平等社会(ユートピア)

ぼっち・ちぇりー

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ファイル:1 リべレイター・リベリオン

安田倫子

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 俺たちと異世界人は、アリーナの中央で、向かい合う形で整列している。
 彼らは先述した通り、全員武器を持っている。
 風貌も様々で、背中に槍、腰には刀を携えたサムライ? そう玉鉄と似た服を着た男や、額に宝石をつけた褐色の女、キモノ? を着た黒髪の女に、テレビに出てくる西洋貴族? のような変わった服を着た青年、そして……
 軍服を着て、変わった武器を持つ青年。
 彼の左額にはコブのようなものが存在する。
 かつてそこには何かが生えていたと、彼の額のそれは、そう主張していた。
「鬼? 」
 俺は一瞬そう思ったが、そんなはずはない。
 鬼は旧大和帝国より伝わりし幻獣、そうだ、空想上の生き物。
 異世界には、そう言った生物、ドラゴンや吸血鬼、悪魔と言った存在も……
 そして、本堂の指示で黒澄という女が連れて来られる。
 彼らをもっと知りたいという気持ちと、彼らに勝たなくてはならないという気持ちが混濁した。
 そして……
 最終的に勝った気持ちは、それより大きな、「彼らと闘いたい。」という気持ちが強くなり、拳をグッと握り締める。
 俺たちは再び控室に戻された。
 控室の窓からは、サムライ野郎と、玉鉄が向かい合い、静寂を保っている。
「すっかりあの鬼狩りに夢中だな、奴は。」
 金川が窓際で頬に肘を着き、答えた。
「お前は違うのか、金川。」
 彼は少しばかり驚くと、そっぽを向いた。
「お前には関係ねえ。」
「俺は……奴らと戦いたい。」
 彼はポカンと口を開けてから、それからもう一度窓を見た。
「そうかよ好きにしろ。」
 鵞利場は、部屋の隅で瞑想している。俺は話しかけるのを止めると、トイレに行くとこにした。
 部屋を出る間際、金川が
「お前も、俺と同じ能力者なんだな。」
 そう呟いた気がする。
 廊下に出る。
 廊下は大きく左に曲がっている。
 アリーナが楕円形だからそれは当然であるのだが。
 俺はそのカーブの先にある化粧室を目指す。
「ハーイ北条さん? 」
 カチャッ。
 冷たい金属のセーフティーが解かれる音、
「リミット・パージ。」
 俺の能力が解放されると共に、脳天に銃弾がぶち込まれる。
「ぐっ。」
 もちろん能力で銃弾が貫通することはない。
 その反動で頭から吹き飛ばされる。
 脳が揺れて、視界が一瞬ぶれる。
「お前、誰だ? 」
「まざか、昨日、護衛の時に襲ってきたアンドロイド……それを動かしていたのはアンタか? 」
「ふーん。なにそれ。気になる。」
 視界が回復し、立ち上がり、俺は襲撃者を見た。
「私は公安、刑事課の安田倫子。」
「早速手合わせ願おうかしら。」
 刺客か? 何のために? 大麻からの?
 ならなぜ俺の手錠を解いた?
 訳が分からない。
 厄介な相手とは、俺に私怨を持つ奴とか、能力者に交戦的な戦闘マニアとかそういうモノではなくて、理由も目的も不明瞭なまま、訳も分からず殴りかかってくる奴らだ。
 彼女は手のひらで、軽快なサイドエフェクトと共に、サブマシンガンを作り出した。
 腕の腕輪……
 間違いない、彼女はスキルホルダーだ。
「それがアンタの能力か? 効果音はアンタの趣味か? 」
「そうよ。可愛いでしょ。」
 さっきのあの銃は、あらかじめ生成して置いたモノだろう。それか、護身用に彼女が元から所持していたモノ。
 彼女が両手の銃を構える。
 俺は左壁向けて走り出し、跳躍すると、壁に足をつけ、走り出した。
 それを彼女がなぞるように銃口で追いかけてくる。
 二丁のサブマシンガンを片手で制御している。
 並みの人間ができる芸当ではなかった、
 そんなことすれば、肘を痛めるか、最悪の場合脱臼する。
 しかし、彼女は肘をはまだしも、身体の重心すら移動していなかった。
 彼女に攻撃が届く範囲まで距離を詰めた俺は、右足で彼女を蹴り飛ばす。
 彼女は両手の銃を投げ捨てると、肘に仕込んでいたガータでそれを受け止める。
 弾き返された。
 反動で俺の体が反対方向に回転する。
 その威力を利用し、今度は左脚で、踵落としを放った。
 彼女は左手でそれをガッチリ掴むと、俺をぶん回し、投げ捨てた。 
 俺が触れられるなんて。
 金川の時の反省を活かして、歩く時以外は、足裏にも能力を発動させている。
 それを彼女は素手で掴んだ。
 よく見ると、指が明後日の方向に曲がっている。
 アリーナの廊下でピンボールのように跳ねながら、少しずつ体勢を立て直し、手と脚で勢いを殺しながら、地面に着地した。
「驚いたわね。国際政府お手製の義手なんだけど、ちょっと能力に触れただけで、こんなふうに曲がっちゃうなんて。」
 彼女はそう言って、指を右手で無理矢理元に戻すと、グーパーを繰り返して、異常がないか確かめた。
「なんなんだアンタは。」
「なんでもいいでしょ。」
 彼女は耳元でそう囁くと、こっそりポケットに紙切れを入れてきた。
「読んでね。試合が終わってからでいいから。」
 腰が抜ける。
 一体なんだっていうんだあの女は……
 再び手錠にロックがかかる。
 俺はトイレを済ませると、控室に戻った。
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