平等社会(ユートピア)

ぼっち・ちぇりー

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ファイル:3 優生思想のマッドサイエンティスト

下水道のヌシ

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「どんだけモノを喰ったらあんなにデカくなるんだ? 」
「おそらくッ、まだ人は食ってないみたいだけどねっ。」
 カーミラに指摘されて足元の齧歯類の骨や、蜚蠊の触覚、足元に気がつく。
「うわっ。」
「気を抜くな北条、お前も食われたいのか? 」
 おそらく奴の口の中は、ネズミの毛や、蜚蠊の体液でいっぱいだ。
 それらと一緒に、消化液によってゆっくり溶かしていかれるなんて、死んでもごめんだ。
 バックステップで、大蛇の攻撃を交わし、壁を壁を蹴飛ばすと、反撃の一手に出た。
石火セッカ
 奴の膨れたハラワタむけて、拳をねじ込んだ。
「ピキィ。」
 グロテクスな音と共に、奴のあんぐり空いた口から、溶けかけのネズミや、踠き苦しんでいる蜚蠊が溢れ出す。
「ウワッ。」
---lightning光よ---
 カーミラの金色の剣が、光を帯びたと思うと、パッと視界がフラッシュし、大蛇に撃ちつけられた。
「なんて硬い鱗なんだ。」
「斬撃も効かねえ、熱にも強いウロコ。んならよ。」
「エッ慎二!! 」
 カーミラが慌てて桐生慎二を止めようとしている。
「止めるなカーミラ。」
 青年は側頭に銃のようなモノを押し当てると、引き金を引いた。
---時空壊クロック・ブレイク---
 彼は残像を帯びながら、巨大なヌシの口腔へと飛び込んでいく。
「桐生慎二!! 」
 大蛇は彼をゴックリ飲み込んだ。
 そして、次の瞬間、大蛇の身体が膨れ上がったかと思うと、真紅の体液や、緑の汁と共に、弾け飛んだ。
 俺は反射的に能力を発動させると、カーミラにそれがかからないように守った。
「ありがとう北条。」
「心配いらねえ。」
「よっと。」
 青年は大蛇の腹から飛び出すと、軽快に着地した。
「ったく。クッセェな。もっとちゃんとしたもん食えっつうの。」
 カーミラが、ポケットから出したハンカチで、大蛇の血を拭う。
「やっぱりコレも…… 」
「ああ、おそらくそうだろうな。そもそも、蛇は食ったモンを吐き出したりしない。よほどのことが無ければな。」
 桐生慎二が足元のネズミの骨を砕いてすり潰す。
「おそらく地下の害虫を食い回るように改造されていたんだろうね。」
「そうだな。何かの手違いで下水道に人が迷い込んでしまったらどうするつもりだったんだ? 」
「でもなんで、こんなバケモノなんかを? 」
 俺は疑問に思った。
「おそらく、ここらで大量発生した、ネズミやゴキブリどもが、地上に溢れ出しているから、その対策に放たれたんだろうな。」
「ネズミのせいで伝染病が蔓延したら大変だよ。」
 俺は身の毛立つ思いで、彼らに問うてみた。
「平等社会は? 極東は大丈夫なのか? 」
「心配ねえよ。こういうのは、ちゃんとした決まりがある。お前んとこは、地下でロボが日々清掃を続けているだろうし、俺んところじゃ、それ専属の職人がいる。」
「ここを作ったのは、俺たちだけど、清掃は契約範囲外だ。ガイドラインにも、そう示してあったはずなのに、コイツらは…… 」
 カーミラが彼の肩をポンポンと叩く。
「それはそうと、早く行かないと。僕らは衛生管理員じゃないでしょ。」
「お前のいう通りだカーミラ。ホラ、さっさと行くぞ北条。」
 俺は慌てて彼らの跡を追いかけた。
「ちょっと待ってくれ。こんな場所に一人置いていくな? 」
「なんだ?潔癖症か? 」
 そんなことは無い、どちらかと言えば、ズボラな方だ。
 だが、こんな気味の悪い場所に一人取り残されて、正気を保っていられる人間なんていないだろう。
 気を抜けば、ゴキブリが、足をつたって、ズボンの中まで登ってくるかもしれない。
 想像し、寒気がさして、ぷるっと震えた。
「慎二、ここはどっちだい? 」
「そこは左だ。突き当たりを右に行けば、城のちょうど真下に来れる。そこから中庭に上がるぞ。」
 俺たちは言われるがままに、進み、やがで道はだんだん細くなっていき、やがて一つの梯子が現れた。
 カーミラがまず、ハシゴに登り、その後ろを桐生慎二が追う。
 そしてその跡を俺が追う形となった。
「後は任せたぞ北条。俺たちと言えども、背中から奇襲されれば、ひとたまりもないからな。」
「俺は肉壁かよ!! 」
 正直あまり良い気はしない。
「それがお前の役割だろ。」
「えっ? そうじゃ無かったの? 」
 とカーミラが悪ノリしてくる。
「ネズミやら、ゴキブリやらの対処も頼む。ヌシが居なくなって、動きが活発になっているはずだからな。」
「っクソ。最悪だぜ。男のケツを見上げながら、害虫の処理をしなきゃならないなんて。」
「ヤロウばっかりで良かったな。女の子ならしばかれてたぜ。」
 鵞利場の尻……小柄だけど、筋肉質で、弾力があるあの尻……
「お、お前、まざかそっちの気も? 」
「変な気起こすんじゃないよ。北条。」
 どうやら俺は彼らに誤解をされていたらしい。
「違う!! 断じて!! 」
「おっ、マンホールが見えて来た。いよいよだね。」
「待てカーミラ、クリアリングを忘れるな。待ち伏せされているかもしれない。」
「んま、地下で一悶着起こしていれば、そりゃ気づかないこともなくもないよね。」
 カーミラがマンホールを開けて、辺りを確かめる。
 漏れ出る月の光が、俺たちを照らした。
 異世界、二日目の夜。
「城内の人々は寝静まっているみたい。」
「見張りだけには気をつけないとな。」
 俺たちは城への潜入に成功した。
 



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