49 / 107
ファイル:3 優生思想のマッドサイエンティスト
合流
しおりを挟む
「くたばれ代行者。」
「この国から出て行け。」
「偽善者め。失せろ。」
「侵略者が、お前のせいでワシらの子供が全員兵役に出されたんじゃ。」
「……なんだよ…これ。」
四方八方から飛び交う罵倒に俺は目を見開いて驚愕した。
本能的に辺りを見回してしまう。
だが、俺たちを囲んでいる人々は全員揃って俺たちに憎悪を向けていた。
「死ねぇ西方の悪魔め!! 」
一人の子供が、俺たちに石を投げる。
石は俺の頬を掠めると、カーミラの左額に当たった。
彼の額から、ツーッと鮮血が垂れているのが分かる。
それを気に、人々はカーミラに石を投げ続けた。
何度も何度も。
俺は、ようやく我に帰ると、カーミラを投石から守った。
「おい、何やってるんだよお前ら。俺の友達に。カーミラが何したっていうんだ? 」
「誰じゃお前は!! 」
「お前もグランディルの人間か? 」
「お前は平等社会人だろ? 代行者の肩を持つ? 」
「今度は外の世界の人間と目を組んで、ワシらを苦しめる気か? 」
「嘘つき。俺たちを唆して、対等なんて言って。腹の底が見えたぞ。」
カーミラがぐいっと俺の肩を握ると、俺を退けた。
俯いているため、表情は良く見えない。
「北条。君には話していなかったね。」
「おい、カーミラ。何でお前はコイツらに…… 」
「僕が……僕が侵略者だからだよ。」
「極東軍が来たよぉ~みんな逃げて!! 」
可愛らしい女の子の声で、カーミラを囲っていた人々は恐れ響めき、散り散りに逃げていってしまった。
「ありがとう。助かった。」
「そうだよな。お前も。危ないところを救われた。な。」
「………」
カーミラは俺と目を合わせてくれない。
「あー。貴方たち怪我をしてるでしょ。私の家に来て!! 」
カーミラは全身血まみれで、俺は肋が逝っている。
とりあえず、この状態ではどこへ行くこともできないため、彼女の家に向かうことにした。
だが
「罠かもしれないぞ。」
「いや、彼女を信じる。僕にはその義務があるんだ。」
* * *
市街地から離れたバラック小屋。そこに彼女の家はあった。
「ここね。私のお家。」
「良い家だな。」
親御さんは? と聞こうとしたが、やめておいた。
小屋は静かだ。
いや、でももしかすれば、親御さんたちは、仕事に出掛けているのかもしれない。
明け方こちらについて、サツにパクられて、襲撃に遭い、現在は午前10時を回っている。
「さぁさぁ中に入って。君たちの治療をするから。」
俺たちはドアを開けて、暖簾をくぐった。
緑の井草の匂い。
畳という奴だ。俺の本家の実家にも、これと同じようなものがあった。
そして、そこで片膝をついて我が物顔でくつろいでいる青年。
「桐生慎二!! 何でここに? 」
そこでカーミラは少し元気がでたようだ。
「ダメだろ。家の鍵はちゃんと閉めておかないと、空き巣の被害に遭うからね。」
すると青年が頬を膨らませる。
「失敬な!! 」
少女が微笑む。
「そうだよ。先生は私の先生。私に生き方を教えてくれたんだ。」
「どういう意味なんだ慎二。他国で子供なんて作って。黒澄さんに言い付けるぞ。」
(青年は慌てて首をブンブンと振った。)
「誤解だ。千代にだけは勘弁な。」
「コイツはウボクで任務中に拾った。そん時、行き倒れていたから、生きる術を教えてやっただけだ。」
「公職をクビになって食えなくなった人がよく言うよ。」
少女が湯呑みと、怪しげな薬草を持ってくる。
「今は先生の指導の元、探偵をやっているの。」
「そうだ。」
「奴らの居場所が分かった。」
俺は食い入る。
「九条の居場所か? 」
「ああ、銃鬼の弾丸に呪いをつけておいたからな。」
「どこなんだ? 」
「まぁそうセクな。南瓜城だ。奴らはここの皇帝に取り入って、怪しげな研究をしている。恐らく。」
「僕たちに復讐しようとしているんだね。」
「グランディル人だけでは無いよ。世界に、だ。もちろん俺たち極東にもな。」
「これはますます、見過ごせなくなったな。問題は思ったより深刻化しそうだ。」
「乗り込むか? 」
彼は首を振って否定する。
「それでこそ事が大きくなるだけだろ。ルートは既に確保している。」
「用意周到だな。」
それから青年はカーミラの方を見た。
「お前はどーするんだカーミラ。奴らは俺たち二人でもなんとかなる。いや、してみせるさ。」
カーミラは葛藤していた。
握る手が震えているのが分かる。
「いや、僕も行くよ。どんな結末になろうとも。義務を投げ捨てることは許されない。僕はそういう立場の人間だから。」
「そうか……立派だな。お前は。」
「君の皮肉は聞き飽きたよ。」
そういうと、彼はそれを鼻で笑った。
「皮肉……か。そうだな。そっちの方が俺のアイデンティティに合っている。」
「行くぜ北条。」
「よし、傷の応急手当て、終わったよ。」
少女が俺の背中をポンポンと叩く。
痛みがスッカリ消えたようだ。
「気をつけろ。包帯巻いて、痛み止めを塗っただけだ。切れた時にドットくるからな。」
「ならちょっとは休ませてくれても…… 」
「人手が足りん。力を貸せ。」
俺たちは慎二の後を追った。
「この国から出て行け。」
「偽善者め。失せろ。」
「侵略者が、お前のせいでワシらの子供が全員兵役に出されたんじゃ。」
「……なんだよ…これ。」
四方八方から飛び交う罵倒に俺は目を見開いて驚愕した。
本能的に辺りを見回してしまう。
だが、俺たちを囲んでいる人々は全員揃って俺たちに憎悪を向けていた。
「死ねぇ西方の悪魔め!! 」
一人の子供が、俺たちに石を投げる。
石は俺の頬を掠めると、カーミラの左額に当たった。
彼の額から、ツーッと鮮血が垂れているのが分かる。
それを気に、人々はカーミラに石を投げ続けた。
何度も何度も。
俺は、ようやく我に帰ると、カーミラを投石から守った。
「おい、何やってるんだよお前ら。俺の友達に。カーミラが何したっていうんだ? 」
「誰じゃお前は!! 」
「お前もグランディルの人間か? 」
「お前は平等社会人だろ? 代行者の肩を持つ? 」
「今度は外の世界の人間と目を組んで、ワシらを苦しめる気か? 」
「嘘つき。俺たちを唆して、対等なんて言って。腹の底が見えたぞ。」
カーミラがぐいっと俺の肩を握ると、俺を退けた。
俯いているため、表情は良く見えない。
「北条。君には話していなかったね。」
「おい、カーミラ。何でお前はコイツらに…… 」
「僕が……僕が侵略者だからだよ。」
「極東軍が来たよぉ~みんな逃げて!! 」
可愛らしい女の子の声で、カーミラを囲っていた人々は恐れ響めき、散り散りに逃げていってしまった。
「ありがとう。助かった。」
「そうだよな。お前も。危ないところを救われた。な。」
「………」
カーミラは俺と目を合わせてくれない。
「あー。貴方たち怪我をしてるでしょ。私の家に来て!! 」
カーミラは全身血まみれで、俺は肋が逝っている。
とりあえず、この状態ではどこへ行くこともできないため、彼女の家に向かうことにした。
だが
「罠かもしれないぞ。」
「いや、彼女を信じる。僕にはその義務があるんだ。」
* * *
市街地から離れたバラック小屋。そこに彼女の家はあった。
「ここね。私のお家。」
「良い家だな。」
親御さんは? と聞こうとしたが、やめておいた。
小屋は静かだ。
いや、でももしかすれば、親御さんたちは、仕事に出掛けているのかもしれない。
明け方こちらについて、サツにパクられて、襲撃に遭い、現在は午前10時を回っている。
「さぁさぁ中に入って。君たちの治療をするから。」
俺たちはドアを開けて、暖簾をくぐった。
緑の井草の匂い。
畳という奴だ。俺の本家の実家にも、これと同じようなものがあった。
そして、そこで片膝をついて我が物顔でくつろいでいる青年。
「桐生慎二!! 何でここに? 」
そこでカーミラは少し元気がでたようだ。
「ダメだろ。家の鍵はちゃんと閉めておかないと、空き巣の被害に遭うからね。」
すると青年が頬を膨らませる。
「失敬な!! 」
少女が微笑む。
「そうだよ。先生は私の先生。私に生き方を教えてくれたんだ。」
「どういう意味なんだ慎二。他国で子供なんて作って。黒澄さんに言い付けるぞ。」
(青年は慌てて首をブンブンと振った。)
「誤解だ。千代にだけは勘弁な。」
「コイツはウボクで任務中に拾った。そん時、行き倒れていたから、生きる術を教えてやっただけだ。」
「公職をクビになって食えなくなった人がよく言うよ。」
少女が湯呑みと、怪しげな薬草を持ってくる。
「今は先生の指導の元、探偵をやっているの。」
「そうだ。」
「奴らの居場所が分かった。」
俺は食い入る。
「九条の居場所か? 」
「ああ、銃鬼の弾丸に呪いをつけておいたからな。」
「どこなんだ? 」
「まぁそうセクな。南瓜城だ。奴らはここの皇帝に取り入って、怪しげな研究をしている。恐らく。」
「僕たちに復讐しようとしているんだね。」
「グランディル人だけでは無いよ。世界に、だ。もちろん俺たち極東にもな。」
「これはますます、見過ごせなくなったな。問題は思ったより深刻化しそうだ。」
「乗り込むか? 」
彼は首を振って否定する。
「それでこそ事が大きくなるだけだろ。ルートは既に確保している。」
「用意周到だな。」
それから青年はカーミラの方を見た。
「お前はどーするんだカーミラ。奴らは俺たち二人でもなんとかなる。いや、してみせるさ。」
カーミラは葛藤していた。
握る手が震えているのが分かる。
「いや、僕も行くよ。どんな結末になろうとも。義務を投げ捨てることは許されない。僕はそういう立場の人間だから。」
「そうか……立派だな。お前は。」
「君の皮肉は聞き飽きたよ。」
そういうと、彼はそれを鼻で笑った。
「皮肉……か。そうだな。そっちの方が俺のアイデンティティに合っている。」
「行くぜ北条。」
「よし、傷の応急手当て、終わったよ。」
少女が俺の背中をポンポンと叩く。
痛みがスッカリ消えたようだ。
「気をつけろ。包帯巻いて、痛み止めを塗っただけだ。切れた時にドットくるからな。」
「ならちょっとは休ませてくれても…… 」
「人手が足りん。力を貸せ。」
俺たちは慎二の後を追った。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる