベリオンに幾度もチョッカイをだし、五体満足で帰ってこれた。
 それだけで良い。
「何しているの? アンタの自宅はあっちでしょ? 」
 一瞬彼女は何を言っているのか分からなかったが、すぐに状況を理解すると、恐る恐る隣の部屋の錠前に手錠を近づけてみる。
   ピピ
 地下鉄の改札と似たような音が鳴り、俺の新居の扉がガチャリと音を立てて開いた。
「おお、すげぇ。」
「本堂長官が言ってたでしょ。すぐに新しい部屋を手配するって。」
「ああ、センキューな鵞利場。また長官にもお礼を言っておかないとな。」
 彼女は喜びつつも複雑な表情をしているようであり、俺に疑問を投げかけた。
「そんなに嬉しい?自分の部屋が? 」
「ああ、そりゃな。裏社会の寝床はいつ俺に恨みを持った人間が入ってくるか分からなかったし、いつ公安が俺の寝床を突き止めるか分からなかった。んなんで枕を高くして眠れなかったもんよ。」
 ピピッ
 鵞利場が俺の部屋の鍵に端末をかざした。
「……俺のプライベート空間を侵害しないでくれ。」
「……あと、そう言うのやめて。せっかく一人になれると思ってウキウキしていたところに、その気持ちを踏み躙るかのように、土足でズカズカと入ってこられると萎むじゃん。」
「当たり前でしょ。私はオブザーバーなんだから、貴方の言動一つ一つを監視しておく義務があるの。」
「そんなぁ。」
「そんなに心配しなくても、貴方の言動は常に公安の人間が24時間体制で監視しているんだから。」
「仮病使って職務放棄したり、寝坊して出社を諦めて二度寝したり、何か良からぬことを考えていたりしていれば、すぐに公安へと通報が入るんだから。」
「あの、俺に人権は? 」
「犯罪者に人権なんてありません。」
 俺はため息をつくと、そのまま備え付けのベットに倒れ込んだ。
「コラっ先にお風呂に入りなさい。汚いでしょ。」
「お前は俺のかーちゃんか? 」
「オブザーバーよ失礼ね。」
 クソッタレ。
 リビングに服を脱ぎ捨てスッポンポンになると
「ちょっと、やめなさい行儀悪いでしょ。」
 洗面所に直行する。
「どうした? 監視がアンタの仕事じゃ無かったのか? 」
「サイッテイ死ね。」
 半ば慣れてきた言葉の暴力を聞き流すと、浴室で蛇口を捻る。
 何日振りかの幸福の雨。
 冷たい雨は、次第に暖かいスコールへと変わっていった。
 雨に撃たれてここ一週間に起こったことを思い返す。
 疲労も悔恨も心傷も、全て、この祝福が洗い流してくれる。
 ああ、シャワーよ永遠なれ。
「キモい、壁が薄いから聞こえているのよ。喘ぐのやめてくれるかしら。」
 チクチク言葉が、俺の絶頂の邪魔をする。
 現実世界に引き戻された俺は、急に正気に戻ると体を洗い始めた。
 やっぱり湯船に浸からないと落ち着かないな。
 とはいえ、毎日銭湯に行くほどの資金もない。
 洗面所に出ると、全方位から温かな風が噴出され、俺の身体の水分を飛ばす。
「アバババババ。」
「なんだこれすげぇ。」
「腹減ったなぁ。」
 俺は監視されていることもお構いなしに、冷蔵庫を漁り始めた。
 冷凍食品がいくつかある。
 多分、鵞利場が買っておいてくれたのであろう。
「これが美味そうだ。」
 五目ごはんらしき袋を取り出すと、それを袋ごとレンジに放り込んだ。
[やめて、レンジが壊れるから。]
 当然のように鵞利場が横槍を入れてくる。
「んならどうすれば良いんだよ。ここにはレンジ調理ってちゃんと書いてあるぞ。」
[ったくそんなことも知らないの? アルミはレンジに入れたら燃えちゃうわよ。]
[お皿に移して温めるの。ちゃんと書いてあるでしょ。]
「ほんとだぁ。」
 戸棚から皿を取り出すと、五目ごはんの袋を開けて、中身をパラパラと盛り付ける。
 レンジにぶち込んで7分加熱した。
 タンスから囚人服を取り出すと、身につけ、脱ぎ散らかした服を洗濯機に突っ込んで扉を閉める。
 ベットに倒れ込むと、これからのことを考えた。
 頭上の手錠を見上げる。
 最初は違和感があったが、今はコレも身体の一部のように思えてくる。
 俺はこれから一生この鎖を外せずに暮らしていくことになるのだろうか?
 自分でそのことについてどう思っているのか、自分でも分からなかった。
 気が遠くなりそうだ。
 三十年後自分はどうしているかなんて分からない。
 なんか考えても無駄な気がするな。
「ピーピーピー」
 晩飯が出来た音がしたので、レンジの扉を開ける。
「アツッアツ。」
 思ったより皿が温まっている。
 そして肝心な五目ごはんはというと、あまり温まっていなかった。
 晩飯をかきこむと、皿洗い。
 そのままベットに倒れ込む。
 とりあえず二日後の決戦だな。
 まずそこから。
 zzzzzzzzzzzzzzz


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