平等社会(ユートピア)

ぼっち・ちぇりー

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ファイル:3 優生思想のマッドサイエンティスト

狂気のリングィスト

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 俺たちは庭園のマンホールから素早く離れると、近くにあった大樹の影に隠れた。
 そして今に至るわけだ。
「慎二? 研究所の場所は? 」
「それも事前に調べておいた。電力量の極端に多い部屋がそれだ。」
「明らかにここの場所だけ電気消費量が多い。」
 そういうと慎二は地図を広げて、お宮の北の地下をさした。
「じゃあ僕らの目指すべき場所は…… 」
「ああ。」

「残念だがその必要はない。」

 白衣を着た中年の男が、巨大な満月の前で仁王立ちをしていた。
「まざかそっちの方から来てくれるとはなぁ。」
 俺は指を組んでポキポキと鳴らした。
「ふつう、君たちみたいなんは、侵入者を甘く見て、したっぱを向かわせるはずなんだけど。」
 中年の男はカーミラのその言葉を聞くと、鼻でフフっと笑った。
「私はそんな三流みたいなことはしないさ。自分の研究だ。他人にサンプル採取を頼めるわけがないだろう? 」
「ああいう荒々しい人間たちはね。人の話は聞かないし、主旨がわかってないし、何より仕事が雑なんだよ。」
「誤って君たちを殺しかねないだろ? 」
"「「サンプル? 」」"
 俺たちは同時に同じ疑問を持った。
「そうだ。君たちは私の貴重な研究データだよ。」
「鬼と英雄のハーフである桐生慎二、代行者の父と、吸血鬼の間に生まれたカーミラ・ブレイク。」
「そして、『掘り出し物レギュメント』北条力。」
 その言葉を聞いて、俺たちは一斉に構えた。
「その割には? アンタ本当に改造人間か? どうやって俺たちに挑もうっていんだ? 」
 桐生慎二が白衣の男を挑発する。
「それならご心配なく。」
「……おいで、ロバス。」
 男が優しく囁くと、建物の影から、車椅子に乗った少女が現れる。
「はい、リングィスト叔父様。」
 俺も慎二も、彼女がどのような存在かは理解していたし、カーミラは耐えられず声を漏らしていた。
「アンタ自分の孫娘を…… 」
 そうだ、この男は、自分の孫娘を恐ろしい人間兵器に改造しているのだ。」
「キミは……」
 カーミラが少女に手を伸ばす。
 少女のすました顔は悲しみを経由して、そして憐れみに対する怒り、そして抑えることの出来ない何者かに対する憎しみにへとグラデーションを遂げた。
「あ・な・た・も。私クシをそんな目で…… 」
「そんな目でワタクシを見ないで下さいまし!! 」
「お父様と、お母様と、侍女のセンシー、執事のグリゴリィーと同じ目で。」
 カーミラは彼女が曝け出した自分が予期せぬ感情に翻弄されている。
「そんなつもりじゃ……ただ僕は…… 」
「アナタも…… アナタもワタクシを可哀想な人間だと思っているのでしょう? 」
「生まれつき足が不自由だったから!! 」
「来るぞカーミラ。構えろ。」
 桐生慎二が低い声で、カーミラを宥める。
「俺がヤツの攻撃を引きつける。慎二とカーミラは攻撃に転じてくれ。」
「善処するよ。」(冷や汗をかくカーミラ)
「やっと名前で呼んでくれたな。」(体勢を低くして、変身途中のロバスへと飛びかかろうとしている。)
 彼女の感情の昂りと共に、車椅子は巨大な八本足のマーシンにへと変形した。
 強靭な鉄の八本脚が、怒り狂う彼女を支えている。
 彼女はそのうちの一本を振り上げると、その先端をコチラへと向けてくる。
 そのモーションは……
 脚先から巨大なエネルギーの熱量を感じ取り、俺はその熱源へと疾走した。左目でカーミラを、右目で慎二を見る。
 彼らはそれぞれ、彼女の巨体を回り込むように、飛び出した。
「喰らいなさい…… 」
 少女の低く鋭い声と共に、レーザー弾が発射される。
 俺はエネルギーが放出されるのを身体で感じ取ると、それを右拳でガッチリ受け止めた。
石壁セキヘキ
 能力の根源を右拳へと集中させ、エネルギーを弾き飛ばそうとする。
"重い……"
 エネルギーは弾かれることも、分散することもなく、それどころか、俺の能力を食い破らんとしていた。
「ぐぉぉぉぉぉ。」
 俺は予定を変更し、攻撃を受け流すことにする。
 軌道を大きく上にずらして、攻撃を回避した。
 光の矢は歪曲し、空を舞う人工衛星と激突する。
「ほうほう。はあはあ。ロバスのレーザー砲を曲げるとはね。」
「キミの魔法も徐々に成長し始めているわけだ。」
 度々聞かされる魔法という言葉。
「ますますキミのデータが欲しくなったよ。」
「見ましたか、叔父様。私やりましたよ!! 」
 ロバスが敬愛のこもった声で、赤面し、リングィストの方を向いた。
 左右に回り込んだ二人が、同時にロバスへと襲いかかる。
「ごめんあそばせ。」
 彼女の低い言葉と共に、脚の甲板が開き、ミサイルが放出される。
 二人はそれを華麗に交わす。
「ええい。煩わしい蝿ですわね!! 」
 脚を振り上げて、虫を払うように、彼らを払った。
 カーミラは座標移動で、慎二は武器を両手で持つと、脚の攻撃を利用し、回転しながら懐へと潜り込む。
 そして閉まりかけの甲板へと鎖小太刀をねじ込むと、魔具の名前を叫んだ。
---凛月!! ---
 その言葉と共に、彼女の身体へと電流が流されたみたいだ。
「汚い!! 」その言葉と共に、慎二が弾き飛ばされて、こちらへと降ってくる。
 それを俺は右手で受け止め、勢いを殺せず、宙返りし、右脚でガッチリブレーキをかけた。
「アナタ……ワタクシのプログラムをハッキングしようとしましたわね? 」
「そりゃあな。殺さずに無力化できる方法があるなら、まずそれを試してみるべきだろう? 」
 彼女は右手で、カーミラのエクスカリバーの斬り下げを受け止めると、爪でそれを放り投げる。
「オイ、吸血鬼。困るだろ? ちゃんと力を使ってくれないと。私が研究データを取れないじゃないか? 」
「この後に及んで、まだワタクシに情けをかけておいでなのですね。」

_____その判断が、凶と出ないと良いのだけれど。

「カーミラ……やるぞ!! 」
 俺と慎二でカーミラを立たせる。
「僕は……まだ諦めないよ。」
「カーミラ……聞け。」
 慎二は目の前で屹立する巨大な鉄塊を見上げた。
「確かに、暴力で他者を従わせることはエゴだ。」
「だけどな。今彼女の感情を逆撫でしているのは、俺たちが自分達のエゴで彼女を慈しみ、自分たちの都合で自分自身を攻撃してこないからだ。」
「僕は彼女を憐れんだりなんてしていないよ。」
「暴力じゃ何も解決しない。だけどな。言論で解決出来るほど、この世界は単純じゃない。」
 慎二の言っていることは、おそらく、俺の祖父の信条と同じものだろう。
「俺は誓った。守るために力を使うと。」
 カーミラの言葉を遮って続ける。
「力は他者を傷つける。だけど、傷つける者から何かを守るためには、ソイツを傷つけるしかないんだ。」

「フワァ~お話は終わりましたか?   」
 ロバスは大きなあくびをすると、冷酷な目で俺たちを見下ろしている。

 カーミラは苦虫を噛んだような顰め面でエクスカリバーを構え、静かに力を解放する。
---Perfect Timezパーフェクト・タイムズ---
 彼の足元で静かに風が発生し、同時に強力な重力変化が働き出したことを感じ取った。
 彼も意を決したようである。
「そうだ。待てドブネズミども。彼女に小指一本でも触れたらどうなるか分かっているな? 」
 熱くなった俺たちに水をさす人物が一人。
 それはウボクの皇帝だった。



 



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