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ファイル:2幻略結婚
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「なぁ俺の知り合いの情報屋がいるんだが。」
彼女はハンドルを握りながら、横目で俺を見た。
「辞めておきなさい。彼は大麻に押されられている。それはあなたが一番よく知っていることでしょ? 」
「万が一彼が無事だったとしても、彼は口を割らないわ。何故だか分かるでしょ? 」
マスターは、彼を畏怖していた。あの強面のマスターがだ。
彼を責めているわけではない。
俺だって彼の立場ならそうなる。
俺は本堂に、この手枷を付けられた時のことを思い出して、身震いした。
「あら、嫌なことでも思いださせちゃったかしら。ごめんなさいね。せっかくのドライブデートなのに。」
「いや、ドライブデートは中止だ。」
「……ハッキングかしら。」
どうやらハンドルをパクられたようだ。
細い糸のような物も見当たらない。
無線での遠隔操作だ。
まぁこの状況なら、わざわざ隠す必要も無いか。
「おい、手錠を外してくれ。俺が行ってくる。」
「私ねぇ。ペットには首輪をつけておくのがセオリーなの。昔飼い犬に噛まれたことがあってね。」
「俺はアンタのペットじゃない。番犬だ。」
「じゃあ尚更だわ。」
「……試してみるか? 」
どちらにせよこの状況で俺の手錠を外さざるおえないはずだ。
彼女が能力を使うのも良い。だが、そうすると俺が車を運転することになる。
「ガチャ…… 」
今はもう聞き飽きた、その文言と共に、俺の手錠はメカニカルな音を立てて外れた。
いつもの懐かしい感覚が戻ってくる。
俺は飛び上がり、建物の壁を走ると、屋上でハッキングをしている業務用のロボに襲い掛かる。
右ストレートでそのうちの一つを殴ると、左に回り込み、俺を囲もうとしていたもう一台を、パンチの余力で反時計回りに捻っている体勢を利用し、右足を軸にすると、左足で回し蹴りを放つ。
横目で、ロボが大きく後方へと吹っ飛んだのを見た。
最後のロボが逃げた。
このまま安田だけでも連れ去るつもりだろう。
俺はロボットの前に回り込むと、彼の頭上に、脳天チョップを食らわせる。
どうやら通信機器の破壊に成功したようだ。
信号を失った彼は、訳が分からずパニック状態になり、サイレンを鳴らしながら、くるくると回っている。
吹き飛ばしたロボがフェンスで伸びているのを確認した俺は、そのままフェンスを飛び越えて、隣のビルに飛び乗ると、摩天楼の谷へと飛び降り、道路を挟んで反対側の建物の壁に飛び移ると、能力を発動させて、流星のように滑走する。
そして彼女の車を見つけると、跳躍し、助手席に飛び乗った。
反動で車体が揺れるが、彼女は微動だにしない。
すぐにハンドルを持ち直すと、何食わぬ顔顔で走り始めた。
「百点満点よ。人に使われるのは得意かしら? 」
「そりゃぁ曲がりなりにも、賞金稼ぎをやってた身だからな。こういうのには慣れている。」
「扱いやすくて助かるわ。」
「そりゃどうも。ご満足頂けて光栄です。」
彼女は俺の手錠を閉める素振りを一向に見せない。
「オイ、アンタ。飼い犬には首輪をつけるのが趣味では無かったのか? 」
「番犬に首輪は要らないわ。」
「今のこの状況じゃ。貴方を自由にしとけば、そっちの方が私にとっても良くない? 」
「逃げるかも知れないが。」
「果たして貴方に味方をしてくれる人がいるかしら。」
「……いるさ。一人だけ。」
「彼女も、もう大麻に薬漬けにされているかも知れないわよ。」
俺は彼女を睨んだ。
それを見て彼女はクスクス笑う。
「ごめんなさいね。貴方の不安を煽るようなことをしたかった訳じゃないの。」
「ただ、ちょっと。からかって見たくなっただけ。」
「隣にこんな男を乗せている理由が分かったぜ。」
(手錠が閉まる。)
「アガががががごく。アガガガガガガガガガこのアバズレめガガガガガガガ。」
「お喋りな犬は嫌いよ。私のタイプは寡黙な仕事人。」
「ごめんなさい。許して。僕がガガガガガガガガ悪かったですぃただダダダダダダ。」
「聞き分けが良くて助かるわ。」
二十年生きて、ようやく分かったことがある。
俺には絶望的に女運が無いということだ。
車は次の信号を右に抜けると、裏路地に入り、そこで彼女は車を止めた。
「追手が来る様子は無いな。」
さっきロボの襲撃にあったとはいえ、刺客一人来ないのは、腑に落ちない。
彼なら洗脳したフリーランスを大勢動員して、俺たちを袋叩きにすると思っていたからだ。
大麻は俺の思っているより、冷静頓着な人物なのかも知れない。
寂れた廃屋の商店街街。
俺たちはゲートを潜ると、人一人見受けることのできない、過去の遺産に足を踏み入れた。
「ホントにこんなところにあるのかよ。」
「ええ、私がいつも利用しているお店。」
「意外と公安っつうのは裏社会と繋がっていたりする? 」
「むしろ貴方の相棒の方が異質よ。これほど使いやすい組織なんぞ存在しないでしょ。取り締まったところで、彼らが完全に無くなることは無い。ならこうやって手元に置いておく方が安全だし合理的でしょ。それに情報というオマケがついてくる。」
「ほら着いたわ。」
「また地下か。」
「目立つと困るでしょ。地上でのうのうとやっているところなんて今どき無いわ。」
「病気にならないか心配だぜ。」
俺たちは階段を一歩ずつ降りていく。
彼女はハンドルを握りながら、横目で俺を見た。
「辞めておきなさい。彼は大麻に押されられている。それはあなたが一番よく知っていることでしょ? 」
「万が一彼が無事だったとしても、彼は口を割らないわ。何故だか分かるでしょ? 」
マスターは、彼を畏怖していた。あの強面のマスターがだ。
彼を責めているわけではない。
俺だって彼の立場ならそうなる。
俺は本堂に、この手枷を付けられた時のことを思い出して、身震いした。
「あら、嫌なことでも思いださせちゃったかしら。ごめんなさいね。せっかくのドライブデートなのに。」
「いや、ドライブデートは中止だ。」
「……ハッキングかしら。」
どうやらハンドルをパクられたようだ。
細い糸のような物も見当たらない。
無線での遠隔操作だ。
まぁこの状況なら、わざわざ隠す必要も無いか。
「おい、手錠を外してくれ。俺が行ってくる。」
「私ねぇ。ペットには首輪をつけておくのがセオリーなの。昔飼い犬に噛まれたことがあってね。」
「俺はアンタのペットじゃない。番犬だ。」
「じゃあ尚更だわ。」
「……試してみるか? 」
どちらにせよこの状況で俺の手錠を外さざるおえないはずだ。
彼女が能力を使うのも良い。だが、そうすると俺が車を運転することになる。
「ガチャ…… 」
今はもう聞き飽きた、その文言と共に、俺の手錠はメカニカルな音を立てて外れた。
いつもの懐かしい感覚が戻ってくる。
俺は飛び上がり、建物の壁を走ると、屋上でハッキングをしている業務用のロボに襲い掛かる。
右ストレートでそのうちの一つを殴ると、左に回り込み、俺を囲もうとしていたもう一台を、パンチの余力で反時計回りに捻っている体勢を利用し、右足を軸にすると、左足で回し蹴りを放つ。
横目で、ロボが大きく後方へと吹っ飛んだのを見た。
最後のロボが逃げた。
このまま安田だけでも連れ去るつもりだろう。
俺はロボットの前に回り込むと、彼の頭上に、脳天チョップを食らわせる。
どうやら通信機器の破壊に成功したようだ。
信号を失った彼は、訳が分からずパニック状態になり、サイレンを鳴らしながら、くるくると回っている。
吹き飛ばしたロボがフェンスで伸びているのを確認した俺は、そのままフェンスを飛び越えて、隣のビルに飛び乗ると、摩天楼の谷へと飛び降り、道路を挟んで反対側の建物の壁に飛び移ると、能力を発動させて、流星のように滑走する。
そして彼女の車を見つけると、跳躍し、助手席に飛び乗った。
反動で車体が揺れるが、彼女は微動だにしない。
すぐにハンドルを持ち直すと、何食わぬ顔顔で走り始めた。
「百点満点よ。人に使われるのは得意かしら? 」
「そりゃぁ曲がりなりにも、賞金稼ぎをやってた身だからな。こういうのには慣れている。」
「扱いやすくて助かるわ。」
「そりゃどうも。ご満足頂けて光栄です。」
彼女は俺の手錠を閉める素振りを一向に見せない。
「オイ、アンタ。飼い犬には首輪をつけるのが趣味では無かったのか? 」
「番犬に首輪は要らないわ。」
「今のこの状況じゃ。貴方を自由にしとけば、そっちの方が私にとっても良くない? 」
「逃げるかも知れないが。」
「果たして貴方に味方をしてくれる人がいるかしら。」
「……いるさ。一人だけ。」
「彼女も、もう大麻に薬漬けにされているかも知れないわよ。」
俺は彼女を睨んだ。
それを見て彼女はクスクス笑う。
「ごめんなさいね。貴方の不安を煽るようなことをしたかった訳じゃないの。」
「ただ、ちょっと。からかって見たくなっただけ。」
「隣にこんな男を乗せている理由が分かったぜ。」
(手錠が閉まる。)
「アガががががごく。アガガガガガガガガガこのアバズレめガガガガガガガ。」
「お喋りな犬は嫌いよ。私のタイプは寡黙な仕事人。」
「ごめんなさい。許して。僕がガガガガガガガガ悪かったですぃただダダダダダダ。」
「聞き分けが良くて助かるわ。」
二十年生きて、ようやく分かったことがある。
俺には絶望的に女運が無いということだ。
車は次の信号を右に抜けると、裏路地に入り、そこで彼女は車を止めた。
「追手が来る様子は無いな。」
さっきロボの襲撃にあったとはいえ、刺客一人来ないのは、腑に落ちない。
彼なら洗脳したフリーランスを大勢動員して、俺たちを袋叩きにすると思っていたからだ。
大麻は俺の思っているより、冷静頓着な人物なのかも知れない。
寂れた廃屋の商店街街。
俺たちはゲートを潜ると、人一人見受けることのできない、過去の遺産に足を踏み入れた。
「ホントにこんなところにあるのかよ。」
「ええ、私がいつも利用しているお店。」
「意外と公安っつうのは裏社会と繋がっていたりする? 」
「むしろ貴方の相棒の方が異質よ。これほど使いやすい組織なんぞ存在しないでしょ。取り締まったところで、彼らが完全に無くなることは無い。ならこうやって手元に置いておく方が安全だし合理的でしょ。それに情報というオマケがついてくる。」
「ほら着いたわ。」
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