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ファイル:1 リべレイター・リベリオン
カーミラ・ブレイク
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気持ちを入れ替えて、用をたしてきた俺が控室に戻ると、ちょうど鵞利場が帰ってきた。
「勝ったわよ北条。玉鉄も金川も負けた。その意味が分かるわね。」
二つ黒星が付いている。
ということは、俺が負けた時点で、俺たち能力者は異世界人に敗北するということだ。
俺がここで負ければ、世界の命運が危ない。
それより、鵞利場はまだしも、玉鉄たちや、俺はラストプリズン送りになる可能性だってある。
だが、俺にはそんなこと、もう眼中には無かった。
玉鉄や金川を下した手練れたち、ソイツらと戦いたい。
その一心だ。
俺は彼女に促されるがままに、転送ゲートへと乗った。
アリーナに入るや否や、罵倒や、嘲笑や、熱気など、いろいろな感情の混じった言葉が四方八方から飛び回っていることに気がつく。
そして向かいで、貴族の服を着た青年と白衣の少女が、俺の前に立っている。
まだ俺より若い。
そんな子供にどんな力があるのか俺は知りたかった。
「相手はお前か。そのなんだ? アンタらにもアンタらの大義名分があるだろうけど。その。すまんな。」
青年は少し広角が上がった、そんな気がした。
「そっちそこ。遠慮はいらない。全力でかかってきて。僕、とっても強いから。」
腰から、金色の頭身を引き抜く。
それから横の少女の手を取ると、彼女は青年の中に吸い込まれていった。
「よし、準備は終わったみたいだな。そろそろ始めるぜ。」
無意識に俺の口から出た言葉、それほどまでに、俺は彼との戦いを待ち望んでいたのだろう。
能力や、武術の性質上、俺は敵の攻撃を見てから動くこともできる。
彼がどのような能力を使うのかが知りたかった。
青年が剣の鋒を俺の方へと向けてくる。
少し遅れて、隆起した石の刃が俺を襲った。
足裏に意識を集中し、攻撃から身を守る。
地下鉄の時みたいに、足元を能力で破壊しないように。
いきなり、文字通り足首を挫かれた俺は、困惑した。
俺の弱点がバレている?
いや、彼の能力が大地を操るモノだと、そう考えた方がまだ現実的だ。
砂煙が去る。
俺を心配しているマヌケな青年の顔が現れた。
「そんな遠慮はいらねえよ。俺は別に構わんがよ。そういうの嫌いな奴もいるから気をつけろよ。」
てっきり砂煙に紛れて奇襲をかけるのかと思ったら、彼にそんな気など無かった。
今ので決着がつくと思っていたのだ。
多分、俺が丸腰だったからだろう。
「んなら、今度は俺のばんだな。」
足に力を込めて、彼との距離を一瞬で詰める。
が、彼も、その体格からは想像できないような速さで、俺について来た。
右ストレート、左のボディーブローから右膝、左回し蹴り、そこで彼がまた剣を振り翳したので、それを両腕でガッチリ受け止めると、懐に石火を放つ。
思った通りだ。彼は俺の攻撃を受け止めた。
その剣で。
「なるほど、感が良いのか。」
左に回り込んで、彼の脇腹を蹴飛ばす。
今度は手応えがあった。
肋骨が何本か逝っただろう。
だが彼は戦意を喪失させてなどいなかった。
再び剣を構え直すと、
---crack---
青年は一瞬で俺の前まで距離を詰める。
見えなかった。
俺の視認できる速さを超えていたのだ。
手のひらでは間に合わないので、肘で腹部を守る。
だが、この感覚、そうだ万城の時と同じ、
"斬られる!! "
いい加減、傷を受けることには慣れて来たが、どうもこの不快な感覚に慣れることは出来なかった。
「やってくれるじゃねえか。」
「君の能力は次元を隔てるシールドを作ること。違うかい? 」
「へ? そうなの? 」
俺は自分の能力の正体をまだ知らない。
両親も、俺の能力はよくわからないモノだと言っていたし、医者も俺の能力に首を傾げていた。
ただ北条家で、それも分家で、歪な能力の使い手が生まれたと言うことで、本家からも、他の条家からも、公安からも危険視されていた。
能力云々ということよりも、自分が他者の痛みを共感できないことに……だ。
「これは生まれつきだからな。よくわからんのよ。」
だが両親は、俺にこう言った。『北条家きっての逸材だ。』『あなたは条家の誰よりも強くなって、北条家の誇りになりなさい。』と。
今度は的確に俺を捕らえている。
そうだ。青年は、その澄みきった眼で俺を捕らえている。
---Flood---
地、風と来て、今度は水か。
それもさっきのそれとはまるで比べものにならない規模のそれだ。
俺は左脚でブレーキをかけると、右腕を弾き絞り、守りの体勢に入る
「【天岩流】」
「【拾ノ岩】」
【シールド・オブ・ラウンド】
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ。」
俺を襲う水の龍を、拳一つで隔てる。
---solus integration---
今度は太陽、もうなんでもアリだった。
彼の鋒から放たれるレーザーを回転して左に逸らすと、そのまま俺は最後の大技を放つことを決めた。
「【裏天岩流】」「separator!! 」
「【拾ノ岩】」「分裂しろエクスカリバー!! 」
【ショック・オブ・ラウンド】---nights of the round---
能力を拳一点に集中させて、彼へと突き立てる。
残像が見える。
幾つもの青年の残像が。
分けられた金色の剣が十三に分かれ、その一本一本が、俺を本気で斬りにきていた。
だが、俺も負けるわけにはいかねえんだよぉぉぉぉぉぉ。
全てをこの拳一本で押し返す。
空も海も大地も太陽も……
火も水も風も光も闇も……
時空も次元さえも……
そして金色を砕く。
俺は満身創痍でなんとか立っていた。
青年は満身創痍で倒れている。
俺が彼に手を差し出した。
「勝ったわよ北条。玉鉄も金川も負けた。その意味が分かるわね。」
二つ黒星が付いている。
ということは、俺が負けた時点で、俺たち能力者は異世界人に敗北するということだ。
俺がここで負ければ、世界の命運が危ない。
それより、鵞利場はまだしも、玉鉄たちや、俺はラストプリズン送りになる可能性だってある。
だが、俺にはそんなこと、もう眼中には無かった。
玉鉄や金川を下した手練れたち、ソイツらと戦いたい。
その一心だ。
俺は彼女に促されるがままに、転送ゲートへと乗った。
アリーナに入るや否や、罵倒や、嘲笑や、熱気など、いろいろな感情の混じった言葉が四方八方から飛び回っていることに気がつく。
そして向かいで、貴族の服を着た青年と白衣の少女が、俺の前に立っている。
まだ俺より若い。
そんな子供にどんな力があるのか俺は知りたかった。
「相手はお前か。そのなんだ? アンタらにもアンタらの大義名分があるだろうけど。その。すまんな。」
青年は少し広角が上がった、そんな気がした。
「そっちそこ。遠慮はいらない。全力でかかってきて。僕、とっても強いから。」
腰から、金色の頭身を引き抜く。
それから横の少女の手を取ると、彼女は青年の中に吸い込まれていった。
「よし、準備は終わったみたいだな。そろそろ始めるぜ。」
無意識に俺の口から出た言葉、それほどまでに、俺は彼との戦いを待ち望んでいたのだろう。
能力や、武術の性質上、俺は敵の攻撃を見てから動くこともできる。
彼がどのような能力を使うのかが知りたかった。
青年が剣の鋒を俺の方へと向けてくる。
少し遅れて、隆起した石の刃が俺を襲った。
足裏に意識を集中し、攻撃から身を守る。
地下鉄の時みたいに、足元を能力で破壊しないように。
いきなり、文字通り足首を挫かれた俺は、困惑した。
俺の弱点がバレている?
いや、彼の能力が大地を操るモノだと、そう考えた方がまだ現実的だ。
砂煙が去る。
俺を心配しているマヌケな青年の顔が現れた。
「そんな遠慮はいらねえよ。俺は別に構わんがよ。そういうの嫌いな奴もいるから気をつけろよ。」
てっきり砂煙に紛れて奇襲をかけるのかと思ったら、彼にそんな気など無かった。
今ので決着がつくと思っていたのだ。
多分、俺が丸腰だったからだろう。
「んなら、今度は俺のばんだな。」
足に力を込めて、彼との距離を一瞬で詰める。
が、彼も、その体格からは想像できないような速さで、俺について来た。
右ストレート、左のボディーブローから右膝、左回し蹴り、そこで彼がまた剣を振り翳したので、それを両腕でガッチリ受け止めると、懐に石火を放つ。
思った通りだ。彼は俺の攻撃を受け止めた。
その剣で。
「なるほど、感が良いのか。」
左に回り込んで、彼の脇腹を蹴飛ばす。
今度は手応えがあった。
肋骨が何本か逝っただろう。
だが彼は戦意を喪失させてなどいなかった。
再び剣を構え直すと、
---crack---
青年は一瞬で俺の前まで距離を詰める。
見えなかった。
俺の視認できる速さを超えていたのだ。
手のひらでは間に合わないので、肘で腹部を守る。
だが、この感覚、そうだ万城の時と同じ、
"斬られる!! "
いい加減、傷を受けることには慣れて来たが、どうもこの不快な感覚に慣れることは出来なかった。
「やってくれるじゃねえか。」
「君の能力は次元を隔てるシールドを作ること。違うかい? 」
「へ? そうなの? 」
俺は自分の能力の正体をまだ知らない。
両親も、俺の能力はよくわからないモノだと言っていたし、医者も俺の能力に首を傾げていた。
ただ北条家で、それも分家で、歪な能力の使い手が生まれたと言うことで、本家からも、他の条家からも、公安からも危険視されていた。
能力云々ということよりも、自分が他者の痛みを共感できないことに……だ。
「これは生まれつきだからな。よくわからんのよ。」
だが両親は、俺にこう言った。『北条家きっての逸材だ。』『あなたは条家の誰よりも強くなって、北条家の誇りになりなさい。』と。
今度は的確に俺を捕らえている。
そうだ。青年は、その澄みきった眼で俺を捕らえている。
---Flood---
地、風と来て、今度は水か。
それもさっきのそれとはまるで比べものにならない規模のそれだ。
俺は左脚でブレーキをかけると、右腕を弾き絞り、守りの体勢に入る
「【天岩流】」
「【拾ノ岩】」
【シールド・オブ・ラウンド】
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ。」
俺を襲う水の龍を、拳一つで隔てる。
---solus integration---
今度は太陽、もうなんでもアリだった。
彼の鋒から放たれるレーザーを回転して左に逸らすと、そのまま俺は最後の大技を放つことを決めた。
「【裏天岩流】」「separator!! 」
「【拾ノ岩】」「分裂しろエクスカリバー!! 」
【ショック・オブ・ラウンド】---nights of the round---
能力を拳一点に集中させて、彼へと突き立てる。
残像が見える。
幾つもの青年の残像が。
分けられた金色の剣が十三に分かれ、その一本一本が、俺を本気で斬りにきていた。
だが、俺も負けるわけにはいかねえんだよぉぉぉぉぉぉ。
全てをこの拳一本で押し返す。
空も海も大地も太陽も……
火も水も風も光も闇も……
時空も次元さえも……
そして金色を砕く。
俺は満身創痍でなんとか立っていた。
青年は満身創痍で倒れている。
俺が彼に手を差し出した。
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